南方戦争18

 

『シズクはミロクに取られ、デザイアはキリシマに取られ、デザイアの妹ちゃんは援軍の指揮官に取られ、六芒星は攻撃手段に乏しい。プレイヤーの皆さ、暇でしょ?幸い私の天敵は妹ちゃんが何とかしてくれてるから。私が相手をしてあげる』


 余計なお世話だ。その一言に、この場にいる全プレイヤーの思いを一致させるような無慈悲な発言が、宙から降り注いだ。




「追撃を絶やすなっ!!出来るだけ破損させるっす!!!ああもう!!なんでこんな時に中佐はいないんすか!!!」


「ラクレア大尉!!レコネット中佐が居ないから降りてきたのかと!!!」


「うるせーっす!!口答えしてる暇があったら撃ち落としなさい!!!」


「「「「YES!!マム!!!!!」」」」


 空から落ちてくる10の金属の塊。砲兵たちはそれらを、無駄だとわかりつつも一秒でも到着を送らせる為に撃ち続けた。


「雷神かミロクの攻撃で木っ端微塵になったりしませんかねぇ。しないっすよねぇ」


 迫る金属塊を前に、ファータはまたも一人ごちる。こんなことならもう一人くらい宇宙にある中継衛星を撃ち落とせる怪物を連れてくるべきだった、等というできもしない妄想をするくらいには彼女は焦っていた。

 プレイヤーの為、等と言いつつそらにいるあの怪物はどうせ最新式のを連れてくる。

 見たところデザイアの復活地点を守る為に置かれていたであろう2体に行動も起こせない存在に、最新式10体は荷が重いどころの話ではないのだ。


「あーもう!!ままならないですねぇ!!!」


 ドォンッ!!!!!


 砲兵の努力も虚しく、10の金属塊は轟音と共に全て地面へと降り立った。


『プレイヤーE_66304のログインを確認。全機、起動致します』


 プシューーーーーー


 金属塊に青い線が走り、開らけると共にもうもうとした煙を吐き出す。

 中からはろくみ等の旧式機と比べ一回り小さな少女が現れる。背中に背負う兵器類も、旧式機と比べていくぶんかコンパクトなものとなっていた。


『私さ、かなり強いから。覚悟は良い?』


 他9機を侍らせた一等豪華な装備のその少女は、好戦的な笑みを浮かべた。









 ────────────────────


 降り立ったE_66304を前に、戦況は絶望的だった。


「『グルァァァァァーーーーー』!!!!」


 アイス31号の咆哮と共に、ブレスが放たれる。


「掃射ッ!!!!!!!!」


 ドドドドドォォォン!!!!


 ファータの掛け声により一斉に砲弾が放たれる。


『だから、バフ使わないとまともにダメージ入らないって』


 この子。とリリリィのホログラムを手のひらから浮かび上がらせるE_66304。その艶玉の肌にはかすり傷一つついて居なかった。

 防御力が霞んで見えてしまう程の回復性能を誇るE_66304。だが彼女は霞んで見えるだけで、四甲と呼ばれるレベルの防御性能を持ち合わせているのだ。


「『灼烈閃』!!!!」


 さらには、傭兵などの強力な斬撃に体を半ばまで斬られたとしても、たとえスプラッタに成ったとしても数秒で回復する。

 先ほども言ったが、レベル8000代のプレイヤーでやっとダメージが入る。そんなレベルの防御力が霞む程の回復性能を持っている。


「いやさ、無理だろこんなもん、、、」


「バフ有ったって、攻撃が通ったって、即座に回復されるんだし、、、」


 意気消沈しているプレイヤーをE_66304が見掛ければ、


「倒せなくても経験値は入るんだし、壊れない巻き藁だと思えばいいでしょ?」


 と言いつつホログラムを出していない手のひらから放つ光線によって凪払い、爆散させる。


「『時間停止ストップ』」


 急接近したターミアに思考ごと動きを止められれば、


 ドォォォン!!!


「うぎゃっ!!!」


 周りに侍る最新機に自分ごと容赦なく撃たせ、ターミアだけをリスポーンさせる。


 何をしても蹂躙される。圧倒的なE_66304の戦闘力に、プレイヤーたちはただただ怯えることしか出来なかった。











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