第16話 皇都ドキドキ大食いチャレンジ大会 後
「さぁ、やってまいりました毎年恒例! 第1回皇都ドキドキ大食いチャレンジ大会!!」
あの司会また恒例って言ってるんですけど、誰かツッコむの待ってるのかな? 誰もツッコみそうにないけれど……
「えー今回ですね、事前に参加を表明していた選手が全員!! なんと全員がですねボイコットするという前代未聞の不祥事! 珍プレーが起きましてですね」
珍プレーとは言わないだろ! とかお前のせいだろっ! って思ったけれどツッコミませんわ。
私はこれから始まる戦いの為に精神を集中しないといけませんからね。 胃と頭を空っぽにして集中集中!
「急遽参加者を募ったところ、こちらの4人の方達が立候補して下さいました!! ちょっと人数少ないので、あまり面白そうな選手はいませんが予選落ちは無しで進めさせていただきます!」
コイツちょくちょくイラッとするな。
「さぁ、参加者の紹介をして行きたいと思います! 先ずは1番最初に手を挙げてくれた卑しいお嬢ちゃん! フリージアちゃん〜! とても大食いできそうには見えない華奢な身体をしています! これはやはり売名目的なのでは? な〜んて勘繰ってしまいますねー! それと、職業欄に女盗賊って書いてありましたが…… わざわざ女をつけてしまう所がかわいいですねー! でも盗賊なんて自ら宣言したら捕まっちゃうぞ!」
ブッ◯してぇー!!
オホンッ、確かにゲーム脳で麻痺してたけど、盗賊って普通に犯罪者だわ……
他に参加者は3人…… ムカつく司会が紹介を続けていく。
「続きましてぇ、えーっと…… 特に取り立てて特徴のない普通の少年のショウ君ーー!!」
可哀想だけど、本当に普通の少年だわ。
明るい栗色の癖っ毛に少しそばかすが残る年頃の男の子が緊張した面持ちで立っている。
しかもさっきからチラチラこっちを見てくるのよね…… 何か変かしら?
「さぁ、どんどん行くよー!! 次は、花もはじらう16歳の女の子!! 薄い水色の髪がとってもキュートなサーナちゃん!!」
とってもかわいい女の子なんだけど、さっきからずっと無表情で怖いんですけど……
「そして、最後は〜! その黒いマントの下はどうなっているのか! 気になるようなならないような〜 見た目通りのダークホースなのか? 黒マントの大男、マックス!!」
さっきから私も気になってたんだけど、黒マントで全身を覆う、イカつい顔したオッサンがエントリーしてるんだよねー
なんであんな黒マントしてるんだろうなぁ?
「さぁさぁ、これから始まる前代未聞の大食い対決! 司会進行と実況は私、ススム・ヨウと解説は、出場するサーナちゃんの双子のお姉さん、シーナ・イーハナちゃんでお届けします!」
言われて解説席の方を見ると、確かに出場者の女の子とそっくりな薄い翠色の髪色をした女の子が座っている。 コッチも無表情だ……
「シーナちゃん、サーナちゃんとは姉妹だからって忖度したら駄目だからねぇ? ……さっきから黙っているけど、どうかしたのかな?」
「……マックスと言ったら……」
「マックス選手がどうかしましたか?」
「マッドマックスは2が至高だと思う……」
ぶふぉっ!? 何この子? 転生者!? それともマッドマックスがこの世界にも!?
「……聞き捨てならない…… マッドマックスは無印こそが最高」
さっきまで無表情だったサーナちゃんが反論する。
「……いいえ2よ」
「……無印」
「おおっとぉ!? どうやら姉妹で意見の不一致があった模様だ! しかーし、私には何の話か分からないし時間もないので食材の紹介を始めまーす!」
あの姉妹やっぱり転生者っぽい! あとでお話し出来ないかしら……
「食材は色々ありまーす! そして食材に囲まれた中央には熟練の料理人さんが大勢待機してくれています! ルールは簡単! 好きな食材を持って行き、好きな調理法で料理をしてもらいます。 その時に出来上がった料理の重量を測ってもらい、制限時間の90分以内に1番多い量を食べた人の優勝です!! 食材の選定、調理の時間、食べる時間を計算しないといけません! そして何より大量に料理を詰め込める胃袋が必要だ!」
なるほどぉ…… 調理時間が短いやつをいっぱい食べるべきかな?
