第11話 託された者②
「ふっか〜つ!」
「良かったぁ」
「心配させないでくださいよ」
「ありがとうな。サダバク」
「あぁ」
サダバクがユウヤが倒れそうな所を瞬時に治してくれたのだ。
「いやぁ〜、決闘の時はどうなるかと思ったけど、終わってみれば潔い奴だったな」
「それは、元から本気じゃなかったからだよ」
「おぉ! そうなんだな」
「情報収集したけど、職業は魔法使いで、新人をビビらせて楽しんでたらしい」
「そうなのか」
「そうなんですねぇ」
とりあえず、■◆■■■の記憶から引っ張ってきた情報を使って会話などをして帰ることにした。
――と思ったら、肩を叩かれた。
「一緒に過ごそうぜ? 飯、奢ってやるよ」
「そういえば、昼飯、食ってなかったよな」
「食うかぁ」
「見た感じ雰囲気は完全に宴ですね」
席に座ってみると、色々な人が近づいてくるし、色々な食べ物がきた。
「なんだろう? この骨付き肉」
「魔物の改良種の肉だな。俺も詳しくは知らん!食え食え!」
勇気を持って齧りついてみると、病みつきになる味の濃いソースとホロホロほどけていくごとに出てくる肉の甘み――まさに暴力的な美味さ。
サラダも食べてみると、カリカリとした食感に程よい瑞々しくて一々水を流し込まなくても大丈夫だろう。
「
「ユウヤ、これも美味いぞ」
クインが勧めてきたのは、黄色のボールのような果実だった。
齧り付くと、ジュワッと果汁が溢れてくる。慌てて果汁を飲みきり、中を確認してみるとザクロのようになっており、プチプチとした食感の部分がゼリーのようで食べていて飽きない。
しかも、味が中のプチプチと微妙に違うから、味変も出来る。
「私はこれが好きですね」
ニィナが出してきた食べ物は、虹色の菓子だった。食感は和菓子に近いが、味としては甘じょっぱい。こんなに美味しい物が食べられるから、冒険者ギルドは酒臭いのだろう。
「よう、楽しんでるかぁ?」
「はい」
小躍りしている男性にそう返答した。
「そうか! それは良かった! なぁ、サダバクと戦ってる時にどんな魔法使ったんだよ」
「あ〜! それ気になる〜!」
「どんな手使ったんだ〜?」
「えっと……」
何か載っていないか金属プレートを探すと、サダバクが割り込んできた。ただ、金属プレートを見つけ覗くとアビリティに『共鳴』が追加されていた。
「そうやって、技を聞き出そうとすんなよ。真似出来ねぇくせに」
「言ってくれんじゃねぇかよぉ」
「はッ、事実だろ」
「舐められてんなぁおい」
「けっ」
傍からみれば、挑発して怒ってるように見える勢いだが、その後笑顔になって会話をしている。仲が良いものだなとユウヤは思った。
「まっ、そんなことより酒飲もうぜ」
「酒は(……飲んでるか)それじゃあ」
木製のジョッキの中に黄色っぽい液体と青臭い匂いを感じる。酒を呷ると口の中や胃の部分がカッと熱くなり植物的な匂いと甘みがスッと入ってきた。
ユウヤは我慢しきれずゴホッゴホッと咳をした。
「ア’’ぁ〜〜」
「おすすめは塩とライムをこうすることよ!」
人差し指と手の甲の間に置いた塩を舐めると、酒を飲みライムをかじる。ふぅ〜という息を吐き出しながら酒の余韻に浸るが、その後に水を飲んだ。
「飲んでみろ」
「えぇ〜」
「ほれ、チェイサー《口直し》は用意してやった」
コト、と音を出しながら置かれたのは水。試しに同じ手法をやってみると、美味い―――。もし、ライムか塩だけだとかなりキツかっただろうが、うまく調和している。水を飲むと後味がスッキリとして、すぐに他の酒を飲めそうだ。
「こりゃ、うまい」
「はぁ、酒、俺は苦手なんだよな」
「なんだぁ、クイン、飲まねぇとは言わせねぇぞ」
「手持ちのコップに入れてくれ」
クインはサダバクの前に特殊なグラスを置いた。
「……」
「……こ」
