第14話 新しいメイドさん
「うひひひひぃ…… キノコぉ、おっきいキノコが欲しいのぉ……」
イタッ!?
「あれ?」
「フリル!! 目が覚めたのか!!」
私が目を覚ますと知らない天井……(2回目)じゃない、褐色のイケメンが!?
ってレオンお兄様じゃないですかー
いやいや、さっき誰か叩かなかった? レオンお兄様がそんな事する筈ないし……
私がベッドの横に座っているレオンお兄様から目を離し、ぐる〜と顔を回すと……
いた! 犯人だ! 黒いスーツを着たアッシュが私の頭の方でニヤニヤして立っている。
「お気付きになられましたかフリルお嬢様」
「フリル! もう俺の事を庇うなんて馬鹿な事はしないでくれ! フリルに何かあったたら、俺は…… 俺はもう…… 」
うーむ、なんだか記憶が朧気だなぁ……
でっかい美味しいキノコがあった気がしたけど…… それを捕まえてからが良く思い出せないなぁ……
「フリル、俺はちょっとお医者様を呼んでくる。 大人しく寝てるんだぞ」
そう言ってレオンお兄様が部屋から出て行く。
「お嬢様。 あの森でお嬢様が食べたキノコはサイロ茸と言って強い幻覚作用のあるキノコなんです。 幻覚を見た後は強い眠気に襲われるぐらいで、命に危険はないので放っておきましたが覚えてますか?」
「なるほど…… あのキノコが…… って、知ってたんならちゃんと注意しなさいよ!!」
「あれは幻覚を見るという点を除けば大変味はいいですからね。 まぁ食べさせてやろうかと」
「まだちょこちょこ言葉遣いが悪いわね」
アッシュが澄ました顔で答える横にメイド服を着た女の子……
「あら? あなたは? 見た事ないメイドね」
「お嬢様、本当に覚えて無いんですね…… あの時戦った悪魔ですよ。 名前をバエルといいます」
はぁ? 何やらアッシュが衝撃的な事を言ってらっしゃるけれど……
たしかに記憶にあるあの大きな蜘蛛の魔獣…… その蜘蛛の胴体部分から上半身だけ出ていた女性…… に、似ていなくも無い……
「アィエエェェェ!?」
「何奇声上げてるんですか?」
変な声でちゃったけど…… 思い出して来たかも……
という事は、整理すると……
「私が幻覚キノコを食べた後、見たアラクネーみたいな蜘蛛女はその子のコスプレで、なんかその時アッシュに角が生えた様に見えたのもマボロシー! って事!?」
「こすぷれ?」
「はぁ…… お嬢様の理解力はブタ並みですか?」
また失礼な事を言っているアッシュの横で黒髪黒目で黒縁メガネをかけた女の子が首を傾げている。
「この子があの蜘蛛女だとしたら大分違うんじゃなくて? こんなに大人しそうな感じじゃなかったでしょ?」
「あぁ、悪魔は解放段階に応じて変わるんですよ。 覚えて無いんですか? 俺がコイツにトドメを刺そうとしたのをお嬢様が止めて、バエルの禁書を亜空間に投げ入れたんじゃないですか」
「えぇ!? 止めた? うーん…… 覚えて無いけど…… てか、えっ? 禁書(厨二)仲間なの?」
プッ…… 笑いが漏れるのを堪えるので必死だ……
「禁書仲間…… 仲間かどうかは知りませんが、悪魔同士ではありますね」
「へぇ…… (厨二)同志ねぇ……。 で、なんでメイド?」
「はぁ、お嬢様がグースカ寝てしまうから仕方なく新しくお嬢様が雇ったメイドって事にしたんですよ。 どうやらお嬢様の亜空間に禁書を入れられると強制的に1段階まで封印されるみたいで…… コイツ、1段階目だとこんな大人しいんですよ。 だからかレオン殿下も気付かなかったみたいで」
「わ、わたし、解放段階が進むと気が大きくなっちゃうんです。 ご、ごめんなさい!! …… あと…… えと、命を助けてくれたフリルお嬢様に誠心誠意仕えさせていただきましゅ」
あっ、噛んだ。 なんか可愛らしい感じの子じゃない…… 胸は可愛らしくないけど!