「さぁ、今日の目玉食材は…… 本日水揚げされたばかりの巨大クラーケンだぁ!!」
スタッフが食材にかけられていた大きな布を取ると、中から巨大な白いイカが横たわっていた。
うわぁ、あんなにデカいと美味しく無さそう…… でもクラーケンだしなぁ、一度は食べてみたいなぁ……
私がモジモジ考えていると、クラーケンの近くにあるキノコに目が行く。
「あぁ…… そういえばあの時食べたキノコ美味しかったなぁ…… 幻覚が無ければまた食べたいなぁ……」
「ハァ、ハァ…… お嬢ちゃん…… キノコ好きなのかい?」
私が幻覚キノコを思い出していると、ふと声をかけられる。
振り返ると黒マントをはだけてデカいキノコが付いている黒いブーメランパンツを履いたオジサンがいた……
「ぎゃあーー!! 変態がいるーー!! 誰か捕まえてー!」
すると何人かのスタッフが直ぐにやって来たけれど、変態を捕まえずに帰ろうとする。
「あー、だって彼一応履いてるし…… ギリギリセーフ?」
セーフなの!? この世界だとセーフなの!?
「変態だなんて失礼ですな! 俺はこう見えて皇国軍皇都見廻隊第3部隊隊長だぞ!」
「へ、変態さんじゃなくて兵隊さんだった!?」
「そうさ! 俺の名前はマックス・ヘンダーソン! 部隊の皆んなからは『とってもヘンダーソン』って呼ばれているんだぞ!」
そう言ってマントを脱ぎ捨てると頭にパンティを被り始めた
「MAXで変態じゃないか!!」
うわ〜ん!! どうしよう! 変態だよー!
ガオンしちゃえば消えるけど、流石に人死にはなぁ……
もっと使い勝手の良い魔法を考えないと!!
私は迫り来る変態から逃げ惑いながら新しい魔法を考える。
やっぱり電流でスタンさせるのが非殺傷なら手っ取り早いかな!
「フリージアさん逃げて! ここは僕が!!」
「あぁっと。逃げるフリージアちゃんを庇うように普通の少年のショウ少年が変態の前に立ちはだかる!」
なんか司会が実況し始めた!?
「あぁッと、これは何か左腕に付けているなって思っていたら………… あれは、まさしくデュエルディスク!! 奴はデュエリストだった!!」
「ぎゃあ!!」
「デュエリスト虚しく、変態に突き飛ばされて退場だぁ」
何しに出て来たのよあの子!? 全く…… でもお陰でスタンガン魔法を構築したわ!!
「いっけぇ!! 電撃ぃぃ!!」
「ぎゃあ!!」
私が魔法を使うと、まだちょっと加減がわからなくて辺り一帯に電流が流れてしまった……
あっちゃぁ…… やっちゃったかな……って!? えぇ!? 横たわっていたクラーケンが動き始めたんですけどぉー!?
「おおっと!! 一瞬眩しい光が発生したと思ったらクラーケンが復活しているぞーー!! やばーい! 私は逃げまーす!!」
大きな身体を起こすと長い触手を振り回して暴れているクラーケン。
周りの観衆達は逃げ惑っているし、変態は居るし、デュエリストもいるし、まだマッドマックス論争してる双子は居るしで阿鼻叫喚の地獄絵図だ…… もう大食い大会は無理じゃないかな…… 司会も逃げたし……
はぁ、とりあえず責任とってあのイカちゃんはやっつけときますか!
魔獣ならば死んでも平気かな? 私は右腕にガオン魔法を発動して巨大クラーケンに突撃する!
「おりゃあぁー!」
どど〜んって音を立てて巨体が倒れる。
うわっ!? クラーケンのどてっ腹に穴を開けて倒したんだけど、クラーケンの体液が全身に降りかかってきた!!
さらには食材の山に突っ込んじゃって、もーー最悪!!
「イタタタタ…… うわ〜ベトベトする〜!! イカ臭〜い!!」
「お、お嬢ちゃん…… な、何という格好を…… 逃げるんだ!! お、俺のキノコから菌糸が飛び出す前に!」
あっ、この変態さんまだ居たんだ! また何か気持ち悪い事言ってるし!
「ま、まて!! 僕がフリージアさんを守るんだ!! 今まで僕はずっと普通だと思っていた…… でも、今日本当の自分を発見したよ!」
あら? なんかショウ少年がキラキラした目で私を見てる……
「僕が…… 僕が本当に好きだったのは…… 貧乳の女の子がイカ臭い白い液でベタベタになってナスとかキノコを握っている…… そんなシチュエーションが…… ごふぅっ……」
ちょっと少年の性癖を変な方向へ捻ってしまったみたい。 1発殴って正気に戻るかな…… もっと殴っとこうかな……
うぅっ…… 結局何も食べれなかったし……
帰ってココに何か作って貰おう……
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