第2話 飲み合い

アビリティの出来事から一週間が経った。

 その間も様々な事が起こり、ついに他の人ではなしえないようなことまでしてしまった。

 ユウヤも早くこの事を伝えたい、酒を飲みに行った方が良いと感じて、仲間に迷宮を休むことを伝えサダバクの家に向かった。


「ここがサダバクの家か……」


 二階建てに壁が真っ白に塗られていて、上級冒険者に相応しい立派な家という印象をうける。


 警備のためか門には門番までついていて、どういった用件で来たか説明をすると、門を開けて通らせてくれた。

 家までの道も掃除されていて綺麗だし、庭の木々はしっかりと枝を整えてある。


 ドアのノッカーを使って、数分待つと明らかに使用人ではない女性が出てきた。顔に一つ切り傷があること以外は素朴である。


「あら、いらっしゃい。ご用件は何ですか?」

「こんにちは。冒険者のユウヤと申します。サダバクさんと飲み合いの約束があるのですが、サダバクさんはいらっしゃいますか?」

「ふふ、いますよ。それにちょうどよくグルミさんも来ていたところなんですよ。上がってください」


 女性に案内をしてもらい部屋に到着する。


「今、来たのかよ。お前、もうちょい前もって相談をだな」

「よぅ、ユウヤ」


 知らないうちにグルミの歯は治っていた。


「こんにちは」


 二人の反応は異なるものだったが、ユウヤは気にせず挨拶をした。その後はとりあえず先に聞きたいことを言った。


「時間を決めてなかったし、来ちゃったよ。嫌なら帰るけど、どうする?」

「帰んなくていいよ。酒飲め」

「まぁ、帰んなくていい。とりあえず、お前に合いそうな酒用意したから、これでも飲んどけ」


 ジャーキーと一緒に高そうな酒が出される。


「有り難く頂きます」


 シュバババっと効果音が出そうなほどの速度で食べて飲む。アルコール度数が高そうだと踏「。んでいたが、さほど酔わなかった。


「レベル60以上専用のアルコール度数60%+45%のやつ〜。特殊な製法で作られたやつなんだぜ?」

「えっ?それって100%をこえ……」

「グルミ、危ないからその酒は勝手に出すな。っつうか、俺達二人は会話するけど、ユウヤはついてこれるかぁ?」

「どんな話するの?」

「俺も気になる!」


(先に話とか聞いてなかったんかい!)とユウヤはグルミのことを内心で突っ込む。


「魔人、というか魔族についてだ」

「全員、中級冒険者以上っていう。迷宮と契約した少人数の異常な奴らのことですか?」

「お前、やけに詳しいな」

「ふっふ〜ん」


 ユウヤは謎に誇らしげになった。


「まぁ、なんだ。俺達の前衛が死んだ訳じゃなくって、魔族になってたんだ。ちょっと昨日戦闘になってな。酒飲むついでに、めっっっちゃ!話したいと思ってたんだ」

「えっ、マジ?生きてたんだ、あいつ。え?めっちゃ嬉しい!」


「あっ(何故か言葉が出てた時に言ってたな)」

「おっ、お前も気がついたか?。共鳴すれば、記憶共有とかも出来るんじゃね?」

「えっと、そういう意味じゃない、けど、やってみるしかないか。酒あんま飲めなそうだな」


 共鳴を使って精神の内まで入っていくが、まだ早かったからか、精神の渦に取り込まれてしまう。

 ■◆■■■は何かをしていた。行為で表すならば、食事に近いかもしれない。ユウヤは取り込むことを意識した瞬間に世界が変わる。


 ■◆■■■は一人で様々なものを食べて、排出をしている。流石に排出の部分は忌避感が強く想像していなかった。

 ただ、食べるだけでも悍ましいものだった。


「俺にも食わせろ。こん中にはユウヤの記憶がたくさんあること俺には分かる」

「……後悔、するぞ。過去の君ならまだしも星渡りの記憶が強い方は精神が柔い。発狂することになるかもしれない」

「そんなのやってみなくちゃ分からねぇだろ」

「そうか」


 ■◆■■■はあっさり引き下がり、飲み物を差し出してきた。ユウヤはこの記憶が軽めだと、感覚的に分かりつつ飲み干す。


 また、淡く薄い記憶をみていく。


 ユウヤが苦しんでいた時の記憶。もはや、どっちが、という意識は無くなっていた。両方が自分であり、片方は偽物だと認識している。


「……なんで、こう俺は失敗ばかり」


 少し、■◆■■■が意味深な雰囲気を漂わせながら呟いた。

 ぐるぐるとネジ曲がった意識が本物に戻ると、すぐにサダバクの記憶から該当するものを選んでいく。

 さほど、大変ではなかった。コンビニのドアのすぐそこの棚に置いてあったかのようにさえ感じる。


『やっと見つけた〜』


 ただ、ユウヤは初めてだから時間が掛かったと嘘をついた。まるで子供が咄嗟についた嘘のようだ。

 うわっ!とユウヤが声を上げた。

 そこでは、ユウヤが教会の者と喋っていたところが見えていた。

 ただ、すぐにユウヤの視界が黒くなり、切り替わる。


『――お前ぇ、借金してたってマジィ?』

『そこ、見えてた?』

『バッチシ!教会で金払うところ見てたぜ』

『まさか、金貨払うとは思わなかったけどな』

『ぅ、ゔ〜〜』


 ユウヤが頭を抱える。サダバク達もこれ以上遊ぶつもりが無いのか感謝をしだす。


『アビリティ、ありがとな』

『なんか、思ったより分かりやすいよ。いい感じいい感じ』


 サダバク達は疑う様子が無かった。

 サダバクの記憶の追体験とは言えるだろうが、周囲は見渡せて三人称視点に近いし、触覚などは現実の時と同じ。

 ただ、視点がいきなり昨日のサダバクの方へと引き寄せられていく。


 サダバクは迷宮の十層辺りで狩りをしていたようだった。


 久しぶりに面白いもの(ユウヤ)を見れて、レベル上げをしているらしい。魔法により糸のようなものを作り、捌いていく。

 暇になって金属プレートを確認してみれば、魔法使いレベル65と書いてあった。


「たっか!と思ったけど、下級職だな」

「お前カンストボーナスのスキル狙ってんのか?普通に別の職に付いた方がいいぞ」

「職業は俺の勝手だろうが」


 サダバクは至極真っ当なところで怒る


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