第9話 幕間 バイケン視点


 俺の名前はバイケン。 最近はここハインケル神皇国のハンターズギルドで仕事を受けているハンターだ。 レベルは8でこれでも上位のハンターをやっている。 レベル10が最高ランクみたいだが、レベル10の奴らなんてどいつもこいつも人外レベルらしい。 


 俺ぁいつもの様に王都のハンターズギルドに顔を出すと、顔見知りの2人をギルドに併設された酒場に見つけた。


「よぉ、エトル。 神官様が昼間っから酒場に居ていいのかよぉ? ん?」


「こんにちはバイケンさん。 もちろんお酒なんて飲んでいませんよ。 今日はユーノスさんと仕事の打ち合わせですよ」


 俺が今声を掛けたのが、レベル6神官戦士のエトル。 そしてそいつの隣で昼間から酒を飲んでいる女がユーノス。 レベル5の魔術師だ。


「やぁ、バイケン。 景気はどうだい? 聞いたわ、1人で人身売買の組織を壊滅させたんだって? 奢りなさいよ」


「はっ、全く二言目には奢れ奢れと…… 俺よりよっぽど稼いでるんだろう学者さんはよぉ?」


 神官であるエトルは神殿で、魔術師のユーノスは魔術師協会の研究職と、ハンターの仕事以外に本職を持っている。


 エトルがハンターの仕事を受けるのは、聖遺物などの調査や神敵である悪魔関連の時だ。 そして魔術師であるユーノスがハンターの仕事を受けるのも、研究材料の調達や魔術関連。 取り分けユーノスが積極的に受ける仕事は黒魔術、悪魔関連だ。


「南のアドルで禁書らしき本が見つかったらしいわ。 封印は解かれていないみたいだし、まだ危険は無いらしいけれど…… アンタも行くかい?」


「なんでだよ? 俺ぁ悪魔になんか興味ねぇよ。 それよりよぉ、最近聞く聖女様ってのはこの街にいんのかよ?」


「聖女様? 現在巡礼している聖マリーの事ならば西方諸国の聖域を巡っているはずですよ」


「そうかい。 んじゃあやっぱ違うのか……」


「何かあったんですか?」


 俺はこの間の仕事で出会った少女の事をエトルとユーノスに話してみた。


「……にわかには信じ難いですね。 多分ユーノスさんも同意見でしょう」


「そうね、アンタの頭がおかしくなったのか、アンタの脳みそが腐っちまったのかどっちかだろ?」


「おぉ? おかしくもなっちゃいねぇし、腐ってもいねぇよ。 信じられねぇかもだが本当なんだよ」


「神への祈りもなく、回復魔法…… 話を聞くにおそらくレベル8、完全回復パーフェクトヒールを使い、さらに解毒キュアポイズン…… そして攻撃を防いだ…… これは神聖魔法ならレベル4、聖盾ディバインシールドかもしくはレベル9、大聖堂カテドラルですが…… 現実的ではありませんね」


魔術的魔法マナソーサリーなら防御魔法はもっと色々あるけれどね。 神聖魔法と同時に使うのは難しいだろう。 それに…… 付与術エンチャントまでしたって? もし本当なら大賢者も真っ青な神の御技だよ」


「俺ぁ、魔法には詳しくねぇんだがそんな難しい事なのか?」


「難しいかって? ふふっ、そうね簡単よ。 アンタがナイフでもってドラゴンとベヒーモスとエルダーリッチをやっつけるぐらいの難易度よ」


「そいつはぁ…… なかなかだな…… まぁ、一杯奢るぜ」


 不機嫌になったユーノス──まぁ、いつも口は悪いんだが…… 一杯奢ってやると言えば途端に機嫌が良くなる。 

 俺より稼いでるくせに他人の金で飲む酒は美味いんだと。


「それより、本当に一緒にアドルに行かないのかい? もしかしたら悪魔と戦えるチャンスかもよ? 戦闘狂のアンタには美味しいだろう?」


「だからよ。 悪魔なんて今までちゃんと顕現した事ないんだろ? そんなオカルトよりかぁ魔獣相手に刀振るってた方がよっぽど良いぜ。 それに俺ぁ仕える君主を見つけたんだ。 機会があったら紹介してやるよ」


「アタシにしてみりゃあ、その女の子の方がよっぽどオカルトだけどねぇ」


「そうですね。 もし本当にそんな少女がいるなら聖女として…… いや直ぐにでも女神として祭り上げますよ。 ふふ」


「はいはい、どうやら俺ぁ信用ねぇみてぇだからな。 んじゃあ土産待ってるぜ」


 何を言っても信用しない2人との会話を切り上げるとギルドの方へいい感じの依頼が無いか確認しに行く。


 俺はあの時…… お嬢の身体の周りが光輝いて見えたんだ。 本当に女神なんじゃないかと思ったんだ……

 

 このままハンターを続けていれば、いつかまた会えるだろうか……


 

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