第4話 ガオン魔法誕生!!


「はぁ? 魔法を使ってみたいだぁ?」


 あら? 私ったら何か変なこと言ったかしら? なんでこんな苦虫を噛み潰したような顔をしてるのかしら? この……少年は


「……アナタ名前なんでしたっけ?」


「アシュタロトだっ! さっき名乗ったろうが!」


「そうでしたっけ? 確かになんか聞いた気がしないでもない。かも知れない? でもでも、アッシュタルトなんて美味しくなさそうね?」


「アシュタロトだ! アシュタロト!」


 少年は端正な顔を歪めて抗議してくるけれど、私はタルトが食べたくなってきたわ! 明日のスイーツはタルトにしましょう!!


「おい……もう逃げないから体勢を戻していいか?」


「アーハン」


「くっ! なんかいちいちイラつく女だ……」


 なんだか失礼な事ばかり言うわね、このアッシュ……髪の毛も灰色だし、アッシュってピッタリじゃない!


「ところでアッシュ、魔法教えなさいよ?」


「アッシュ? まさか俺の事か?」


「アーハンッ」


 反応が面白かったから今度はドヤ顔もプラスしてみたら、余程悔しいのか涙目でプルプル震えているわ! ふふっいつまでその設定を遵守出来るかしら?

 あれ? もしアッシュがブチギレて襲ってきたらヤバくない? ……イジるのは程々にしとこうかしら?


「……魔法ってのはな、自由なんだ。しっかりとイメージして魔力を込めれば発動する。悪魔と違って人間はイメージの補助や少ない魔力を効率的に使用する為に、詠唱や魔方陣なんかも使ったりするけどな」


 なんだか遠い目をして色々諦めた顔になっちゃってるけど? 大丈夫かしら?


「なるほど〜じゃあよくあるマジックバック? インベントリ? みたいなのは亜空間か何かイメージしながら手を突っ込めばいいのね?」


「ん? マジックバックは実際にバックに……うわぁぁああ!?」


 とりあえず持ってるの疲れたこの重い本を仕舞い込もうと、亜空間をイメージ……でも亜空間とかよく分からないわ……私がイメージ出来るのは…………亜空の瘴気!! ガオンッ! って感じで本を収納完了ッ!!

 

「なななななな……何してんだぁ!?」


「え? 亜空間に収納したのよ?」


「いやいやいやいや、今の完全にこの世から抹消された感じじゃない? いや、待てよ……魔封緘禁書が無くなれば俺は自由なんじゃ……」


「ちゃんと取り出せるよー?」


「デスヨネー!! クソがぁー!? なんだこの女! 規格外にも程があんだろ!!」


 私がガオンバックから禁書を取り出すと、またうるさい声で騒ぎ始めたわ……う〜ん……


「アッシュ、うるさいし言葉遣いが汚いわ! 静かに丁寧に。熟練の執事の様な優雅さで行動なさい!」


「んなっ!? か、畏まりました。フリルディーテお嬢様」


「おほっ!? いいじゃない! いいじゃない! やれば出来るのね! そのまんま行けるなら、顔は良いし、私の侍従として召し抱えてあげるわよ」


「ありがとうございます。フリルディーテお嬢様」


 うんうん。なんだか血涙が幻視できるけど、きっと気のせいよね。


「そうそう。私、自由に魔法が使えたらやりたい事があったのよ!! アッシュってばコピーロボットって知ってるかしら?」


「申し訳ありません、お嬢様。浅学非才の身ゆえ存じあげません」


「あらそう? ちょっと堅すぎるわね。もう少しフランクでも構わなくてよ。疲れるでしょ? それとね、コピーロボットって言うのはお顔に小さいボタンがあってね、それを押した人とソックリに変身するロボットよ」


 私が説明するとアッシュは少し目を見開いたあと、流石にそれは聞いた事も見た事もないから再現できるか分からないって言って来たわ。


 だから──


「ん〜〜〜〜!!」


「……何をなさってるのですか?」

 

 魔力を全開で、とりあえずイメージしやすい自分の姿になるように圧縮していくわ。

 徐々に人型になっていく漆黒の魔力の塊。ちょこっとダイナマイトなボディを再現したら、肌やら服やらも細かく再現していく。


「完成〜〜!!」


「あ、ありえない……はぁ? なんですかその姿は!?」


 私が作ったコピーロボットを見て口をぱくぱくしていたアッシュは今度は私を見て驚いている……なんでかしら?


「どうかした?」


 私の動きに合わせてコピーロボットも首を傾げる。 きゃー!! 可愛いっ! この可愛らしい仔豚ちゃんは何!? そりゃあ兄様達も餌付けしたくなるわ……


「鏡を見てみろ……下さい。 どういう原理なんだ……」


 なんだかブツブツいいながらアッシュが魔法で姿見を出してくれたわ。

 自分と自分のツーショットが見れるのね! 


「……………………えっ? 誰?」


 そこに映っていたのは、ずり落ちそうなパジャマに身を包んだ、ほっそりとした美少女だった……


 その後コピーロボットの魔力を戻すと元のダイナマイトボディに戻ったわ。

 どんな原理かわからないけれど、どうやら私はコピーロボットを出すと痩せて、吸収すると元に戻るみたい!


 つまり──


 これからはお忍びで下街にジャンクフードを食べに行けるって事だぁーーーーー!!



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