第7話 ストップ!バイタリティ

ここまでの話で、僕が自分の野望とその残骸に憎まれ口を叩きながらも、愛してしまっていることが伝わっただろうか。


簡単に言うと「自分に酔っている」それだけの話だ。アルコールと違ってすぐ覚めるものではないが、かと言って横暴になったり攻撃的になるほどのものでもない。「なんかきしょいな」とは思われるかもしれないが、「なんかきしょいな」と思った人は自然と離れていくので僕が孤独になるだけだ。ん?そういう意味では実害ありか?


いずれにしても、これらの野望は所詮残骸ばかりで、誰かが極端に傷つくほどには尖っていない。その辺の塵と一緒に紛れて、雑踏に揉まれて消えていく。




しかし、これが唯一牙を剥いてしまう瞬間がある。それが、「誰かと何かを作る時」だ。


僕の野望が「自分一人で何かを成し遂げたい」というものに一貫していれば良かったのだが、運悪く僕は「誰かと何かを創りたい」という思いの方が強い。誰かと物語を編みたいし、誰かと一緒に成功したい。その思いが、根幹として僕の生き様を支えている。


で、あるが故に。


僕は自分の思いまで、他人に押し付けてしまうところがある。


ここまでの人生、有難いことに僕と一緒に色んな活動をしてくれる人達がいた。誰かと一緒に活動に励んでいる時は、人生の頂点と言っていいほどに楽しくて仕方ない。僕の人生は他者との創作に依存していると言ってもいい。だから、楽しくて楽しくて、またやろうまたやろうと毎日のように誘ってしまう。


それが、相手を壊してしまうことがある。


当たり前の事だが、価値観は人それぞれ違う。限られた熱量のソースを何に注ぐのか、分量は十人十色だ。しかし、僕は自分が最も熱を上げている創作の欲を満たすために、自らの価値観までも押し付けようとしてしまう。自分がこれだけ熱中しているのだから、相手もきっとそうだろうと決めつけて。その膨らみ過ぎた妄想が、時には揃わない足並みに苛立ちすら覚えさせる。


「自分勝手」が牙を剥く。

僕はまだ、こんなものを書きながら自分の勝手を理解していない。普段かなり気を使って生きているという自認が、まさか自分はそんな人間では無いと思わせてしまう。でも、その実エゴの塊だ。何かを成し遂げるために人生すら壊しても構わないという人の方が、少ないのに。


そのエゴを自制して、他人に期待せず1人で全て行うことを“前提”にしようと思った時も何度もあった。事実、1人で何かを生み出すのもそれはそれで大変に楽しい。


しかし、結局誰かとの繋がりを求めて戻っきてしてしまう。これは大変にかっこ悪い。他人に期待しない方が人生が豊かになるというのは、とっくの昔に手に入れたライフハックだ。しかし、既にライフは別の心情に侵されている。


恋人と別れて嘆いてはすぐに誰かとくっつこうとする、恋愛体質の人達を、僕は可哀想な目で見ているところがあった。しかしこう振り返って見ると、形が違うだけである種同族嫌悪のようなものではないか。





どうすればいい。


他の章はある程度形に収めて話を収束させていたのに、この場所だけはどうにもとっ散らかった言葉のままで、折り合いを付けられない。きっと、僕の中でまだ答えが出ていないのだ。


どうすればいい。


悲劇のヒーローを気取ることでしか和らげられないこの気持ちを、僕はどうすればいい。

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