第6話 Rain

☆安藤陽毬サイド☆


私は堪らず聞いてしまった。

何を聞いたかといえば、貴方は何かいけない事をしているのではないか、と。

窓から外を見る。


何というか雨がまた降っていた。

雨と同時に涙も降っている様だ。

流星ちゃんの、だ。

私は静かに流星ちゃんの答えを待つ。

雨の音がしてきた。


それを聞きながら流星ちゃんの答えを待っていると。

グスッと鼻を鳴らす音がした。

それから、御免なさい、と言いながら、今は言えないです、と電話は切られる。

私は、!?、と思いながら、流星ちゃん!、と声を発するが。

電話は通じなかった。


「.....流星ちゃん.....」


何を隠しているのだろうか。

思いながら私は胸に手を添える。

そこにはロケットペンダントが胸にある。


首から下げているのだが。

これは何かというと.....流星ちゃんと交換した絆だ。

ガチャガチャの景品である。


だけどこれは私の宝物だ。

私はロケットペンダント。

流星ちゃんは指輪だ。


「.....何で.....」


私は涙を浮かべながら流星ちゃんのスマホにコールする。

だが電話は繋がらなかった。

額に手を添える。

それから通話を止めてから眉を顰める。

そしてもう一度電話してみる。


だが電話には出なかった。

私はその事に複雑に思いながら次に瞬くんにコールする。

すると瞬くんが電話に出た。

本当ならメッセージアプリでも良いのだが。

だけど声が聞きたかった。


『陽毬?どうした?』

「.....もしもし。.....電話したんだ。流星ちゃんに」

『.....え.....』

「だけど切られちゃった。あはは」

『.....そうか』


瞬くんは複雑な感じで返事をする。

私は涙を浮かべながら、何でかなぁ、と声が霞む。

すると瞬くんは、そうだな.....、としっかり考えてくれる。


私は浮気じゃないって信じたいよ?、と言う。

瞬くんは、そうだな、と答える。

それから数秒間.....沈黙した。


「なんでだろうね」

『正直言って俺も訳が分からないって思っている。だけど考えても無駄だと思う。今の状態で話すとは限らないな。アイツも』

「そうだね.....」

『お前がそういう状態ってのは理解はしている。だからあまり深追いするなよ』

「私は真実が知りたいから」


ただそれだけなんだけど、と言いながら涙を浮かべる私。

それからポロポロと涙を流す。

信じては居る。

だけど流星ちゃんは話してくれない。

私はその事がショックだった。


『.....陽毬。.....俺も協力する』

「え.....?」

『一緒に何故なのか探究しよう』

「.....瞬くん.....」

『だけど全て明るみになるとは思えない。.....それだけは覚悟しないと』

「.....そうだね」


私は涙を拭きながら回答する。

何も分からない中で。

不安な中で。


瞬くんがそう言ってくれた。

私は心からほっとした気がする。

最初は私が切り出した癖に.....馬鹿だなぁ。

思いながら私はティッシュで涙を拭く。

いつの間にか立場が逆転した。


『.....大丈夫か?陽毬』

「大丈夫だよ。君の言葉を聞いて多少なりとも安心した」

『そうか』

「私が最初はリードしていた癖にね。.....君は本当に.....」

『.....?』


私はその言葉を紡ぐのを止めてから、私も気を付ける。この先、と決意を新たにした言葉を告げる。

すると瞬くんは、ああ、という感じで力強く返事をした。

唇を噛みながら私は世界を見渡す。

それから、ありがとう。じゃあ、と言ってから私は電話を切ろうとした。

そうすると、陽毬。何かあったら相談するんだぞ、と言われる。


「.....ありがとう。瞬くん」

『ああ。気にするな。.....俺は励ましただけだけどな。お前を』

「私はそれでも十分だよ。君の励ましは特別だから」

『そう思ってくれるだけ有難いな』

「それは本当の話だよ。君はなくてはならない存在だから」

『.....陽毬.....』

「うん。暫くは大丈夫そう。ありがとう」


私は言いながら瞬くんに笑顔で電話を切る。

本人に見られる訳でもないのに何故笑顔なのか。

よく分からないまま私は前を見据えた。

それから私は真剣な顔をしてから頬を叩く。

そうしてから私は勉強を始めた。


☆星空流星サイド☆


お姉ちゃんも裏切り。

そして瞬もその全てを裏切ったのだが。

私の胸はズキズキと痛む。

それから絶望に駆られていた。

だけど全ては自業自得だ。


「.....このまま死んでしまった方が楽だろうか。私みたいなのは」


そんな事を思いながら私は呆然と紐に手をかける。

とは言ってもタオルで作った紐だが。

まあどうでも良いか。


思いながら私は首にかけようとした、のだが。

根性がなくそれ以上進まない。

このまま死んで鞠が.....、と思うと。

死ねない。


「.....」


私は沈黙しながら盛大に溜息を吐く。

それから涙を浮かべて拭う。

これは参ったな。

死ぬ根性すらないとは。


「.....自分で導いたくせに」


だけどどっちにせよ。

陽毬さんに酷い事をされるとなると。

やはり死ねないか。

思いながら私はタオルを解いた。

それからボーッと天井を見上げる。

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