第41話

 けいは私に従って作業してくれるので助かる。

 これが夏樹だと、自己流のアレンジを加えて料理を台無しにすることが多いので困ったものだ。それがまた良かれと思ってやっているだけあって、叱るのも面倒になってくるが、食材を無駄にするのは頂けないので、キッチン出禁の処分をするしかなくなってくる。

 だが、最近はピクシーのおはるがいるので、あいつもそれなりに料理できるようになっている、らしい。ふとしたきっかけで爆発させるのは相変わらずのようだが。

 さて、考えている間に朝食が完成したのでテーブルに並べていく。

「神父様はどうしていつも朝食作るやの?」

「作らないでどうするんですか? サキュバスはどうだか知りませんが、私は朝昼晩と三食取らないと活動に支障が出ます」

「そうやなくて……、こう、レトルト食品とか使わへんの? 他の人はもっと楽してると思うの」

「ああ、そのことですか……」

 冷凍庫には調理済み食品も入っているし、けいの言うレトルト食品も戸棚に入っている。備蓄として置いているので、日常的に消費しようと考えていなかったな……。

「それに、神父様なら信徒が朝食を持ってきてくれそうやの」

「確かに持って来る人もいましたよ。ですが、私はよく知りもしない人の作った料理を食べることに抵抗があるので」

「そうやの? それなら、街のレストランも嫌やの?」

「飲食店なら良いのですが、どういう環境で作っているのかわからない素人の手作りが苦手なんですよ。よくバレンタインに手作りのクッキーやチョコレートやケーキを持って来る方がいらっしゃるのですが……、ああいうのは特に恐ろしい」

「うーん。なんとなくわかるやの。惚れ薬なんて仕込まれてたら大変やの」

「夏樹が作ったものぐらいしか私に効果無いと思いますけどね」

「……神父様って、毒耐性とかあるの?」

「無いですよ。私は人間ですので」

 毒にかかれば即座に回復しないと消耗してしまう。耐性など無い。麻痺も昏睡も状態異常に関する耐性など一つもない。

 ……いや、魅了チャームへの耐性はあるのか。彼女のスキルは……、私に効果無いようだしな。

「そんなことよりも、冷めるから食べましょう」

「お食事前のお祈りしてないやの」

「ああ、そうでしたね……」

「神父様がお祈り忘れるの珍しいやの。どしたん? 話聞く? おっぱい揉む?」

「揉みません。私も完璧ではないので、忘れることもあります」

「えー、ちょっとくらい揉んでも罰当たらへんと思うの。それに、触ってもらったほうが、ウチも元気になるやの!」

「痴女ですね」

「サキュバスはそういう性質やのー!」

 と、けいは何かプンスカという効果音が似合いそうな反応をしていたが、放置しておいて、食前の祈りを始める。

 私が祈っている間にも彼女は勝手に食べ始めていた。

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