第9話 山田と新垣

「ぐっあ~!今日も疲れたなー!」

「山田」


「お、カッキーじゃん、どしたん?」

「いや…今日はすぐ帰るんか?」


「ん~どうだろ。なんで?」

「放課後いつも藤本さんと話してるから、今帰るなら一緒に帰れるかなって」


「え、何カッキー。俺と一緒に帰れなくて寂しかったの…?」

「うん」


「えっ、ちょ、やっだもう!照れるじゃないの!」

「何でオネエ口調だよ」


「ん~そうな。ちょっと待って。聞いてくる」

「いや、そこまでは…」


「まぁまぁ、待ってて」

「おう」


「…」

「…」


「おまたー」

「何話してたん?結構かかってたけど」


「悪い悪い。ちょっと世間話」

「そか。仲良いな」


「まぁな~」

「で、帰りはどうする?」


「あ、いや。もう帰るわ!」

「良いのか?」


「おう…藤本に言ったら呆れた顔で『別に約束してるわけじゃないんだから帰れ』って言われちったよ」

「ドライだな。つーか約束してるわけじゃないのかよ」


「まぁ…なんとなく放課後集まってダラダラ喋ってるって感じだからなぁ、俺ら」

「ふーん。何か良いね、そういうの」


「お?何が?」

「青春って感じじゃん?」


「あ~そうなのかも。俺って今、青春してるなぁって思う時あるし」

「自分で思うなら相当楽しいだろうな」


「まぁ、楽しいな」

「…山田のその素直な所は本当に尊敬するよ。鞄持ったか?」


「おう!」

「んじゃま、帰りますか」


「そだな」

「なぁ、山田」


「ん?どした?」

「いや…さ。その放課後の…お喋り会?今度俺も参加して良い?」


「えっ」

「?」


「…」

「あ、別にダメならいいからな?」


「いや、ダメじゃ…ないんだけど…」

「そんな悩むくらいなら良いって」


「いや…えっと…何で参加したいか聞いても良い?」

「藤本さんと仲良くなりたいから」


「はぁ!?」

「…ふっ…くくっ。その理由じゃダメなんか?」


「えっ…いや、その…ちょっとビックリしただけだし」

「じゃあ今度誘ってくれる?」


「…気が向いたらな」

「…ぐっ」


「なんだよ」

「…っはは!もうダメだわ!やー分かりやすすぎやっさ!」


「はぁ!?つか何、急に方言!わかんねぇし!」

「あーごめんごめん。ちょっと出ちゃった」


「…で、何なんだよ」

「お前はわかりやすすぎるよなぁって思ってさ」


「何が」

「分かってるくせに」


「…はぁ。お前ちょっと性格悪いぞ?」

「ごめんなさいしたろ~?いつものお前なら許してるはずだぞ~?」


「うるせぇ」

「いやマジで悪かったって。藤本さんと仲良くなりたいのは本当だけど」


「はぁ!?」

「いや、そういう意味じゃなくてな。友達が好意を寄せている子がどんな子か気になるじゃん?」


「別に気にすんなよ…」

「まぁそれもあるしさ」


「うん?」

「本当に、楽しそうで羨ましいってのもあるんだよ」


「…」

「あ、でもお前の邪魔する気は無いし!冗談だから別に…」


「いいよ」

「え?」


「今度、誘うよ。藤本に聞いてからだけど」

「え、マジ?」


「でもただ喋ってるだけだからな?楽しくなくても責任とらねぇから!」

「はは。ありがとう。絶対楽しいと思うから楽しみにしてるわ」


「なーんか変な汗かいたぜ…まったくよ~カッキーは~!」

「お詫びにアイス奢るよ」


「マジ!?やったぜ!コンビニ寄ろ!」

「行動力!…山田、ありがとな」


「え?アイス奢ってもらう俺がありがとうじゃね?」

「はは。確かにそうだな」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る