第21話 魔術師エレオノーラ・ド・シルヴァ②

この国は元は魔術を極めんとする言わばインテリサイキッカーの集まり、魔術と言う刃と叡智で自分たちを守ってきた。

先祖は自分たちの知識が必要以上に人や自然を破壊するのを恐れて自衛のために強い力を身に着けてきた。

魔術局はそんな魔術師達が研究に身を置く最前線。

わたくしはそれらを統括している。


わたくしがこの立場に立っている理由は至極簡単な理由からだった。


〝一番強いから〟


わたくしは幼い頃から他の貴族より魔力が多く、制御出来ずに屋敷を破壊していた。

そのような子供は自分の身体をも傷つけかねない為、魔術を使わない訓練を行うようになる。


両親がどうするか迷っている時、わたくしはみさとを頼った。

今思えば無茶ぶりだったのだろう。

狼狽えながら必死にわたくしの為に色々提案してくれるみさとに従ってわたくしは魔術の鍛錬を行った。


みさとのアドバイスは素晴らしい物ばかりだった。

みさとはどうやら”てれび”やあちらの世界にしかない魔導書を参考にしてくれたらしい。


わたくしの魔術師としての腕前は周りが畏怖を覚えるほど急速に成長していった。


もちろん横やり...まあ、自分の利権や立場を守りたい実力のない魔術師から命を狙われ始めてからは......


徹底的に反撃した。


当時十四歳で既に魔術局で、この国で頂点に立っていた。

そんな小娘を手に掛けようとする人間が他に罪を犯していないわけがない。

アルマとイルマとわたくしの魔術で叩いて叩いて叩きまくって埃を出した。

芋づる式で貴族を粛正していき、陛下から「摘発するのは良いんだけど、スピード感早すぎて色々追いつかない」と言葉を濁して言われても止まらなかった。


降りかかる火の粉を払いのけ、みさとから与えられる知識とアドバイスをまとめてわたくしは魔術局を一新、いままで燻っていた実力者を爵位に関係なく登用して一から組織を作り変えた。


みさとのおかげでわたくしは魔術を自分の手足のように理解して操れるようになった。

面倒事も抱える事も多いが明らかにメリットの方が多かったのだわ。


けれどここで問題が発生したのだわ...。

みさとに怖がられるのではないかと思ったの...。


ただでさえ周りからは畏怖の象徴、国民からは異次元の若さで魔術局の頂点に立つ次期王妃で、開発する魔術の幾つかは国民にも関係するため良くも悪くも関心を引いている。


だからみさとには少しぼかして自分の立場や仕事を伝えていたの。


それにみさとの知識、”いんたーねっと”なる物から教えてもらった知識を魔術の研究に当てた結果、発生した成果も多大なる物であったのだわ。

みさとの成果だと言っても誰にも聞く耳を持ってもらえなくて、悔しくて、それでも魔術局総括局長になるためにみさとに黙って知識を利用していた負い目もあったのだわ...。


魔術局総括局長になればわたくし個人の権力が手に入る。

その権力で召喚の儀を行い、みさとをこちらに呼ぶ。


わたくしの最終目的だった。

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