第3話 異世界にも厨二病はありまぁす!
「あれぇ? アナタは誰?」
私は相手が子供という事もあり、特に警戒心も持たず、つい話しかけてしまう。
「なんだ? このチンチクリン……いや、ずんぐりむっくりは?」
「ちょっ!? 初対面のレディ相手にずんぐりむっくりは無いでしょう!?」
「ふん、どうやってここまで来たんだか……どうせなら皇族が来れば良かったのに……」
「何言ってるのよ? 皇族ならここに居るじゃない? 第3皇女のフリルディーテ様よ! フフンッ」
私が胸を張って名乗ると白灰髪の少年は目を丸くして驚いている
「まさか……いや、嘘だな。ここの皇族は代々美男美女ばかりだ」
「ちょーい!? いま遠回しにディスってない?」
「ふんっ、皇族だと言うならこの扉を開けてみろ? 皇族の魔力に応じて段階的に鍵が開く仕組みだ」
「えー? どうしよっかなー?」
「くっ、なんだこの不快な生物は!」
ちょっと意地悪しちゃったけど、元々その部屋が目的地なのだった。
「まぁ、皇族の魔力で開くなら入れそうで良かったわ」
私が幾重にも魔法の鍵がかかっている扉に近づくとまたバチって静電気が走ったけれど、乾燥しすぎじゃない?
「わお!?」
わかりやすく南京錠の形をしている場所を触れると扉全体に虹色の線がいい何本も走り、ガシャンガシャンと解錠されていく音がする
「なっ!? まさか1発で全て開いたのか? それにしても、何故本物の皇族が……そうか! そのナリのせいで不遇を背負って生きてきたからその復讐の為か……」
どうやら今ので全て解錠できたらしい。少年がなにやら驚いた顔をしてブツブツ言っているので、とりあえずドヤ顔しておこう。
ドヤァ!!
「フフン。ところでこの部屋って何の部屋なの?」
「えっ? あ、あぁ、ここは禁書庫だ。魔封緘禁書を保管している場所だ。と言っても現在は1冊しか無いけどな」
「ほへ〜、アナタ詳しいのね? ところで、まふう……かん……しょ? 何それ?」
「魔封緘禁書だ。まふうかんきんしょ。所謂、悪魔や魔神の類を本の形をした魔方陣に封じているやつだ。1ページ1ページに悪魔を封じる魔方陣や魔法式、真言、神言、呪禁、などが書き連ねてある。つまり、頁数が多く、デカイ本ほど強力な悪魔が封じられているんだ。……ここにあると知ってて来たんじないのか?」
なんだか難しい事言っているけれど、ファンタジー感があってワクワクしてくるわ!
だから私はニヤリと嗤って少年にワクワク感を表現するわ。
ゆっくりと扉を押し開いていくと、本棚に囲まれた部屋の中、中央に一際目を引く、分厚い本が見える。
豪華な装飾が施された背表紙に太くて黒い鎖が巻き付いている。
これが本当のチェーンドライブラリー?
「さっきの説明だとおっきい本のが危ないんでしょ? この本はどれくらい?」
後ろを振り向くと少年は感動でもしているかの様に目を潤ませ、打ち震えている。
「ん? どれくらいって何だ?」
「えと、この本の厚さはどれくらい危険な悪魔が封じられているの? その魔封緘禁書? だっけ? それの平均ぐらいだとか、薄いとか厚い方とか」
「あぁ、なるほど。そういう事なら間違いなく最大級の禁書だ。このアシュタロトの禁書は」
「へー、危ないんだねぇ。それじゃあ帰ろうか」
金銀財宝があると思っていたのに、たかだか古い本一冊じゃあ、まったくの期待外れだ。
「は? ま、待て! あの本の封印も解け!」
「えぇ!? 嫌よ、怒られちゃうじゃない、そんな危険な封印解いたら……」
「待て待て!? はぁ? じゃあ、何しに来たをだ? まさか本当にここには興味本位で来ただけなのか? この封印を解いて世界に復讐してやるんじゃないのか? その容姿のせいで酷い目にあっていたんじゃないのか?」
一体何を言ってるのかしら、この子は? 過保護に甘やかされてしかいませんけど? ご覧なさいなこのワガママボディを!!
