第17話 聖女とローエンベルク王国③
「魔術は何かを破壊したり、創造したりするのは得意なのだけれどね。苦手なのよ、何かを癒したり元に治すと言うのは。
それも当たり前で、癒したり元に治すと言うのは時の逆行に相当するもので聞くだけで難しそうだわ。
しかし一度大国が侵攻してきたことがあって、流石にローエンベルク王国も無傷とは行かなかったわ。
破壊するだけでは戦えない民は守り切れない。
そこで当時の魔術師は考えたの。自分たちに成しえない理ならば、それを成すことのできる存在を他から招けばいいって」
エレオノーラはキラキラした目で私を見ながら魔術に関して、そして私の想像が正しければ私自身の事を教えてくれる。
「僕の祖先で三代目国王は国中の力を結集して条件に合う存在を探した。
意思の疎通が取れるか、もしくは洗脳して使役出来る存在で自分たちには扱えない理を扱える存在を。
そして当時大国相手に傷ついた民や兵士と魔術師を癒して回り、戦いに勝利した後も敵味方分け隔てなく癒して回った聖女が初代聖女だったと言う訳です」
「魔術師たちが最終的に目を付けたのは我々とは異なる理を扱う異世界の住人でした。聖女を召喚した例は実のところそこまで多いわけではなく、完全にメカニズムが解明されている訳ではないのです。
こちらに招くことのできる異世界の住人は限られており、”招くことが出来るから聖女なのか”、”招く過程で聖女の力が備わるのか”不明です。
いままで上手くいっていたからと言って、今回も聖女かどうかはわからなかったのです」
フィリップさんはカスパール殿下の説明を引き継ぎ、一気に説明した後エレオノーラを難しい顔で見る。
「結果的にはう、うまくいったわっ...!それに!聖女でなくても関係なくてよ!みさとをあのままあそこに置いておけなかったわ!」
エレオノーラはパッと私の隣を詰めて腕を取って抱き着いてくる。
フィリップさんを睨むのも忘れない。
「殿下も私も巻き込んで、陛下に事後承諾で聖女を召喚したのです。私は上手くいかなかった時のことを想像すると鳥肌が立ちます」
「フィリップ。まあまあ、あまりエレオノーラを虐めないでやってくれ。勝算の高い賭けで合ったのは確かだし、これで”もしも”があった場合僕たちは強力な味方を引き入れたことになる。
それに、召喚の儀に見とれて、召喚された聖女様に見とれ、先ほども見とれていたのだから十分に鳥肌の分は元を取っただろう」
ニコニコしながらカスパール殿下はわざわざフィリップの傍まで寄ると肩を叩きながら宥めるのだった。
確かにあの魔法...魔術は凄かった。鼓膜が破れるかと思ったし視界なんて真っ白になった。
召喚された足元にはブランコの下に現れた魔法陣の何倍もの大きさの魔法陣が描かれていたし、あれが白く光っていたなら相当神秘的な光景で綺麗だっただろう。
「という事で今までの聖女も一部の例外を除いて皆さんとても協力的に我々ローエンベルク王国に協力してくれました。
それもあり聖女様の地位はとても高く、国をもってこれからも保護させて頂きます。
戦争が起きていない現在では頻繁にお力を使っていただくことも無いでしょうから、どうぞ肩の力を抜いて過ごしていただければと思います」
カスパール殿下に半ニート許可証を貰って、朝の新聞配達の為に仮眠して午前二時に起きる生活ではなくなるのだろうと私は思った。
けれど一つ確認しなければならなかった。
とても重要な事。
カスパール殿下の口調からなんとなく推測はしていた。
エレオノーラが私に伝えたいであろう、一つの真実を。
「そっか...私はもう、元の世界には帰れないんだね。そうだよね?エレオノーラ」
-------------------------------------------あとがき-------------------------------------------
あ~~~やっとローエンベルク王国と聖女と魔術に関して説明できました~。
次回!さあ!白状せいぃ!エレオノーラ!打首獄門じゃ!覚悟ぉ!
でお送りします。お楽しみに!嘘です。
続き気になると思っていただけたらお気軽に、♡ボタン、☆ボタン、フォロー、コメントをポチっとよろしくお願いいたします。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます