第二章 人外は誰だ
第1話 繋がる紋
ユウヤが冒険者ギルド内で今までになく落ち込んでいた。それだけでなく、かなりの大人数で慰められており、異様な光景と言わざるを得なかった。
そんな時、丁度良くサダバクが通りかかり、クインに事情を聞いてみた。
「どうして、ユウヤは落ち込んでんだ?」
「あぁ、それは―――」
少し前のことに遡る。
■◆■◆■◆
「よっし、迷宮いくか友人、ユウヤ!」
「あぁ!」
「はい!」
三人は意気揚々と迷宮で挑みにいった。ただ、ユウヤが迷宮に近づくにつれ、下を向く回数が多くなってきたのだ。
「大丈夫?」
「いや、なんでもない、はず。ちょっと緊張してるっぽい」
「そうなのか。まぁ、アビリティの本番初挑戦だもんな」
研修を受けていた皆や研修スタッフとともに数日掛けて、アビリティの訓練をしていた。久しぶりの迷宮探索なので、緊張するのも無理はない。むしろ、以前のように腕の怪我を負って平然と迷宮に入っていたことが異常だったのだ。
さらに迷宮に近づくとユウヤは苦虫を噛み潰したような顔を迷宮に向けた。
そして、いざ入ると………。
「うっぶっ……えっ…、ぇ゙ぅぇ」
嗚咽を繰り返し吐瀉物を撒き散らし、横に倒れこみアビリティが暴発。近づいたニィナ苦しそうに胸を抑えながら倒れ。クインが運び出した。
◇◆◇◆◇◆
「ひっでぇなぁ。俺だったらそんなミスなんかしなかったのに……おい、ユウヤ、ちゃんとニィナとクインに謝ったか?」
「うん」
「謝ったに決まってるでしょ。ユウヤだって普通に常識あるし、運び出したことに感謝もしてた」
その言葉を聞いてサダバクは安心するのと同時に言った。
「アビリティに目覚めた後は体の感覚が著しく変わるから注意しろよ」
「そうだね。なんか、懐かしい感覚だったし」
「? まぁ、どんな感じだった」
「懐かしい感じとしか言いようが無かったけど、迷宮に入った感覚は体や心の中まで見られる感じがしてすっごい不快だっし、魔力が唐突に暴れ出したんだ」
「そりゃあ、おかしいな」
普通は初回に反応が出るだけ、例外も数回で慣れてしまう。それが反応が無かった奴が急に反応を示すのだ。明らかな異常。
「お前、スラムの◯◯の
「あ、ありがとうございます」
「後、アビリティの訓練にいくぞ。鍛えてやる」
「お願いします」
ユウヤは失態を晒さないようにしなければと、自分を鼓舞しながらサダバクについていった。クインとニィナも当然仲間なので一緒に行く。
皆はサダバクならば大丈夫だろうと離れていき、研修生も迷宮に向かった。
「お前、何か疾患でもあったか?そういうのがある場合は特殊なケースが多いんだが………」
「いえ」
「そうか。良かった」
などと淡白な会話を繰り返し繰り返し挟む。訓練所に入るとユウヤは直ぐに荷物を置き、ストレッチを始めた。体の内部では力で渦を巻いている。
「まずは、そうだな。共鳴と名がついてるが、先天的か?それとも後天的か?」
「……おそらく後天的」
「そうか。それじゃあ、戦闘の時に実際感じたがゆっくりめで共鳴を発動してみてくれ」
「は、はぁ」
ユウヤは疑問に思いながら共鳴を発動される。スキルの圧によって吹き飛ばす訳ではなく、ゆっくりとサダバクに‘‘侵食’’する。
「?」
そうすると、独特な感覚へと変わった。
「やっぱ、共鳴は押し出すもんじゃねぇな」
「どうなってるんだろう」「さぁ?」とクインとニィナの声が聞こえる。
「共鳴は感覚を共有するのに近いな。しかも、共鳴した相手との位置も丸わかりだ。精神攻撃は一気に相手に感覚を押し付けるからかな?サポート型として優秀だな」
「努力なんだったんだ」
「あ?俺はベテランだから推測でなんとなく分かんだよ。何年やってると思ってる。こっちはいい年したおっさんだぞ」
「………越えてはないんだ。その腹と、顔で」
「あぁ? 老け顔つってんのか?」
「お、やるか」
ユウヤとサダバクは突然取っ組み合いを始めた。
「あいつら、いつの間に仲良くなったんだ?」
「さぁ?」
この後は色々なことを試していった。他人の魔法は共鳴させることが出来るか、自分と他人のならば共鳴出来るかなどなど。分かったことでいえば、魔法を共鳴させ強化可能、自分の魔法との場合威力増減あり、軽い思考共有可能なことくらい。スキルなどについては試せなかった。
「それじゃあ、クインに共鳴してみろ」
「え、えぇ」
「なんだよ。サダバクとはすぐやったでしょ」
「だって、頑丈だし、魔法でも近接でも普通に強いから………」
「もういいから」
ユウヤがクインと共鳴すると、不意にニィナの方もパスが通った。しかも、クインと共鳴すればするほどどんどん力が失われていく。慌てて解除をして息を整える。
「次はニィナだ」
「優しく、してね」
「はい!」
スーッと共鳴していったはずだが、また突然痛みがしてきた。ニィナは今度は我慢しているのか立ったままでいた。ユウヤはすぐさまニィナとのパスを切った。クインからはニィナにパスを繋げられるが、ニィナからクインにパスを繋げられないらしい。
サダバクはニィナをしっかりと見た。
「そういうもんか。たぶん俺がいるとしても駄目だなこりゃあ」
「すいません。失敗しちゃった」
「全然大丈夫ですよ」
「パス繋ぐ時はクインとしろよ」
「はい」
これで1日を使う訳ではなく、午後の時間を使ってまだ魔力が反応するかどうかを調べた。
「全然迷宮に入っても平気っぽいです」
「そうか。それは良かった」
ただ、初回の時に強く反応が出たので、またぶり返す可能性を鑑みて迷宮探索を諦める。
【ユウヤ視点】
(アビリティに気付いて分かった。皆、薄くだが繋がっている。魂が感情が、何もかもが―――。名声システムはその繋がりを強制的に強くしている。
■■■、俺は■がっている。)
そう考えながら歩いていく。
「はぁ」
ユウヤは悩んでいた。ニィナとクインに異常な繋がりがあることに対して―――。普通は丹田あたりで繋がるはずなのに、繋がる場所の大きさがおかしいのだ。でかすぎる。ただ、ユウヤは二人と繋がっているだけ。
もはや、運命共同体で自分は邪魔なのかとさえ思えてくる。
「大丈夫?」
「いや、―――」
悩むだけなら良かったが、迷宮に入ると全てが変わった。システム以上に共鳴してくる。瞬時に理解した。ユウヤがここに入らなかった理由は、年齢や強さではない(強さだけならば昔の方が強いし、底しれない)この気色悪さがあったからなのだと。
そして、事故は起こった。
完全な失敗。
―――
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