って、胸を張ったら、突き飛ばされてしまったわ!?
「きゃっ」
「くそっ! 扉の封印を触っただけで解除できるんだから、解呪、破魔、解放、破棄? なんか知らんが、そこら辺のスキルがあるんだろう? 触れれば封印が解けるはずだ!」
「とっとっと!?」
ちょっ!? この身体はバランス的に押されたら転がっちゃうんだから。やめっ!?
パリンッ!!
あちゃー!? なんだか予想よりも遥かに甲高い破壊音が鳴り、触れた? と言うか転がって巻き込んだ魔封緘禁書は地面に落ちた。
「ヤバっ!?」
私は急いで本を拾い上げるとどうしようかとアタフタしてしまう
「クククッ、クハハハハッ!! やった!! やったぞ!! 一体何年ぶりだろう完全に外に出られたぞっ!!」
なんか少年が急に悪役みたいなムーブを始めたんだけれど、これはノってあげた方がいいのかしら?
「えっ、えっとー、アナタ、アナタは誰?」
「クククッ、俺様の封印を解いてくれた礼に特別に教えてやろう! 俺様が魔界の大悪魔アシュタロト様だ!」
おっ!? どうやら正解みたい。なんだか悪魔? らしいのは居ないし、きっとこの少年の厨二病の設定だったのね。
こんなファンタジーの世界にも厨二病ってあるのねー。
「クククッ、オマエはそんなナリだが皇族みたいだからな、まずは、その身体を乗っ取ってこの国を内部から地獄に突き落とすか」
そう言って少年は私に手を伸ばしてくると……バチッーンッッ!!
めっちゃ静電気が来たっ!!
「なっ!? バッ、バカなっ!? なんだコイツの魔力密度は……化け物めっ!?」
ちょっ!? ひどいっ! 確かにグータラゴロゴロしていたせいで、ちょっとワガママボディだけれど化け物呼ばわりは酷くないですか?
「待って! 待ちなさい!!」
少年は何を思ったのかダッシュで逃げようとするので呼び止めると走る体勢のままピタリと止まる
「クソっ!? 禁書にまだ名前が登録されたままだったか!」
「アナタねぇ、一応ワタクシ皇女なのよ、皇女! 流石に化け物呼ばわりは無礼すぎないかしら? 私じゃなかったら殺されても仕方ないわよ?」
後ろを向いて走り出す体勢のままで止まっている少年。
んーー? 何かそんな設定があるのかしら?
「私は心が広いから一言謝罪をすれば、許してあげるわよ? それと、なんでそんな格好で止まっているのかしら?」
私は少年の前に回り込んで顔を覗くと、凄く悔しそうな顔をしてるわねっ? とってもいい演技力ね!
「ぐっ! ご、ごめんなさいっ。くっ! オマエが待てって言ったからだよ!」
「へぇ、律儀に待っている訳? なんでそのまんまの格好?」
「ぐうっ、禁書を持って命令されると逆らえないんだっ! くそっ!」
「なるほど、そーゆう……」
危ないっ! 設定って言いそうになっちゃった。 ここまで、あえて付き合ってあげてたのがバレたらこの少年は心に深い傷を負うかも知れない。危ない、危ない。
私は嗜虐的な笑みを浮かべる。なんとなく少年の設定的にこんな感じでしょう?
さっき、この少年は私に魔力がある的な事を口走っていた気がする。
魔法を使ってみたいと言うとウチの家族は皆、口を揃えて危ないから駄目と言う。
いい機会だから魔法についていろいろ教えてもらおうかしら
「フフン。それならばアナタ、魔法って得意かしら? 私、以前から一度、魔法を使ってみたいと思ってたのよ」
私はやはり、ドヤ顔で聞いてみた──
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