第17話 壁に耳あり

「今日は帰りにカフェ行かねぇ?」

「ほう。どうした急に」


「あ、いやほら。教室で話すだけじゃなくて、たまには気分転換もどうかなって」

「ふーん。…良いかもね」


「お!やったぜ!パフェ食いたいよな、パフェ」

「私はめちゃくちゃ甘い紅茶が飲みたい」


「相変わらずバリバリに砂糖入れるのな」

「そっちも相変わらず甘いものがお好きで」


「小学生の頃、よっちゃんの誕生会でめちゃくちゃ砂糖入れてドン引きされてたよな」

「それ言うなら山田だって皿についてた生クリーム舐めとってドン引きされてたじゃん」


「何かさぁ…俺らって中学は離れてた割に、仲良いよな」

「自分で言うんだ。まぁ確かに私もそうは思うけど」


「だ、だよな!?良かった。独りよがりかと思った」

「あはは。むしろ私は私の方が独りよがりなんじゃないか、って思う事あるよ」


「えっ!?なんで!?」

「なんでって…山田は誰にでも優しいし、誰とでも仲良くなれるじゃん?だけど私は違うから…友達だと思ってるけど、山田から思われてなかったらどうしようって」


「な、そんな!俺、友達だと思ってる…?」

「いや、何で疑問形なんだよ」


「そこは複雑な男心じゃぁん!」

「…?本当に意味が分からないんだけど」


「嘘嘘、冗談。ちゃんと友達だと思ってるよ、信じろ!」

「あはは。まぁ、友達じゃなければこうして毎日私の暇つぶしに付き合ってくれないもんね」


「まぁな」

「…山田。改めてありがとね」


「えっ!?何が!?」

「ほら。私の家庭事情とか知ってて、付き合ってくれてるじゃん?」


「…ん、まぁな」

「だから、ありがと」


「そんなん気にすんなって!そもそも俺も好きでお前と喋ってるんだし、お礼言われるような事じゃないだろ!」

「…ふふ。そうかな。でも、毎日楽しいから。ありがと」


「ほら、早くカフェ行こうぜ!混むぞ!」

「そうだね。早く行こ」


―――


「ね。カッキー…聞いた?今の」

「聞こえた。驚かそうと思ったのに、教室に入れなかったな」


「うん…私、藤本が家庭事情で悩んでるなんて知らなかった」

「俺も…って、俺は佐伯と違って最近話すようになったばっかだから当たり前なんだろうけど」


「…何で、私には話してくれないのかな」

「佐伯…」


「…」

「ほ、ほら!やっぱ仲良い人ほど話せない事ってあるさ?逆にそこまで知らない人だったら話せるみたいな…」


「山田は藤本にとって知らない人じゃないもん。仲良いもん」

「ぐぅ…確かにぃ…」


「ふふ。ごめんね、ただの自分自身への愚痴!」

「でも、本当に気持ちは分かるよ。…寂しいんだよな。秘密にされる事って」


「うん…そうだね」

「気になるなら、聞いても良いと思うよ。こんな事で藤本は怒らなそうだし」


「そうかな」

「俺より佐伯の方が藤本の事は分かるんじゃない?」


「もう!良い事言ってくれるじゃん!」

「はは。そう思ってくれたなら良かったよ」

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