少女。邂逅。愛。
私は、真っ白な空間に立っていた。自分を見返すと、いつも家で着てるジャージを羽織っている。
デジャヴを感じた。あれはそう、私が初めて魔法少女になったとき__。
「大活躍でしたね、苺!」
気付けば、前から少女が満面の笑みで向かってくる。
赤みがかったピンクの髪に、黒いフリルがついたピンクのゴスロリ。黒いフレアスカートと、厚底のブーツ。
所謂、地雷系。
「ハーティ、だっけ」
「ふわぁー! 覚えてもらえて光栄です!」
頬に手を当て、わざとらしくその場でクルクル回るハーティ。
私もこんな風に、あざとく振る舞うべきだろうか。
そしたら、周りから好かれるだろうか。
それは別にいいかな、と思った。
「それでそれで? ハーティの力はどうでしたか?」
「使いにくい」
「ふえぇ……。まあ途中まで、苺は正しい使い方をしてなかったので」
「正しい、ねえ」
少なくとも、パンチや杖スイングのような格闘攻撃は正しくないのだろう。
実際、それらを試して痛い目を見たし。
杖が床に刺さったまま抜けなかった、あの時を思い出した。
私は杖を握ったまま、奏揮に手を伸ばした。私が止めなきゃ、二人ともやられると思って。
そしたら、床からトゲが出てきた。
初めて出会った化け物を殺した、あのトゲと同じようなヤツ。
キラリ、とハーティの手元で光が漏れた。
「そう。正しく使うには、まずこれを用意するんです」
先程の光の中で、いつの間にかハーティの手元に杖が握られていた。
「あっ、私の相棒!」
「あい……。ふふ、いい名前ですね」
優しい笑みを浮かべるハーティ。良く分からないが、肯定してもらえて何よりだ。
「次に、これをどこかに刺します」
「え? 相手にじゃないの?」
「どっちでもいいですけど、こっちのほうが楽です」
ハーティが杖を横に構え、水平に振る。
直後。そこに壁があるかのように、杖は空中で何かに刺さって静止した。
「最後に、呼び出します」
「呼び出すって? 何を」
「これです」
ハーティは片手で杖を握ったまま、もう片手を指揮者のように降った。
その瞬間。
ズバン! という破裂音と共に、虚空からそれは出てきた。
「あっ……!」
薄茶色の巨大なトゲ。
化け物を貫き、私の窮地を二度も助けたソレが、この空間に出現していた。
「これは、束縛の槍。最強の矛にして、苺の基本武器です」
ハーティは降った腕を、今度は上へ振り上げる。すると一斉にトゲ__"束縛の槍"は、上方向にグインと伸び曲がる。
「えっ、それ曲げれるの?」
「束縛の槍は、根っこが本質なんです。簡単に伸ばせるんですよ」
「へぇ……。しかも固いままだ」
グネグネと動く根っこは、しかし鋼鉄の強度を維持していた。触れてみると、相変わらずヒンヤリしている。
「苺が強くなれば、もっと器用に動きますよ。固さも自由自在、スピードだって早くなります」
「固さの要素いる? それに今でも充分に見えるんだけど」
「まだまだ、もっと強くなれるってことですよ! そしたら、沢山の人が苺に期待します!」
「……そっか」
人から期待される。
それは、ちょっと良いかもしれない。魔法少女としての活躍は、奏揮にしか見てもらえないけど。
「ま、意識してみるわ」
「はい! 次に会うときは、レベルアップの方法を教えてあげます!」
お互いに微笑みを浮かべ、私とハーティは視線を合わせる。
それと同時に、世界が収束した。
私を中心に、周りの空間が縮んでいく__。
「……ん、うぅん」
いつものベッドで、私は目を覚ました。
現在時刻は午前六時。今日は月曜日。学校へ行く日だ。
「あのハーティってやつ、本当に見てるのかしら」
自室を見回す。部屋の対角側にあるベッドで寝息をたてる咲榴以外、生物の気配はない。
あんまり気にしても仕方ないか。
私はベッドから終わると、ジャージを脱いで制服に着替えた。
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