第6話 2秒で誘拐されましたわ!


 さぁてと、本日は朝から王都を探索しようと思うの!

 だってせっかくコピーロボットでアリバイを作りつつ、美少女に変身まで出来るわけだから? そりゃあちょっくら市井の営みを? もとい食文化を見学と言うか食べ歩きと言うか? しないとね!


「アッシュ、まだコピーちゃんは複雑な受け答えは出来ないからAIが成長する迄はフォローお願いね!」


「はい、かしこまりました」


 私は既に美少女バージョンに変身して身支度も完了している。

 魔力で形作ったお洋服は品の良いワンピースだ。 髪の毛もツインテールに結んでテーマとしては皇族には見えないけれどちょっと良いお家のお嬢様だ。


 そして私の影武者であるコピーロボットちゃんにはAIを搭載してみた。

 もちろん機械じゃないんだけど、大量の魔力で作られているせいか意外となんでも出来そうなのだ。

 魔法がイメージで使えるこの世界だから、先ずは動画を記録する魔法を作り、ここ数日の私の行動を記録しておいたのである。


 それを読み込ませて私の性格や対人関係などを覚え込ませたのだ! 中々大変だった……


 でもでも、まだまだ本物である私にはほど遠いのでしばらくはアッシュに補助を頼まなくちゃ駄目みたい。


「ところでお嬢様、この豚はエサとか食べても問題ないんですか?」


「飲み食いした物は亜空間に入るようにしたから問題ないわよ…… それより私に向かって豚とは不敬じゃなくて?」


「え!? この豚はお嬢様ではありませんよね? お嬢様は其方にいるほっそりとした大変美しい方ですよね? つまりコレはお嬢様の代わりの豚ですよね?」


「いやいや、確かに私はここにいる美少女なんだけれど、そっちの仔豚ちゃんも私なわけで……」


「でも俺の仕えている本物のお嬢様は貴女様だからこの豚は豚と呼んで差し支えないのでは? それに豚を豚と呼んで失礼に当たるとするその考えこそがそもそも豚さんに失礼なのではないでしょうか? 昨今豚さんは品種改良されてあまり大きくならない品種がペットとしても人気を博している様でございます。 まぁこの豚はデカいですが…… それに実は豚は綺麗好きとも言いますし、豚と言う言葉を侮辱と捉えるのは如何なものかと」


「え!? え!? えぇ!? そ、そうね……確かに豚さんかわいいものね…… なんか納得行かないけれどまぁいいわ……」


 私のコピーロボットちゃんを豚呼ばわりするのを注意したら何か物凄い勢いで捲し立てられたわ!?

 上手く誤魔化された気がしないでもない……


 まぁ、今日は初めてのお使いならぬ、初めてのジャンクフード漁り。 未知なる食を求めていざ!




☆★☆★☆★☆★☆



 はい…… えー今現在私はずた袋を頭から被されてエッサホイサと何処かに運ばれています……


 そうです王城から出る為に透明化の魔法を使い、良いところのお嬢様ロールプレイをする為に近くの伯爵家の出入り口辺りまで移動した後透明化を解除、街をぶらつく予定だったんだけど…… 透明化解除して2秒で拐われたわ……


 この伯爵家から出てくる子供を狙ったのか、たまたま人攫いが獲物を物色していた所に出くわしたのかは分からないけれど……


 凄く手際良く猿轡をされずた袋を被され、リアカーか何かに乗せられて移動しています。


 ふふふ…… まぁ私ぐらいになればこんな奴ら魔法でチョチョイのチョイなんだけれど、敢えて逃げないでいるのよ。 あえてね。


 なんでかって? こんな人攫いする様な奴ら、きっと他にも仲間が居たり他にも誘拐された子がいたりするかもしれないじゃない?

 だからあ、え、て、まだ逃げないのよ。


 そんな事を考えていると、荷車的なものが停まり肩に担がれて何処かに運ばれた様だ。


 ──人攫いのアジトかな……


「おし、上手い事上玉を攫えたな!」


「あぁ、しかし……あそこの家の娘ってこんなに美人な子供だったか?」


「さあな? まぁ、身代金を貰って更にこの娘も売っ払う。 それには上玉に越した事ないだろ?」


「まぁ、そうだな」


 ふむふむ、どうやらあそこの伯爵家の子供が狙われていたらしい。

 しかも身代金を取った挙げ句、解放せずに売っ払うなんて悪どい奴等だ……

 これはお仕置きが必要ですな!


 男達が部屋から出ていったのを見計らって拘束を解いてずた袋を外すと何やら物置の様な、乱雑に様々な道具が置かれている部屋に運ばれて来たようだ。


 ──うーむ、とりあえずこの部屋には他に子供は居ないようだけれど……


 一通り辺りを観察した後にドアに近づき耳をそばだてると、何やら争う音が聞こえてくる。


 そっとドアを開いて声のする方へ向かうと、先程の男達と更にその仲間らしき男達、合わせて4人程が中二病的な眼帯をした男と向かい合っているのが見える。


 眼帯をしたオッサンは着流し姿で腰には刀の様な武器を差している。

 良く見ると既に足元に2人ほど倒れている様だ。


 仲間割れだろうか? それとも殴り込み? あんな和風な格好もあるんだね、初めて見たわ。


「芒に月、菊に盃…… 月見酒!」


 眼帯をしたオッサンが何やら呟き腰の刀を抜き放つ。 手が速過ぎてちゃんと見えなかったけれど、2、3回刀が煌めくと相手の男達はバタバタと倒れてしまった。


 ──居合斬り!! カッコイイ!!


「ほぇ〜」


「ぅん? なんだ嬢ちゃん? どっから来た? 拐われたわ子か?」


 思わず感嘆の声が漏れ出てしまうとオッサンに気付かれて話しかけられた。


「そうなの。 今さっき連れてこられたばっかりよ」


「ほぉ、そりゃあまたタイムリーだな。 俺ぁハンターやってるバイケンってんだ。 ここの人攫い共のアジトを壊滅させる為にやってきたのよ。 ついでだから付いてきな」


 なるほどぉ、どうやらこのバイケンってオッサンはいいオッサンの様である。


「わかったわ。 それならここを出たら美味しいスイーツでもご馳走するわ!」


「お、おう……」


 何やら微妙な顔されたけれど…… オッサンにはスイーツじゃなくてご飯のが良かったかしら?



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る