皇女フリルははばからない! 〜第3皇女に転生したので、ユルユル生活してたらいつの間にか女神にされてた!?〜
猫そぼろ
第1話 転生したからゴロゴロしたいっ!
「流石にございます!! やはりフリル姫様は天才でございますな!」
「フフンッ! でっしょ〜? こんなの簡単よ!」
私の目の前で胡散臭い髭を生やしたオジサンが私を褒め称える。
このオジサンは私が6才の頃から教育係をしているセドリックだ。
現在、私は13歳。名前はフリルディーネ・ハインデル。
豪奢な黄金の髪に、映える翡翠の瞳。まるで人形の様に整っている顔。そして、このハインデル神皇国の第3皇女。
本当に転生バンザイッ!!
私は10歳の誕生日に高熱が出て、10日間生死の境を彷徨っていたんだけど、目が覚めたら前世の記憶を思い出したのよね。
更に転生させてくれた女神様との会話も朧気ながら覚えているの。
真っ白な空間で、なんだか申し訳なさそうに話しかけてくる女性の声だけが聞こえてきて、生まれ変わらせてくれるって言うから、一生働かないでゴロゴロ出来る生活させてくれって言った気がするわ。
だから私は皇女の特権で毎日美味しいもの食べてゴロゴロしてるだけ。たまに勉強もしなくちゃだけど前世の記憶を思い出した私には楽勝な問題ばかり。
ちょっと難しい問題を解いたら今みたいに褒めちぎってくれるし、全く甘々の生活だわっ!
……ただ、私のボディも大分、甘々のワガママボディに育っちゃったけどね……
「本日のお勉強はこの辺でよろしいでしょう。フリル姫様、ティータイムにいたしますか?」
「もちっ!」
セドリックが教科書を片付けながら聞いてくるので、Vサインをしながら返事をする。
第3皇女であり、末っ子。そして10歳の時の高熱があったからか、周りは妙に甘々で厳しいお稽古事も強要されないし、本当にあの時の女神様、様々だわ。
なんだかこの世界は魔法とかもある世界みたいで、モンスターとかも居るみたいだからスキルがどうのこうの言ってたけど、よく分からないから、そこら辺は女神様にまかせといた。
今まで使う機会が無かったけどきっといい感じに気を利かせてくれてそうだわ。
セドリックがベルを鳴らすとメイド達がアフタヌーンティーの準備を始めてくれる。
「ほぉ〜、今日はモンブランなのねっ!」
スポンジの上にカスタードクリーム、その上にマロンの入った生クリーム、そしてマロンクリームが全体を包み込んでいる。頂点にはマロングラッセが乗っており、大変に私好みのモンブランだ。前世で食べたのよりも美味しいかも知れない。
「本日のお紅茶はランカ国産のルプナとキャンテッロをご用意致しました。どちらになさいますか?」
「んー、モンブランにはルプナのが合いそうね。ルプナを頂戴」
「かしこまりました」
メイドが丁寧に紅茶を淹れてくれる。
ルプナは濃い茶色の紅茶でスモーキーで甘い香りが特徴的な紅茶だ。
このお姫様生活でこの世界のスイーツや紅茶はやけに詳しくなってきた。
「うん、やっぱり合うねっ!」
私はモンブランと一緒に紅茶を頂き、優雅に寛いでいると窓の外から声が聞こえ始める。
「アレックスお兄様が帰って来たのかしら?」
「その様でございますね。ご挨拶に向かいますか?」
長男であり皇太子であるアレックスお兄様は26歳で大変な美男子だ。というか、私以外の兄弟姉妹はみんな細っそりとした美男美女だったりする。
私は、欲望に忠実に生きすぎたせいでワガママボディに育ったけれど……
アレックスお兄様はそんな私でも末の妹だからかとにかく甘やかしてくれる。だから別にいちいち挨拶に行かずとも咎められる事などないのだけど……
「アレックスお兄様にご挨拶に行きましょう」
まぁそこは一応、挨拶にいくのが筋かなと急いで一階まで降りていく。
アレックスお兄様は皇太子として国内の視察や友好国の祭事に参加をしている為あまり王宮には帰って来ない。
それでも帰って来た時には色々なお菓子を買ってきてくれるから大好きだ。
──フフフッ、しかもこんな美男子に堂々と抱き着ける妹特権ッ!!
「アレックスお兄様ーー!!」
「おおっ!! フリル! 只今!」
私が階段の踊り場から既にエントランスまで来ていたアレックスお兄様に声を掛けると、アレックスお兄様は満面の笑みで答えてくれる。
そして、その手には大きな紙袋。
──お菓子ゲェッーーーートッ!!
急いで階段の踊り場から降りてお菓子袋……いやいやアレックスお兄様に抱き着こうと走っていくとっとっとっとっと!?
「きゃっあっ!?」
「アレックス殿下! お覚悟ッ!!」
私が足をもつらせてアレックスお兄様に向かって転がっていくのと同時にナイフを持った刺客がアレックスお兄様に向け、そのナイフを突き刺そうとするのが見えた
「いったぁーいッ!!!!」
「フリルッ!? そいつを捕えろッ!! フリルッ!! しっかりするんだッ!」
転がりお兄様にぶつかった私はアレックスお兄様の代わりにナイフで刺されてしまった。
鈍く銀色に光る刃がお腹に刺さっている。焼ける様な激しい痛みが襲ってくる
痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い熱い熱い熱い熱い熱い熱い痛い痛い痛い熱い熱い熱い痛い痛い熱い熱い痛い熱い痛い熱い痛い──
意識が途切れる前、私が思ったのは──
こんなワガママボディでも痛いものは痛いみたい──
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