第5話 器用貧乏、世にはばかる

ここまで読んできてわかってもらえただろうか。


僕は非常に欲張りさんである。「さん」を付けて誤魔化したがそんなにポップなものではない。「強欲な壺」とかの方が禍々しく現実を表しているかもしれない。2枚ドローでもまだまだ足りないけれども。


とにかく僕は生まれてこの方様々なものに手を出してきた。


小説に楽曲制作にラップにゲーム制作にプログラミングに……細かなものを上げれば切りがないほど、創作っぽいものごとは大概手を出してきたように思う。


根本として、ものづくりや新たなスキルを獲得するのが好きなのだろう。新しいものを生み出せたときには、それこそ達成感に満ち溢れて脳内麻薬に溺れてしまう。これが自分の人生の目的だと言ってしまっていいほどに、創作は僕の人生の大部分を占めている。


そのくせ制作中にはうんうん唸りながら苦い顔をしていたりするのだが、多分そういうものなのだろう。世の中には、何かを生み出し続けないとくたばってしまう人間がいる。


「なんで作家たちは毎回締切に苦しんで喚いているのに、描き続けるんだろう……」と思ったことがある人もいるだろうか。確かに端から見れば自分で自分を苦しめているようにも見えるだろう。しかし不思議なことに創作者たちは得てしてこれを止めることができない。呼吸と同じなんだ。そして、僕もその一員だ。




だが問題は、僕があまりに他ジャンルに手を出し過ぎなところである。


自分でもわかっているが、本当に風呂敷を広げてしまう癖が止められない。結果として、どれも中途半端になってしまうのが物語のオチである。


器用貧乏という言葉は、きっと僕のために作られたのだ。それくらいに「何でもできるが、突き抜けたものはない」というのが僕のステータスである。


マルチプレイヤーといえば聞こえが良いのだが、これまた無いものねだりで何かに一筋に情熱を注ぎ込んでいる人への憧れがある。ある程度器用にこなせるこの体は好きだが、何かでてっぺんを取るという体験への憧れは焼き付いて離れない。


──いや、わかったぞ。


「器用貧乏」を突き詰めれば、逆に器用貧乏界でてっぺんをとれるんじゃないか?


器用貧乏-1グランプリ(K-1)を開けば、初代チャンピオンになれるんじゃないか?


器用貧乏、世にはばかる。

次の1面はこれでいこうぜ各媒体。

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