第4話 社会性さえ無ければ

時々思うことがある。自分に「社会性さえなければ」と。


社会に溶け込み迷惑もあまりかけず、協調できるという点は世の中を生きていく上では非常に重要だ。自分で言うのも何だが(自伝なので許して)、こういった社会性は僕自身ある程度身につけている気がする。


そもそも人間という動物の本能と言われればそれまでだが、この部分、具体的には空気を読むという行動に苦しんでいる方々も多くいる中で、僕は間違いなく恵まれている。


恵まれているのだけれど、


前述の『目立ちたがり屋』の人格が炎を燃やすとき、これについては自信を持って「そう」とも頷けなくなってしまう。


もしも自分に「家族を繋いで支えていかなければ」という意識がなければ。もしも自分が「やりたいことのために全てを捨てて上京する」ことができる人間だったら。


自分の中に眠っている蕾が、今頃は大輪を咲かせていたかもしれない、と。そう思ってしまって止まないのだ。


もちろん、無いものねだりであることを『引っ込み思案』な僕は知っている。支えていきたいと思える両親や兄弟、親族がいることは本当に幸せなことだし、彼らを安心させるために真面目に働けるという環境は、努力だけで手に入れられるものではない。


だけど──


故郷を捨て、酒と都会をさまようバンドマンのような生き様に どこか憧れてしまう。


割りと真面目に生きてきたツケだろうか。生真面目学級委員長が”ワル”の世界に憧れて染まっていってしまう物語の導入みたい。あーあーいっそこれが物語の世界だったらな。


そうしたらきっと──




いや、「きっと」を語っている時点で、何も変わりはしないだろう。


結局、僕は何も捨てられないでいる。ものも人も自分も、全部そのまま手にしておきたい。平穏なまま、成功を手にしたい。そうして2つの人格が戦っているうちに腐らせてしまった野望が、残骸となって降り積もる。




しかしまあやたらと「だけど」や「けれど」の多い文章だ。横道に逸れたがっているのに、右に左に交互に振れた結果最終的にまっすぐ進んでしまっているではないか。


僕の生き方そのものだ。

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