「わぁ、高そうですね」
ニィナがサダバクの言葉に割って入る。そうすると、サダバクはため息を吐きながら酒を注いだ。
◇◆◇◆◇◆
「おい!«ヒール»」
「はっ! え? サダバク?」
「もう夜だ。帰れ」
「………へい」
ユウヤは即座に立ち上がりニィナとクインと一緒に途中(冒険者ギルドの扉)まで帰る。
「なんか、意識はっきりとしてるな。酒飲んだ後なのに。もしかして、酒強い?」
「いや、ユウヤ、サダバクの魔法で解毒とかをしてるだけで、普通にデロンデロンの泥酔状態だったぞ」
「そうですよ」
「まじか〜」
ユウヤは二人からこってりと叱られた。
◆■◆■◆■
その後は一人で帰り、眠りにつく。
―――心臓の鼓動がはっきりと感じる。
終わりは始まったばかり。ほとんどは偽物であり本当はどこにあるか分からない。終われない。
言葉の羅列は終わることが無かった。
「はぁっ……!」
耐えきれず目を開くと、‘‘ユウヤ’’がいた。異世界に来てから少し幼めの体と思っていたが、意外と大人びている。体は勝手に動きユウヤの体を抱き寄せるとユウヤも頬に手を付け、近づいてきた。
『まだ、希望はあるよ。終わらない。終わらせない。こんなところで終わっちゃだめだ。――すくって』
その言葉を聞くと、同時に痛みを感じる。ユウヤの体がドロドロに溶け始めていることに気づいた。
全てに痛覚がある。
溶けると他の部分も引きちぎれ溶けていく。体の内側は蒸発し重さに耐えられなくなる。
しかし、顔は幸せそうだ。
『■■を……』
白い光に包まれ、場面が変わってく。
「受け継ぐからな」
ユウヤが声を漏らした。
辺りは荒野と遜色ないくらいになっているが、家が倒壊した後が見える。体は息苦しそうにしている。それだけじゃない、体中から血が溢れていた。
ゴォォオン、破滅の鐘が鳴る。
金環日食かと思ったが、赤黒く染まっており終末の刻を感じる。
「破滅の鐘鳴る時、主は来る」
儀式の詠唱が始まった。『あぁ、渡りたまう主よ。さだめを飲み込む大災たる御身よ。破滅終焉黙示録へのお導きに。星を世界を飲み込み。宇宙を飲み込み。天へと悟りへと』
嫌な大合唱だが、歌声は最後まで心地よい。
「クソアマが」
幻覚が消え失せ、起きて目を開けた。そうすると、窓を開けて日の光を浴びる。
「………ユウヤ。俺、この世界で、頑張るよ」
夢の記憶が褪せながらも、ユウヤは頬には涙がつたっていた。
「やっぱり、夢みたいにならないために力をつけなきゃな。誰にも止められない最強に――」
ユウヤは虚空に手を伸ばした。そうすると、白い髪の女性の顔が浮かんでくる。死んでから最初に出会い印象も変わったはずなのに、見ていると何か決して良くない感情が出てきてしまう。
「って、はぁ、何考えてんだろうなぁ……。帰りたいのに、迷っちゃうなんて、おかしいよな」
ただ、何故か無性に力が湧き出てくる。気分もかなり良い状態であり、また共鳴というアビリティを見ようと金属プレートを確認した。
すると、投擲スキルが消えていた。
「え’’っ!!」
恐らく、投擲の才能は記憶の一つで■◆■■■が出てきた時にかき消されたのだろう。その代わりに共鳴が使えるようになったのだ、とユウヤは結論づけるが情報が少ないため推測しか出来ない。
ただ、力が湧いたのは事実であり、現にスキルの力を共鳴に変換がやろうと思えばすぐにできる。
「『虚ろなる力よ。真となれ«灯火»』これで練習の手間が省けたな」
ニィナが出していたような炎が出てくる。
ユウヤは■◆■■■に騙されているかもなどと微塵も思わなかった。
―――それほど、リアルであり鮮明であったのだ。
◆■◆■◆■
不満点、改善点があればぜひコメントを!ちょうど添削中です
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