第16話 イヤーワーム現象

「頭から離れなくなった歌って、どうしたら良いと思う?」

「…CMソングとか?」


「そう、まさに」

「私もそれ知りたい」


「何だよ、藤本も解決策知らんのか」

「いや、あるにはあるんだけどさ」


「お!あるんじゃん!教えてくれよ~!藤本ちゅわ~ん!」

「不二子ちゃんの言い方」


「ルパン三世って面白いよな」

「分かる。私たちの世代で見てる子あんまりいないけどね」


「あんまりって言うか、藤本としかルパン三世の話したことねぇよ俺」

「私も…勧めて見てくれたのって山田だけだわ」


「やっぱり?俺って偉い?すごい?」

「うんうん。偉いしすごいしいつもありがとうって感謝してるよ」


「おおう…藤本が素直にデレるとなんか…ムズムズするよな」

「そんなん前に佐伯にも言われたわ。いつの間に私はツンデレキャラになったんだ」


「いや、ツンデレではないんだけど…なんか褒められるのレアって気がして」

「ちゃんと思い出せ!私は結構人を褒めてるぞ!?」


「…えっ。確かにそうかも…」

「でしょ?なのに何で毎回『珍しく褒めた』みたいな反応されるんだろう」


「藤本の七不思議だな」

「あと六不思議が気になるぅ」


「で?」

「…ん?なにが?」


「だから、頭から離れない歌を消す方法。教えてくれよ」

「いや突然話題戻すなよ。分かるかボケ」


「めっちゃ暴言吐くじゃん。俺泣いちゃうぞ?」

「泣くな。男だろ」


「出たぁ~!男女差別ぅ~!もうこの男女平等の時代に男だから泣かないとか無いんですぅ~!」

「他の歌を歌えば良いと思う」


「…急に何の話?」

「だから、頭から離れない歌を消す方法。教えてくれって言ったじゃん」


「えぇ…急に話題戻すじゃん…俺もこんな事してたのか…気を付けよ」

「そうだろう困るだろう。気を付けたまえ」


「で、他の歌を歌う…とは?」

「そのままだけど…頭から離れない歌とは別の歌を、声に出して歌ってみて」


「何でも良いの?」

「うん。何でも」


「じゃあ…コホン。~~~~~♪♪」

「すると…あーら不思議!さっきまで頭で流れていた曲は、もう出てこない!」


「お!確かに!」

「でしょ?」


「でもこれ…」

「うん。気付いた?そうなんだよ。歌った歌が今度は脳内で流れまくるんだよ」


「意味ねぇ…騙された」

「それより山田って歌うまいね」


「えっ!?そーお!?」

「嬉しそうだな」


「あんまり言われないからね」

「ん~私は上手だと思うけど」


「…へへ」

「あ、上手いって言うより、山田の声が好きなのかも」


「へぁ!?」

「めっちゃ照れるじゃん。そんなに?」


「え、だって…でへ。まじ?俺の声、好き?」

「コイツ可愛いな」


「ま、まぁ初めて言われたし浮かれちゃうわ俺」

「あはは。浮かれろ浮かれろ」


「…あ」

「ん?どうした?」


「さっきの曲、もう脳内で流れなくなったかも」

「おいおい、意識したらまた流れちゃうぜぇ~?」


「やめろやめろ!」

「ところでさ…さっき脳内で流れてたCMソングって…~~♪これでしょ?」


「え!?怖!なんで分かった!?」

「いやコレ…今日の休み時間にカッキーがめちゃくちゃ大声で歌ってたから…」


「え…まさか…藤本も…?」

「うん。被害者」


「ひぇ」

「多分あの場にいたクラスの大半が被害者」


「ひぇ」

「ちなみにこの『脳内で同じ曲が流れ続ける状態』をイヤーワーム現象と言います」


「名前あんの!?」

「あんのよ、それが」


「今度カッキーにも教えてやろ」

「そうね。今後は脳内ジャックするなって言っておいて」

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