第3話 自己紹介と変人とゴリラ

体育館から教室に移動し全員が席に着くとすぐに、筋骨隆々の背の高いゴリラのような教師も教室に入ってきた。

「みんなおはよう。まずは、入学おめでとうだな!俺は今日からみんなの担任になる菊池嘉穂だ。あっそこ!名前と見た目が合ってないとか思っただろぉ!あっはっはっはっは」

一部の男子生徒を指さし快活に笑う先生はまさに機嫌の良いゴリラみたいだった。

 先生。「そこ」とか部分的じゃないです。多分全員が思ってます。

「まぁ、そんなことは置いといてだな。みんな初対面だろ!まずは自己紹介といこうじゃねぇか。」


 でたぁぁぁぁぁ、恐怖の自己紹介!8割が好きな食べ物とか話したりして、最終的 

 には「よろしくお願いします」という定型文で締めくくるあの恒例行事!

 

 一番最初の人かわいそうだなぁ・・・


ちらりと出席番号が一番の人を見やる。そこに座っていたのは髪を三つ編みにし、いかにもおとなしそうな雰囲気の少女だった。

しかし、いまやスマホのバイブレーションかというくらいに振動している。

 少女よ。これはもう恒例行事なんだ。頑張れ。

「じゃあまずは俺からな!」

 お前からかよ。

「さっきも言ったが俺は菊池嘉穂だ!好きな食べ物はタンパク質!嫌いな食べ物は特になぁぁぁぁしっ!がっはっはっっはっは。お前らも好き嫌いしないでなんでも食べろよー。」


『ふむ、ゴリラだったか?雑食だったんじゃな』

 じじい。違う。先生は人間だ。間違ってはないけど、人間ではあるんだ。

 横から感心したようなじじいの声を聞き、つい突っ込みたくなったのをなんとか押さえる。

「よぉし、次お前らの番なぁ。じゃあまずは、そこのメガネっ娘!」

メガネっ娘と言われたのは、先ほどまでバイブレーションしていた少女だった。

いまや、その顔は真っ青になっている。


「どうしたぁ、好きなことしゃべっていいんだぞ!」

そう言われて、少女はゆっくりと口を開く。


「私、私は赤里有紀です。すっ好きなこと、、は。。。。えと、実験と解剖です」

恥ずかしいといいながら顔を押さえる有紀を見て、クラスの大半が心の距離を取ることを決めたのは想像に難くない。


「うんうん俺も馬券好きだぞ!」


言ってねぇよ。けんの読みしか合ってねぇじゃねぇか。


「じゃあどんどん行くぞ!」

そこから案の定、出席番号順に自己紹介は進んでいった。最初の少女がインパクト強すぎたのか他に変な人はいなかった。


次が私の番か・・・・


「よし、次っ!」

「黒羽冬子です。好きなものは自由です。よろしくお願いします。」


私が自己紹介すると周りはガヤガヤしだした。


「あぁ、お前が生徒会長の妹だな!」

嘉穂先生の言葉にクラスはもっと騒がしくなる。

 またこれだ。


私という人間は姉の分身かなにかに見られているらしい。他の人は、姉が優秀だからきっと私も優秀だと思い込んでいる。

昔はよく、そんな考えを持った人が近づいてきたけど今は違う。


「ねぇ、会長の妹ってさ、力あんまりもってないんでしょ?」

「あれが会長の妹か?顔は可愛いよな。そこは姉妹って感じ。」


とこのように、今は力をあまり持たないものとして有名である。

これはこれで面倒くさいが、変な期待を持たれるよりはましである。

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