第16話 聖女とローエンベルク王国②

「しぃーじー...?んんっ!普通はいきなり髪の色や瞳が変わるくらい魔力を出力できないし、魔術を行使できないわ。なのにみさとは何も言ってないのにわたくしを癒してしまうのだもの!びっくりしたわ!流石わたくしの師匠!」


ん?さっきも気になる単語を挟んでいた気がする...”師匠”ってなに?


「エレオノーラの言う師匠ってなに?」


「わたくしは魔術で都市機能を維持する手伝いや、国防のために魔術を開発したり行使する仕事をしているの」


「うん、魔法がうまく使えるように一緒に特訓して成果が出たって言ってたけど...。その後からよね?」


エレオノーラは幼い頃全く魔法が制御できず屋敷を破壊しまくっていた時期があった。

多すぎる魔力に制御が追いつかないのが原因だった。

その時私にアドバイスを求めて...ほぼ泣き落としのような感じだったが、あまりに畑違いな相談に私は申し訳ないが当時本や映画で言われているような知識をエレオノーラに伝えたのだった。


いや、十個試して一個くらいまぐれで当たればいいなって思っていた。


「ええ、わたくしが今魔術で気に入らない家柄だけの貴族にブイブイ言えるのもみさとのおかげですわ!」


言い方よ。言い方。もっと言い方あったでしょ...。

と言うか、とんでもない子にとんでもないアドバイスをしてしまったかもしれないと今更思った。


「我が国ローエンベルク王国は元は魔術を極めんとする魔術師達の集まる一都市でした。周りにある大国や小国から魔術師が集まり、あらゆる魔術を開発しこの大陸を豊かにしていきました。

しかしその知識や力を独占しようと侵攻してくる国も多く、時には力をもってして敵を文字通り滅ぼしました。

滅ぼした国々の領土を統合し防波堤として都市や街を築き、領土を広げ今のローエンベルク王国となりました。

因みに王家である僕の祖先は癖の強い魔術師達を力と知識でまとめ上げ、敵を打ち滅ぼしたリーダー集団であったみたいですね」


そう紅茶を飲みながらサラッと説明してくれたカスパール殿下の後にフィリップさんが補足を入れてくれる。


「領土を広げたと言っても小国の範囲は出ません。現在は魔術師を派遣したり、学院にて自国の学生や近隣の国から留学生を向かい入れて魔術を教えたりしています。

聖女様が”魔法”と仰っていたものも厳密には魔術に該当します。

周りの国々と同盟を結び、魔術に関する特異性を活かして小国ながら大国とも対等に渡り合っています」


「なるほど...。なんだか凄く便利そうと言うか、さっきもイルマさんが......い、イルマが魔術でローズティーを用意していて凄いなと」


イルマがニッコリしながら無言で首をフルフルと横に振るので何事かと思ったら、どうやら正解だったらしい。

姉妹揃って敬称にうるさいのは似ているらしい。

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