第31話 15層

 俺は現在家族を待っていた。父さん、母さん、美琴はそれぞれ準備をしている。

 やがて準備を終えた家族達が姿を現した。父さんと母さんは変わらない。美琴が変わっていた。灰色のコートに白色の上着。灰色のスカートみたいなズボンを穿いていた。足は黒タイツで覆っている。……とても可愛い。


「どう? 似合っているかな」


「似合ってるぞ、美琴」


「ありがとう」


 美琴を褒めると、微笑んできた。嗚呼、可愛い。

 そんな可愛いを得られたところで、俺達は集合する。指にはテレポートリングがあった。


「それじゃあ、行くぞ」


 家族は頷く。俺達はテレポートリングを使って、5層へ移動するのだった。




 父さんと母さんがレベル10に到達したのがきっかけだった。そろそろ次に進むべきだと考えた。メインストーリーの進み具合から見ても、レベルを上げた方が良い。

 それに夜桜競技会が近いこともある。正直レベル10もあれば、Dクラスと対等に挑むことが出来る。ただ、奏汰達は4層で魔石を集めるだろう。そんなことではDクラスには勝てない。クラスメイトに合わせてはいけないのだ。

 だから、俺達は独自にレベルを上げる。今日はその為の場所に行くつもりだ。


 5層に来たのは俺達家族が最初だった。次に来たのは竜之介と比奈。最後に明莉がやってきた。


「ごめん、待たせちゃった?」


「そんなに待ってないので大丈夫ですよ」


「美琴ちゃん、服装変わったね。とても可愛いよ!」


「私もそう思う!」


 明莉と比奈が美琴の服装を褒める。本当に、いつ用意したんだ。


「ありがとう! お母さんが作ってくれたんですよ」


「ここまで褒められると、私も嬉しいわ」


 笑顔になる美琴と母さん。可愛いとは思うけど、反面目立ち易いとも思ってしまった。

 俺はわざとらしく咳払いをする。話が進まなくなりそうだったから。集まってくれたみんな、俺に集中する。


「今回ここに集まってもらったのは、15層まで行くからだ」


「15層にですか」


「……なるほどね」


 竜之介は分かったようだ。


「15層まで目指して、レベル上げをしようと考えている」


 もうトレインレベリングを実行しても、レベルは上がらないだろう。次のステップに行っても良い頃合いだ。

 15層にはレベルを上げる為に作られたとっておきの場所がある。それを知っているから15層までは行きたい。


「15層かぁ。どんなところなのか楽しみだね」


「私は少し興奮してきました」


「多分、クラスメイトの中では初めて行くんじゃないかな」


「俺達も頑張らないとな」


「ええ、そうね」


「私も楽しみ! シルバーランスと何処までやれるかな」


 みんな楽しそうだな。俺も声を掛けるとするか。


「それじゃあ、15層に向けて行くぞ」


「「「「「「おおうっ!」」」」」」


 まるで遠足みたいだった。


 俺達は15層に向けて進んだ。

 10層に入るとボスモンスターのワイバーンが登場した。だけど苦戦する訳でもなく、最後は美琴のシルバーランスによって胸を貫かれて倒された。10層は誰もが通る道だから仕方ない。

 その後、10層にある転移部屋まで父さんと母さんを案内して、テレポートリングを入手させた。少し休憩をしたら、再び15層に向けて進み出した。




 15層に到着した。ここは洞窟のようになっており暗い岩肌である。

 転移部屋に向かい、全員がテレポートリングを入手した。これで15層まで転移出来るようになる。


 それからも俺の誘導によってとあるエリアに到着する。みんな驚愕の表情をしていた。その空間は地面が草になっており、そこにはブラックスライムの群れがいた。


「ここは……」


「ブラックスライムがいっぱいいます!」


 父さんが驚いた表情をした。比奈はブラックスライムがいることに驚いている。


「和真はこれを知っていたの?」


 明莉の質問は答え方によっては矛盾が生じる。俺達がプレイヤーだと言うことはまだ話せない。よって、誤魔化す。


「いや、ここまでブラックスライムがいるなんて思ってもいなかった。幸先が良いな」


「……そうなんだ。それで幸先が良いってどういうこと?」


「ブラックスライムは得られる経験値が普通のモンスターより多いんだ。ここでレベル上げしよう」


 それぞれが返事をした。

 人数は7人。俺以外の6人を半分に分けてブラックスライムによるレベリングを始めた。


 そして俺と竜之介はこの場所を知っている。この場所はDLCで追加されたエリア。目的は初心者救済。だからレベリングしやすいように出来ている。

 ……俺は初めてこの場所を使うことになった。




 疲れた! 俺は思わず地べたに座り込んだ。

 今はレベリングを終わりにして、各自レベルを報告しあった所である。みんなのレベルはこうなっていた。


 遠野美琴  レベル18

 結城明莉  レベル17

 遠野和真  レベル15

 五十嵐比奈 レベル15

 両親    レベル14

 望月竜之介 レベル14


 頑張れば夜桜競技会までに全員レベル20になれるだろう。レベル20になったらこことは別の場所にすることになる。……何処でやるか決めておかないとな。


「ここ座るね」


 明莉が正座で横に座る。


「お疲れ様」


「嗚呼、流石の俺も疲れた」


「スキルも沢山使っていたからね」


 そうだ。俺はブラックスライムと戦う時、いつもよりスキルを使っていた。ポーションを使い果たす勢いだったかもしれない。これもジョブを手に入れる為である。

 俺の手にそっと明莉は自身の手を重ねた。


「こうしていると、落ち着く」


 明莉の頬は何処か赤い。手の温もりを感じる。俺としては、ちょっと恥ずかしかったりする。


「もう少しだけ、このままで良いかな?」


「……良いよ」


 少しだけ、このままでいた。明莉は、なんだか満足している風に見えた。


 あの後、周りを見回っていた竜之介と比奈が近くで転移部屋を見つけた。俺達はテレポートリングを入手する。感覚的に分かることで、DLCエリアに転移する物だと分かった。

 そして俺達はダンジョン外へと転移した。何処に到着したかといえば、俺の家。しかも店で使用している場所だった。

 俺は一応玄関と店の場所を明莉、竜之介、比奈に教えた。


 こうして俺達は解散したのだった。





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