第15話 皇都ドキドキ大食いチャレンジ大会 前


「ワイバーン食べたい!」


「お、お嬢様? 急にどうしたんですか?」


 私の唐突な物言いに目を白黒させているのは、私の専属スイーツメイドのココだ。


 専属スイーツメイドとは、私が勝手に名付けたんだけれど、主に私のお茶を淹れてくれるメイドさんだ。

 その他に、お茶請けとしてのお菓子を作ってくれたりもする。

 皇都の有名店とかのスイーツを買ってきたり、流行最先端のスイーツを調査したり……

 とにかく私の好きな物を選んだり、探したり、作ったりして私をぷよぷよのマシュマロボディにした張本人である。

 あっ、別に怒ってる訳じゃないよ、むしろ大好きである。


「私の情報網によると最近ワイバーンが討伐されたとかで、冒険者ギルドで解体ショーをするとかなんとかってきいたわ。 ワイバーンのお肉って美味しいんでしょ? 食べてみたいわぁ」


「だ、駄目です! ワイバーンなんて下賤な食べ物をフリルお嬢様に食べさせる訳には……」


 ほほぅ、ワイバーンは下賤な食材なのね。 初めて知ったわ。 でもよく物語とかでワイバーン食べてンまぁーい!! ってやってるから私もやってみたいのよね。


 あれ? その物語って前世のだっけ?


「それにワイバーンなんて食べても美味しくないですよ! 竜とは言っても所詮は亜竜種ですから、やっぱり高貴な血筋のフリルお嬢様ならちゃんとした竜! ドラゴンをお食べになって下さい!」


「ドラゴンったってそうそう討伐なんかされないでしょ?」


「そうですねぇ…… そもそもちゃんとしたドラゴンなんて今では絶滅危惧種ですし……」


 


☆★☆★☆★☆★☆★



 という事で、ワイバーンのお肉を食べる事を禁止された私は美少女バージョンへと変身して街へと繰り出すことにした。


「へっへっへ、禁止されると食べたくなるってのが人情よねぇ……」


 今回も城を出るまでは透明化して移動する。 そこから、今度は誘拐されない様にお嬢様のようなドレス姿じゃなくて冒険者の格好にしてみた。 留守はコピーちゃんとアッシュに任せて来た。


 動きやすさを重視してよく見る女盗賊の様な格好にした。

 髪をツインテールにして、ショーパンから出ている太ももとかわいいおへそが見えている所がチャームポイントだ。


 今回は前回出来なかった街の散策をしつつ冒険者ギルドを目指し、あわよくばワイバーンのお肉にありつけたらなんて考えて歩いていると……


 広場の辺りに人集ひとだかりができているので近づいてみると、丁度司会らしき人が挨拶をする所だった。


「はーい! 皆さん! お静かにー!! そろそろね開始しますよー! いいですかー?」


 オォォォォオオオオ!!!


 司会の人がマイクを片手に話し始めると大衆から大きな歓声が起こる。


 一体何が始まるのだろう? これだけ人々が集まっているからきっと人気なイベントなんだろうな。


「それじゃあ、会場があったまって来た所で始めるぜ!! 毎年恒例!! 第1回、皇都ドキドキ大食いチャレンジ大会ーー!!」


 オォォォォオオオオ!!!


「恒例じゃないし!?」


 たかが大食い大会にこんなに大衆オーディエンスが集まるなんて…… しかも恒例といいつつ第1回なのに。

 だれか有名人でも来るんだろうか?


「さぁ、今回初めての開催になる本大会ですが、こんなにも大勢の人々が集まってくれたのはひとえに、この皇都のNo. 1アイドル、エレオノールちゃんのおかげだぁー!」


 オォォォォオオオオ!!!!


 なんか凄い熱気が!? ってかエレオノールちゃんってまさか……ね……


「しかーし! 残念ながらエレオノールちゃんに出したオファーは断られてしまった!! それを俺は今まで隠していたが、さっきバラした結果参加者が全員帰ってしまった!」


 Booooo!!!!!


 グダグダになってる! すんごいグダグダ!!

 あの司会この後殺されるんじゃないかって心配になるくらいのブーイングが飛んでるけど大丈夫かな!?


「そこでっ! ここに集まった食材達を無駄にするのも勿体ない! なので、今から参加者を募りまーす!! 我こそは!! って思う人はどんどん参加して下さい!」


 うーむ。 これは急遽大食い大会に参加出来ると考えればラッキーなのかな?


「はーい!」

 

 そう思って、私は誰よりも先に元気に手を挙げた。


 よっしゃあ、私の四次元胃袋を見せてあげるとしましょうか!!


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る