第2話 プリンが食べたいっ!
「うひひ……もう食べれないわぁ……」
「フリル! 気がついたのかい!?」
んにゃ? 私が目を覚ますと、知らない天井……じゃない、目の前に金髪碧眼の美男子がおり、心配そうに覗き込んでくる。
はうぁ!? 実の兄ながらこの破壊力は凄い。生前の記憶を思い出してからは無駄にドキドキしまくりである。
「アレックスお兄様……」
「良かった! 俺を庇って怪我を負うなんて、なんて馬鹿な事をっ!! でもフリル、ありがとう!」
そう言ってアレックスお兄様は私を抱きしめてくれる。
足がもつれて転がっていっただけなんて言えないわね……
「それとお腹の傷だが……」
アレックスお兄様が言いづらそうに目を伏せる……まさか! 大事な臓器に傷が付いて、余命が……
「その……
ですよねー! 中々の刃渡り無いと私の鎧は貫通出来ないですもんねー!
……なんだか悲しくなってきたわ
「だが、
別に脂肪が有るから大丈夫とか思っていないんだけど……
てかさっきから、目線的に脂肪と書いて"それ"って言ってますよね? 兄様?
「わかりましたわ。アレックスお兄様、そう言えば犯人は捕まりました?」
「あぁ、直ぐに捕縛したんだが、毒を飲んで自害してしまった。禁忌魔術の変化の呪法で俺の側近に化けていたようだ、死んだら姿が変わった……元に戻ったと言うべきか」
「そう……ですの。それじゃあ……」
「あぁ、まだ気を抜けない。どこの刺客かわからないからな。まぁ心当たりがありすぎてわからないだけだがな」
アレックスお兄様はハハハッと快活に笑っているけれど、やはり大陸一の国土を持つ皇国の皇太子は敵が多いらしい。
こんな美男子を失っては世界の損失!! 今こそ私のチートで守らねばっ! って何のスキル持ってるかもしらないんだけどね。てへっ。
「フリルッ!! 大丈夫かっ!!」
そんな益体も無い事を考えていると、部屋のドアが激しく開かれて大きな声を上げながら、褐色の美丈夫が駆け込んでくる。
第2皇子のレオンドール・ハインデル。私のお兄様だ。小麦色の肌が眩しく、筋骨隆々な武闘派の王子様。
「兄貴……アンタが狙われたのをフリルが庇ったらしいな? 何してんだっ! フリルに何かあったらどうする!!」
「……すまない」
レオンお兄様はアレックスお兄様を見るや冷たい視線を向け、怒鳴り声を上げる
ひぃ〜私の為に争わないでぇ〜? ちょっと違う? まぁ元々この2人は仲が良くないんだけれど。
理想の王子様然としたアレックスお兄様とワイルドな美丈夫のレオンお兄様。うふっ、どちらも選び難い……兄妹だからそういう対象じゃないんだけどね……
「ちっ、フリル! もう起きて大丈夫なのか? 何か食べたい物とかあるか?」
レオンお兄様はアレックスお兄様に舌打ちを一つすると、褐色の肌に白い歯を見せ私に笑いかける。
そして、何故かウチの親兄弟は私には毎回、何か食べたい物はあるか? と聞いてくる。欲しい物、じゃなく食べたい物。まぁ嬉しいけど。
「う〜ん、プリンかなぁ」
「よし、わかった。今から国で1番のマーロムのプリンを持ってきてやる。大人しく待ってろよ」
レオンお兄様がまた勢いよくドアを開けて出て行ってしまう。
相変わらず豪快だ……
「フリル、俺もそろそろ行くよ。一応、まだ安静にしておくんだよ。じゃあ」
「ありがとうございます、アレックスお兄様」
アレックスお兄様も出ていくと部屋には私1人になってしまう。いつもならお付きの侍女がいるけれどお兄様達が居たからか席を外しているみたい。
「お腹へったなぁ〜」
1人になると途端にお腹が空いてきた。いま何時か分からないけど侍女が来たら軽食でももらおう。
☆★☆★☆
軽食を食べたら睡魔が襲って来て、どうやら寝てしまっていたようだ。
本当に食っちゃ寝の生活!! いいねっ!
でもでも、このままじゃ本当に色々限界突破してしまいそうだから、少しは運動しないとかな……
中途半端に寝てしまったせいで窓の外は真っ暗。多分深夜なんだろう。この世界にも時計はあるので確認すると深夜2時……
というか、この世界には電力の代わりに魔鉱という鉱物から魔素というエネルギー資源が取れるらしく、前世でいう電化製品の類もほとんどあったりする。
「全然眠く無いし……散歩でもしようかな」
深夜に出歩くのは若干の怖さもあるけれど、冒険みたいで少しワクワクした。
「どうせなら行った事無い場所に行ってみようかな!」
思い立った私は上着を羽織り、スリッパでペタペタと深夜の王城を歩き始める
廊下の窓から外を覗くと深夜にも関わらず、見張りの兵士さん達が立っているのが見える。
このフロアは皇族の部屋があるフロアの為、部屋の前ではなく階段前など、フロアに侵入する経路に警備兵が複数人立っている
見つかったら怒られるかな?
だから私は、このフロアの中で行った事の無い場所を考え……皇帝の寝所。つまり私のお父様だけれど、その部屋の隣の通路を進んだ突き当たりに厳重に封鎖された部屋があったのを思い出した。
そう言えばあの部屋、宝物庫か何かかな? 自分の家の物だけど、金銀財宝とか一度は見てみたい!!
まぁ鍵が掛かってるんだろうけど……
ペタペタと音がするが、これでも出来るだけ静かに歩いているつもりだ。スリッパ苦手なんだ、スマン。
ゆっくりお父様の寝所を通り過ぎ、例の通路へと入っていく。
途中、何度かパチパチ静電気が走ったけど、そんなに乾燥してるんだろうか?
廊下の突き当たり──厳重に魔法の鍵が重ねがけされている扉があった……
「あれっ?」
扉の前には私と同じ歳ぐらいの黒い瞳に白灰色の髪の少年が扉に寄りかかるようにして座っていたのだ……
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