お姉様達といい、この子といい何!? 何食ったらそんなに発育いいのよ!?
これが胸囲の格差社会って奴か……」
「何くだらない事言ってるんですか。 それじゃあ、俺はコイツに仕事教えてくるんで。 まぁグータラしてて下さい」
「あれ、声に出てた? ってか言葉! アンタもいい加減言葉遣い気をつけなさいよ! 私だからいいけどお兄様やお姉様にそんな口きいたら捕まるからね!」
くぅ、振り向きもせずに手をヒラヒラさせるだけとか!
バエルちゃんは、どうやらいい子みたいでペコペコお辞儀しながら出ていったわ。
さてと…… じゃあゆっくり寝ようかしら。
いや、ちょっとお腹が減ったわね。
☆★☆★☆★☆★☆★
それから数日間、療養という名の怠惰を貪っていた私は今、レオンお兄様と謁見の間に来ている。
いつもならレオンお兄様は気さくにハグしてきたりするのに、妙に緊張しているようだ。
若干、額には汗も見える……
こ、これはもしかしてお父様に怒られる!?
お父様って言うのは勿論、このハインデル神皇国の現皇帝アインノルド・ハインデルの事ですわ。
あわわわわ、久々に会うのに怒られるー!?
何で!? 何か悪い事した!? 食っちゃ寝ばっかりしてたから? 怠惰な生活ばっかりしてたから!?
「お前たち、久しぶりだな。 良く来た」
奥から現れたお父様は玉座に座ると私たちに話しかけてくる。
「では、まずはレオン。 事の顛末は聞いた。 禁書の悪魔が出たそうだな? その割には犠牲者を1人も出さず悪魔を撃退せしめた事褒めてつかわす。 しかし、レオンよ。 お前が武芸に秀でている事は知っている。 知っているが…… やはり一個小隊だけで魔獣の討伐は危険なのだろう。 これからはもっと大部隊で討伐任務にあたるがいい。 お前はこの国の将軍位であるがその前に第2皇子なのだからな」
「はい。 申し訳ありませんでした」
お父様の言葉にレオンお兄様が頭を下げたまま答える。
そうね、お父様も心配しているのだろう。 それにしても、昔は『鬼のアイン』と呼ばれていただけあって、60歳間近なのに凄い威圧感!
「そして、次に……」
いやぁぁああ!? 私の番だぁ! 今まではお父様も甘々の甘々だったから1度も怒られた事なんてなかったのに……
今日初めて怒られるんだぁ……
「次に…… デブリルよ」
「フリルです。 お父様」
コイツ、名前間違えやがった! あり得ないでしょ!? 普通娘の名前忘れる?
「おぉ…… じょ、冗談だよ。 アハハハ……ハ…… ではフリルよ」
「はい……」
コイツ、絶対冗談じゃない! 怒られたくないよー!! やっぱりいくつになっても怒られるのはイヤよねーー
「でかした! なんでも悪魔に襲われそうなレオンを間一髪、身体を張って守ったらしいな。 フリルのおかげで、レオンを失わずに済んだ。 礼を言う。 ありがとう」
あ、あぁ…… なんだろ、記憶に無い事で感謝されると反応にこまりますわ。
「そこで、フリルには特別に皇位継承権を与えようと思う」
イヤイヤイヤイヤ!! 要らないですって! 継承権なんてトラブルの宝庫よ! 私は家でのんびりと暮らしたいだけなのに……
「えっと…… 謹んでお断りさせて頂きます」
私がハッキリと断るとお父様とレオンお兄様がびっくりした顔をしているわ。
ちょっと面白い。
けど、私の未来設計に皇位はありませんわ!
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