第2話 陽毬の縁側

陽毬の家は2階建ての一軒家をしている。

因みに親父さんは社会福祉士。

そして母親は.....看護師をしている。

そのような家庭で陽毬は育ってきた。


さっきも言ったが陽毬には兄が居る。

だけど家族への暴力、クレジットカードなどの金銭の過剰な使い込みなどが発覚し。

そのまま家から追い出されている状況である。

一体大きく何が起こっているかそこら辺は聞く勇気がない。


考えながら俺は目の前で拳に過剰に包帯を巻く陽毬を見る。

看護師さながらの手つきである。

俺はその事に、陽毬。あまり大きくしないでいいんだが、と言うが。

ダメ、と陽毬は言いながらほっぺを膨らませる。

それから、ウイルスに感染したら大変、と言いながら俺を見る。


「私は.....こういうの得意だから任せて」

「いやまあ.....確かに昔からそうだけどさ」

「.....私は心底心配なんだよ。君が」

「.....」


俺は痛みに耐えながら包帯を巻いてもらう。

情けない姿を見せてしまったな、と考えながら。

すると陽毬は救急箱を仕舞いながら俺を笑みを浮かべて見てくる。

俺はその顔に顔を背けた。

まるで子供が何かを隠す様にする様に。


「.....色々あるよ。人生は」

「そうだな」

「.....この前.....動物病院にチョコを連れて行った時もだけど。膵炎だったの」

「ああ。チョコ.....歳だしな」

「そう。だから色々あるの。人生はそれで終わりだったら何も言えないけどね」


チョコ。

齢17歳のミケ猫である。

今は動物用ベッドで寝ているが。

真っ白になってしまったな。

昔は茶色の毛並みだったのに.....歳をとったな、って思う。


「.....私達と一緒に歩んで17年だもんね」

「生まれた時から一緒だもんな。でも動物は.....」

「そうだね。×7ぐらいの倍率で年をとっていくから」

「.....だな。もうお爺ちゃんだな」

「そうだね」


俺は拳に巻かれた包帯を見ながら眉を顰める。

そして涙を浮かべてしまった。

何でこんな事になってしまったのだろうか。

そんな事を考えながら。

すると陽毬が優しく俺の頭を撫でる。


「大丈夫だよ。瞬くん。.....私は側に居るから」

「.....まあそうだな。有難い。そう言ってくれるだけ」

「今度一緒にお風呂入る?それか」

「お前はアホか。恥ずかしいわ。.....さっき風呂を貸してもらったのはありがたかったけど」

「ふふふ。でも瞬くんとだったら一緒に入っても良いよ?」

「勘弁ならん。.....俺とお前は17歳だぞ」


そうだね、と言いながら陽毬はニコッとする。

冗談で言っているのは分かっているが。

だけど本気で恥ずかしい部分もある。

思いながら俺は苦笑した。

仮にも陽毬は美少女だから、だ。


「ねえ。瞬くん」

「.....?.....どうした?」

「私ね。.....その.....」

「?」


俺はクエスチョンマークを浮かべながら陽毬を見る。

深刻そうな顔をしている。

俺は覚悟しながら聞こうとしたが。

陽毬は首を横に振った。

それから屈託ない感じの笑顔で俺を見てくる。


「何を言おうとしたか忘れちゃった。いいや」

「え?.....いや。それはないだろ流石に」

「.....良いの。本気で何を言おうとしたか忘れちゃった」

「.....陽毬?」


俺はその顔を見ながら、?、を浮かべる。

だが陽毬はそのまま口を噤んでしまい。

結局何も喋らず次に俺にこう話した。

紅茶飲む?、と言う感じで、だ。

俺は、あ、ああ、と返事をしながら陽毬の背中を見送る。


☆安藤陽毬サイド☆


私はというか。

私自身は知っている。

兄が最近の行動がおかしいという点が。

何というか動きがとにかくおかしい。


何をしているのか知らないが。

これ以上家族に迷惑をかけないでほしいって思う。

考えながら私は紅茶とお茶菓子を瞬くんに出す。


「瞬くん。紅茶と.....ゴメン。今日はお茶菓子は買ってきたもので.....」

「全然構わない。むしろ有難うな」

「.....うん」


私は目の前の幼馴染の瞬くんを見ながら複雑な顔を何とか抑えていた。

まさか彼女であり義妹である星空流星ちゃんがそんな事をするなんて、と思う。

思いながら私は瞬くんにゆっくり紅茶を差し出してお菓子を出した。


「.....情けない姿だったよな。本当に」

「人間誰しも狂うと思うよ。普通そんなの。裏切りにしてはデカすぎるから」

「そうかな。.....俺がおかしいだけかもしれないし」

「それはないよ。瞬くん。私が気に入っている人がそんな思いであるとは思わないから」

「相変わらず優しいな。お前は」

「仮にもこれが私ですから」


私は、えっへん、と無い胸を張りながら笑顔になる。

すると瞬くんは瞬きしてからクスッと笑った。

良かった瞬くんの笑顔が見れて。


私はそう思いながらチョコを撫でる。

チョコは、にゃー、と言いながら私を見ていた。

膵炎でなかなか便とかの調子が狂っていたけど.....完全に元気になった様だ。


「.....」


正直.....鞠。

兄からずっと暴言を吐かれて虐待されていたのはなかなかこたえた。

瞬くんはその全てを知らない。

親には全てを話したけど外部にあまり話してないから、だ。


「.....陽毬。お前も紅茶飲んだら?」

「そうだね。瞬くん」


とにかく今は流星ちゃんを問い詰めないと。

何故こんな事をしたのか、と。

思いながら私は目の前を静かに見据えた。

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