第8話 寝不足

「今日も1日疲れたなぁ〜」

「最近早起きでさ」


「なんだ急に」

「ここ1週間くらい5時に目が覚める」


「早すぎないか」

「そうなんだよ。寝不足」


「二度寝できねーの?」

「それがなぁ…できないんだよ」


「大丈夫なん?」

「何?心配してくれるの?」


「普通に心配するだろ」

「珍しいこともあるもんだ」


「俺ってそんなに冷たい人間に見えるの!?」

「そうは見えないけど」


「けど?」

「私の事を心配するのが意外って言うか…」


「……」

「あー…いや、ごめん。嘘だわ」


「嘘?」

「山田は私のこと結構心配してくれてるよな。ふざけても、その好意を否定するのは違うなって。ごめん」


「…ぐすん」

「ごめんて」


「なんつって!泣いてないんですけど」

「知ってた」


「あ、せっかくだしラジオ体操やれば?」

「急に話を戻すな。朝起きた時の話だよね?」


「そうそう!俺ってば頭良くない?」

「……」


「何だよその微妙な顔」

「山田と同じ発想かと少し複雑な気分になっただけ」


「あ、もうやったんだ?ラジオ体操」

「せっかく早起きだしね」


「ラジオ体操、だいいちーーーー!!」

「タンッタラタンタタッ タンッタラタンタタッ」


「俺ラジオ体操って覚えてねぇかも」

「普通そんなもんだと思うよ。私も久しぶりにやるまでは忘れてたし」


「ちょっとやってみようかな」

「今ここで?」


「おう、一緒にやろうぜ」

「やる」


「素直だな」

「藤本、ラジオ体操、スキ」


「なんでカタコトだ」

「動画流すわ」


「なるほど、動画見ながらやってんのか」

「じゃないと思い出せないからね」


「お、始まった!」

「……」


「……」

「……」


「…ふぅ」

「久々にやると結構疲れるっしょ?」


「な。帰宅部なってからは、なーんも体動かしてねぇからな」

「私も」


「藤本って中学なにか部活やってたの?」

「やってたよ。山田は?」


「俺サッカー」

「めっちゃ動くじゃん。なんで今はやらないの?」


「厳しい練習に飽き飽きしてさ…」

「お疲れ様です」


「最後の大会終わった時にさ、疲れたけど楽しかったって皆泣いてたんだよな」

「青春ってやつだね」


「でも俺はな…やっと終わったとしか思えなかった」

「そんな風にしか思えないのに3年間続けたの偉いと思うよ」


「藤本に褒められると嬉しい」

「てへへ」


「何でお前が照れるんだよ。…で、藤本は?」

「何が?」


「部活。何してたの?」

「文芸部だけど」


「いや運動部じゃないんかーい!」

「ふふ…いつから運動部だと錯覚していた?」


「有名なセリフやめろやい!てかさっき俺が帰宅部になってから体動かせてないって言ったら、私もって言ってただろ」

「私も体動かしてないって意味」


「えぇ…」

「お?なんだ?貴様もしや文化部差別か?」


「ちが…もういいやそれで」

「面倒臭がるなよ〜もっと構えよ〜」


「意外とかまってちゃんな所あるよな、可愛いやつめ」

「はぁ!?べべ別に、そんなことないし!」


「突然のツンデレ。…藤本って運動部じゃなかったんだな」

「改まってわざわざ言い直さなくても」


「いや、スタイル良いし何かやってたんだと思ったわ」

「急にセクハラかよ」


「同級生で学生なのにセクハラとか傷付くからやめて!?」

「ごめんごめん。社会に出たら嫌でもセクハラ扱いされるもんな」


「お前本当に高校生か?」

「山田はもう何も部活やらんの?」


「そうだな、やるつもりはねぇな」

「小学生の頃は結構体動かすの好きなように見えたけどね。休み時間のたびにドッジボールしてたし」


「確かに好きだったけど…でもあの頃は他に楽しいことがあるって知らなかったから、体動かすしかなかったんだよな」

「今は他に趣味があるの?」


「ゲームだな」

「ドッジボールからゲームって変わりすぎて凄いね」


「ここ最近ずっと夜更かししてゲームしてるわ」

「へぇ。私と逆だわ」


「逆?」

「最近やることも無くて早寝してるんだよ」


「いやお前が最近早く起きるの絶対そのせいだろ」

「20時には寝てる」


「早すぎるわ。しかも20時に寝て5時に起きるって9時間も寝てるじゃねぇか」

「そうだね」


「全然!寝不足じゃ!ねぇよ!!」

「あはは。ごめんて」

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