第18話 藤本の家庭事情
「…はぁ」
「どうした佐伯。元気ないじゃん」
「ん。いや、そうじゃないんだけどさ」
「まぁ、今日は山田にも帰ってもらったし…。何か話したい事があるんでしょ?」
「…うん。そうなの」
「何でも聞くし、話してみ」
「あっ、あのさぁ」
「うん?」
「せ、先週ね。藤本と山田が放課後話してる時…私カッキーと一緒にいたんだけど」
「…うん?」
「えっと、実は…」
「付き合ったとか?」
「えっ」
「あれ。違った?」
「いや、違わないけど、違う」
「何じゃそりゃ。どういう事?」
「えっと…カッキーとは付き合う事になって。確かに先週はそれを報告したかったんだけど」
「へぇ!良かったじゃん!ちょっと寂しい気もするけど…佐伯が幸せなら私も嬉しいし」
「えへへ。ありがと」
「じゃあ今度お祝いにケーキでも食べに行く?」
「それ藤本がケーキ食べたいだけでしょ」
「良いじゃん。食べたいのは事実だし」
「って言うか!それじゃなくて」
「ん?何が?」
「えっと、先週その報告をしようと思ってカッキーと教室に入ろうとしてたんだけど」
「うん?」
「その…」
「何。大丈夫だから言ってみ?」
「山田と藤本が話している内容が聞こえちゃったの!」
「あっ、そうなんだ?」
「そうなんだって…」
「まぁ聞かれて困るような話はしてなかったと思うし」
「で、でも私がまだ話して貰ってない事だったから…」
「…あぁ。そっか、だから気まずくて教室に入ってこれなかったんだ?」
「うん…って言うか、盗み聞きみたいになって、ごめんね?」
「いやいや、別に良いって」
「それで、その内容なんだけど…」
「もしかして私が言った『家庭事情』の事?」
「う、うん。そう」
「あはは!ごめんごめん!そこまで深刻な話じゃないんだよ」
「あっ、そうなの?」
「うん。えっとね。うちの父親が再婚したから私はこの町に戻ってきたんだけど」
「う、うん」
「それでその再婚相手の人…今の私のお母さんが妊娠中なんだよね」
「えっ!?」
「それで、今は帰る時間をちょっとだけ遅くしてて…」
「あ、うん…そっか。それで、山田と放課後話して時間潰してたんだ?」
「そういう事」
「…そっか」
「わざわざ話す事でも無いかなって思って言ってなかったよ。ごめんごめん」
「い、いやいや。大丈夫。そんな複雑な話、簡単に出来ないもんね」
「まぁ、話す分には問題ないんだけど。一応お母さんが安定期に入ってから言おうと思ってて、忘れてた」
「安定期にはもう入ったの?」
「うん。大丈夫みたい」
「そっか」
「うん」
「…藤本とは高校からの付き合いだし、山田よりは藤本の事知らないと思うけど」
「うん?」
「そんな大事な話、してくれてありがと。…聞いちゃって大丈夫だった?」
「えっ?あはは。何で?全然大丈夫だよ」
「それと、この話ってカッキーに話しても大丈夫?」
「あ、そっか。カッキーも聞いてたんだもんね?」
「うん。ごめんね」
「もう、何回謝る気だよ。大丈夫だって。むしろカッキーにも話してあげてよ」
「うん」
「大した話じゃないのに『家庭の事情』なんて、重々しく言っちゃったから多分心配してるよね」
「えぇっ。大した話なんじゃ…いや。何でもない」
「そう?まぁ、あまり普通の家庭では経験できない出来事だろうなってくらいだよ」
「んん~そっか。藤本がそう言うなら!でも、何かあったら話してね」
「勿論。ありがと」
「ううん。むしろ話してくれた事が嬉しいから」
「あはは。大袈裟だって!って言うかさっき流されたけど」
「何が?」
「カッキーと付き合った話だよ!超スピード交際なんだから、根掘り葉掘り教えろ!」
「あはは。そうね。今度山田と4人で集まった時にでも話そっか」
「じゃあ皆でケーキ食べに行こう」
「分かった分かった」
「やった!」
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