第17話 魔神復活!?


「あら? なんだか外が騒がしくないかしら?」


 私は最近ダイエットがてらヨガにハマっている。 やっぱり適度に運動した方がご飯も美味しくいただけるってもんよね。


「アッシュさん、あれは何のポーズなんですか?」


 最近入った新人メイドのバエルちゃんがアッシュに私のヨガのポーズについて質問している。 

 まぁ、コッチの異世界人からしたら何をやっているのかわからないわよね。


 ふふっ、ちなみにこれはコブラのポーズ……


「あーあれは、アザラシのポーズだ」


 オイ


「あれは?」


 トラのポーズ!


「アシカのポーズ」


 ラクダのポーズ!!


「食事中のトド」


 疲れた…………


「んー死んだセイウチのポーズ」


「ちょっと!! 最後はただ寝てただけでしょ!!」


 そんな事をしているとドアがノックされ、ココが少し慌てた様子で入って来る。


「あ…… お嬢様、ヨガをやってらしたんですね? とってもキングスライムのポーズがお上手です!」


「座ってるだけよ!! ってかヨガって知ってるの!?」


「ヨガは知ってますよ〜、一時結構流行った時期もありましたし。 私も結構やってたんですよ〜。 興奮したゴリラのポーズが好きでした!」


「何よそのポーズ!? ちょっと見てみたいわ!?」


「あっ、そんな事よりアレックス殿下がお戻りになられましたよ」


 あー、だから外が騒がしかったのか。


「それじゃあ、お兄様に挨拶に行こうかしら」




☆★☆★☆★☆★☆★



「アレックスお兄様〜!」


「おお、フリル! ちょっと見ない間にまた、大きく…… 成長したな!!」


 兄妹間スキンシップで合法的にイケメン成分を摂取!!


 私が抱きつくと勢い余ってアレックスお兄様を倒してしまったけれど、大型犬のようにこのまま熱烈なスキンシップをっ……


「アハハハッ、フリル…… フリルッ! ちょっと重っ!? とっても嬉しいんだけれど、フリルの愛の重さでお兄ちゃん圧死してしまいそうだよ…… ゴフッ」


 あらあら、演技がお上手だこと…… あれ? アレックスお兄様本当に血を吐いてらっしゃる? ちょっとそこの側近! なんで衛生兵呼んでんの?


「ふぅ…… 危うく戦いの前にヴァルハラへと旅立つ所だったよ。 ありがとう愛でお腹がいっぱいだよフリル」


「戦いに行かれるんですの?」


「ああ、どうやらアドル領で事件があったみたいでね。 結構…… 重大らしくてね……」


 お兄様の顔が哀しそうに陰る。 イケメンはどんな表情でも絵になって良いですわね。


「明日の朝には直ぐに出立する事になる。 ……フリル。 会えて良かったよ」


「お兄様?」


 あれれ? なんかもう会えないみたいな雰囲気出しちゃってます? そんなにヤバい事件なのか…… 私如きじゃ大した戦力にはならないだろうし、大人しくお城で祈る事しかできませんわ……





 その後、城内から聞こえて来る話をまとめると、どうやらアドル領で禁書が見つかったらしい。 しかもただの禁書ではなく魔神を封じた魔神厳封緘禁書ってヤツだったみたいで、封印が解けて魔神が復活してしまったそうな。


「魔神…… お嬢様、悪い事は言わない。 絶対に関わっちゃダメだ。 最悪国を捨てて亡命する事も考えろ」


 アッシュが柄にも無く焦ってしまっている。

 と言うか、そのナンタラカンタラ禁書って本当に何か封印されてんの?




 ヤバい…… アッシュが変な事言うから夜中に目が覚めてしまったわ……


 仕方ないからちょっと夜食を食べに行こうかしら。


 トコトコと一階の厨房まで歩いて行く。 一応バレない様に透明化はかけてある。


 ──あれ? あんまり食材がない……


 今の時間は結構深夜なのにいつもより人が多い。

 あっ、明日の行軍の準備か…… それなら、馬車の方に食材は移動してるのかも?



 ふっふっふ。 透明化の使える今なら兵士が多くいる場所でも難なく潜入できるわ。


 やっぱり、明日の朝から軍が動くのは本当のようね、こんな時間でも慌ただしく兵士達が動き回っているわ。


 兵站部隊はどこかしら……


「お嬢様」


 ビクッ!!


 ふんふふ〜んっと鼻歌混じりに食料を探していると不意に声がかかりビクッとする


「アッシュ! なんでここに?」


「お嬢様も水くさい、荷物に紛れて魔神討伐に赴こうとは…… 昼間はああ言いましたが、奴らは倒さなければ気が変わるまで破壊を続けるでしょう。 運が良ければ国2、3個で済みますが悪ければ…………」


「わ、悪ければ何よ…… てか魔神討伐って何よ?」


「ふ、いくらお嬢様がバカみたいな魔力もちでも1人だと分が悪い。 俺も一緒に行く。 それに封印から目覚めた直後、眷属も碌に呼び出せていない今のうちに戦った方が勝機があるかもしれない」


 えっと……え? 私も戦う流れ?


「そうと決まれば朝まで待つ必要は無い。 俺の魔術で飛んでいきましょう」


 えっ? ちょいちょいちょーい!?


 私の戸惑いも静止も無視してアッシュは腕を引っ張って行く。


 やん、アッシュのクセに力強い……


 そのまま兵士達がいない城の裏庭まで連れて行かれると、そこにはバエルちゃんが待っていた。


「わ、わたしもお嬢様達と一緒に戦います!」


「そうか…… なら3人で行きますよ。 飛行フライ


「はわわわっ!?」


 なぜかやる気のバエルちゃんもアッシュに掴まると、飛行フライの魔法を唱える。

 すると、ふわりと身体が浮き上空まで昇っていく。


「しっかり掴まってて下さい、手を離すと落ちますよ」


「ひぃぃ」


 グングン小さくなって行くお城を下に見て背筋がゾッとするけれど、今度は前方へ凄いスピードで飛び始める。


「あばばばばばばばばばばばば」


「ったく、風除けの障壁ぐらい自分で貼って下さい」


 何よ風除けの障壁って!? アッシュが何かしてくれたのか風圧が急に無くなったけれど、さっきは息が出来なくて死ぬかと思ったわ!!


「お嬢様に少し説明しときますと、魔神とひと口に言っても、強さはピンキリです。 お嬢様のバカみたいな魔力なら大体の魔神なら再封印が出来るでしょう」


「再封印て、倒すんじゃないの?」


「倒せないんですよ。 俺たち悪魔もなかなか死にはしないが魔神はもっと死なない。 頭を吹き飛ばそうが粉微塵にしようが、復活してくる。 弱い魔神なら何度も吹き飛ばせばその内魔力が尽きて殺せるかもしれないけれど、上位の魔神は本当の不死だったりするんですよ。 まぁ、上位の魔神だったらそもそも勝てないですがね……」


「じゃあ復活したのが上位の魔神だったら、どうするの?」


 私の質問にアッシュは苦虫を噛み潰したような顔で答える。


「祈るだけですよ。 復活したのがヤツらじゃない事を……」


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