第22話 魔術師エレオノーラ・ド・シルヴァ③
魔術局総括局長になればわたくし個人の権力が手に入る。
その権力で召喚の儀を行い、みさとをこちらに呼ぶ。
わたくしの最終目的だった。
当初はもっとスマートにみさとを呼ぶつもりだったのよ...。
聖女としてでもなく、限られた人だけで召喚してわたくしの義姉妹として一緒に暮らすつもりだった。
あの日、頭の血管が煮えたぎってキレたような感覚がしてから割と無茶をしてみさとを呼んでしまったことをちょっと反省しているのだわ...。
都市機能に必要な魔力の一部を補充して、セファロから報告のあったチームに顔を出して意見を出していく。
全てわたくしが作っても良いのだけれど、そうなるとプライベートの時間が無くなってしまうので却下ですわ。
「あ、セファロ、明日からわたくし私用で忙しくなりますの。こちらに顔を出す頻度が下がりますわ。留意しておくように」
「はっ......。は!な、なんですと!?こ、困りますサヴァス様!この魔術局は言わばサヴァス様抜きでは...」
「情けない...。別に顔を全く出さないと言う訳ではないわ。それに王家が関わる事柄なのよ、最優先事項に変わりはないわ。
それに時間は掛かるでしょうけど進んでいるじゃない?
貴方の手腕の見せどころね、セファロ」
「ビ、ビニールハウスはよろしいので...?」
「よろしくないわ?倒れない程度に頑張って、自分を成長させつつ、成果を上げなさい。
あ~...あと、民の為を思って頑張りなさい」
「サヴァス様~...」
みさととゆっくり過ごす時間を確保する為に魔術局には犠牲になってもらうわ。
みさとに関する事だし、王家に関わる事でいいのよね?いいわね。
魔術局はいざとなればわたくしが本気を出せばいいし、カスパール殿下とみさと以上に優先する気は起きないわ。
帰りの身支度を終えて先ほどまで影を消していたイルマとセファロと共に魔術局の出口に向かう。
セファロはどうやらもっとわたくしに研究に入れ込んで欲しいようだけど、改革後の魔術局の質は格段に上がった。わたくしはそれほど自分抜きの魔法局を悲観していない。
「やあ、エレオノーラ。通りかかったんだ、一緒に王城までどうかな?」
「そんな訳ないでしょう、カスパール殿下。万が一の時の為にある程度王城と距離を離して魔術局が建てられているのをご存じでしょう。フィリップ様はご一緒ではないのですね」
「ああ、ちょっと仕事を頼んできたんだ」
「ここに来るために押しつけたのではなくて?」
「はは、今頃終わっているさ。さあ、お手をどうぞエレオノーラ」
セファロはもうそれはそれは気の毒に緊張した様子で頭を下げている。
カスパール殿下がこうやって迎えに来るのは珍しい事じゃないのだからそろそろ慣れてもいい頃よ。
わたくしを大事なものの様にエスコートするカスパール殿下を横目にわたくしはアルマとイルマにしか告げていないことを思い浮かべる。
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