第39話
さて、夕飯も終わり、風呂も済ませたので、自由時間だ。
けいは相変わらず私の近くにいる。湯上りなので服装は寝間着に変わっている。町民から貰った服だが、そこはかとなくダサいような気もしてくる。
「今日の服はやる気スイッチですね」
「ウチ、もっと可愛いパジャマを着たいやの」
「文句言わないでください。せっかく町民から貰ったんですから」
「あれだけ綺麗なドレスを作れる人がおるのに、どうして寝間着はこんなにダサいんやの」
「……不用品回収したからでしょうね」
「ぴえん」
ぴえんとはどういう意味かわからないが、けいはしょんぼりしている。だが、着ているのは偉いところだな。嫌がって脱がないのは良い娘だ。
「お前はサキュバスですし、全裸でも問題無いのでは?」
「それは風邪ひくからあかんの。神父様はウチに風邪ひいてほしいの? 世話してくれるやの?」
「風邪をひいてほしいわけではないです。この場合は、どちらかと言うと裸を見たいという発想になりませんか?」
「はっ! それもそうやの! ウチの裸を見たいやの? それならそうと言ってくれたら――」
「見ませんし、風邪をひかれると困るので脱がないでください。ほら、ホットミルクをやりますから」
けいの前にホットミルクを置く。
彼女はすぐに両手でコーヒーカップを持ち、こくこく飲み始めた。小動物のようで愛らしいな。
「美味しいやのー」
「それは良かったです」
「今日のはなんか甘いやの。蜂蜜でも入ってるの?」
「よくわかりましたね」
「ふふんっ。ウチは味にはうるさいやの!」
よくわからないが、けいは胸をはってドヤ顔をしている。
まあ、いつものことなので特に何とも思わないわけだが……。
ホットミルクを作るにしても毎回同じだとあきてしまうはずだ。私もあきる。
「おかわりちょーだいやの」
「あまり飲むと腹を壊しませんか?」
「大丈夫やの。ウチのお腹は強いやの」
「はぁ」
意味がよくわからないが、飲ませておこうか。牛乳を消費しておかないと、敬虔な信徒が再び持って来る日も近い。
けいは飲んだ牛乳の分だけ働くことになっているのだが、向こうから求めてくるということは、なにか企んでいる可能性もあるな……。
企んでいようが企んでいなかろうが、どちらでもいいか。牛乳を腐らせてしまうのを避けられれば、それで良い。けいに大量に飲ませてついでに労働契約を延長しよう。
「美味しいやのー」
「まだありますよ」
「やったやの」
喜んでいるが……、なにも考えていないのか。忘れているかもしれないな。確かめておいてやるか。
「お前は飲んだ牛乳の分だけ働かないといけないことを忘れてませんか?」
「あ……」
「忘れてましたか?」
「わ、忘れてないやの! 忘れてないやの! 神父様が寂しくないように、いっぱい飲んであげてるだけやの」
「そうですか。優しいですね」
頭を撫でてやれば、けいは顔をボンッと赤くした。茹でたタコのようだな。お好み焼きを食べたので、明日はたこ焼きでも作るか……。
「神父様ずるいやの」
「何がですか」
「ずるいものはずるいやのー!」
よくわからないが、ぽかぽか叩いてきたので、ぶん投げておいた。
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