第30話 新たな武器
夜桜高校の授業が終わり、放課後。俺は明莉、竜之介、比奈と一緒に探索者協会へ到着した。俺は周りを見渡した。
「まだ来てないか」
「誰を待っているの?」
「美琴」
「美琴ちゃんも来るんだ」
俺と明莉の会話に竜之介と比奈も混ざる。
「美琴って誰だい?」
「俺の妹だよ」
「そうなんですね」
「お兄さぁん! 明莉さぁん!」
噂をすればやってきた。青色の髪を揺らしながら美琴はやってくる。制服姿であることから学校から直接探索者協会に来たのだ。
「待ったかな?」
「ううん、今来たところだよ」
「良かったぁ。初めまして遠野美琴です。いつもお兄さんがお世話になっております」
美琴は竜之介と比奈を見て自己紹介を始めた。それと一言多いわ。
「望月竜之介だよ。竜って呼んでも構わない。よろしくね」
「五十嵐比奈です。五十嵐でも比奈でも良いよ」
「よろしくね、竜さん、比奈さん」
美琴がここにいるので、父さんと母さんのトレインレベリングは休みである。父さんと母さんもレベル10になったから次のステップに行っても良いかもしれないと考えている。
「行こうお兄さん。待ちきれないよ」
「そうだな。それじゃあ行くぞ」
俺達は探索者協会の中へと入る。いつもとは違い右へ進んで行く。探索者協会には店があり、目に入るのは数多の武器である。主に武器屋だったり、ギルドだったりする。
「凄い」
「いつもは学校が用意した武器を使っているから来る必要が無かった。だけどそろそろ限界だ」
「だからここに来たんだ」
俺達は進んで行く。正直何処でも良いんだけど、今回は序盤に使っていた武器屋に行く。
「……ここにするか」
「うん、ここならゆっくり選べそう」
俺達は武器屋に入る。扉の上から鈴の音が鳴り響いた。中には俺達以外誰もいなかった。
「いらっしゃいませ! ゆっくり選んで下さいね!」
バンダナを巻いている店員が俺達に武器をゆっくり選んで良いと言ってくれた。お言葉に甘えさせてもらおう。
「それじゃあ、武器を選ぼうか」
俺達は店内に散らばる。俺は剣が飾ってある所に来ていた。竜之介と一緒である。
「レジダンでもこんな風に武器を選んだっけ」
周りに聞こえないくらいの小声で話し掛けてくる竜之介。
「そうだな。ただ、ここまで多くは無かったし、手に取ってみても武器の詳細は出て来ないな」
レジダンでは武器を購入する時、手に取るか、視覚に入れば自動的に詳細を教えてくれるシステムがあった。だが、手に取っても、目に入っても詳細は出て来なかった。商品名は分かるようにタグがある。
「ここが現実だって改めて思うよ」
「同感だ」
そう言いながら俺達は剣を取り、鞘を少し抜きながら観察する。どれにしようか。ゲームの時に使っていたのが好ましい。
「……これにするか。一応使ってみよう。【鑑定】」
俺が選んだのは〈ダークソード〉。黒の剣で紫色の剣身をしている。武器にはランクがあり、ダークソードはB。STRを1.3倍にした攻撃力。この剣は闇属性が付与されている。
【鑑定】した結果、レジダンの時と何も変わっていなかった。ダークソードは何度も使ったことがある。これにするか。
「【鑑定】。うん、これが良いね」
竜之介が選んだのは〈ライトソード〉。白の剣で銀色の剣身。ランクはBで、STRを1.3倍。光属性が付与されている剣であった。俺が選んだダークソードとは反対の印象を持つ。
「竜はライトソードを選んだんだな」
「和真は、ダークソードを使うんだ。もしかして、レジダンの時に使っていたのかい」
「その口振りだと、竜もライトソードを使っていたか」
「そうだね。僕はこれにしようと思ってる」
「俺も、これにしようと考えていたところだ」
俺と竜之介は買うべき剣を決めたので店の中央に行った。どうやら一番最初に選び終えたらしい。
「竜、俺は〈マジックバック〉を選びに行くから、ポーションの方を頼んだ」
「分かった」
俺と竜之介は別れる。俺はマジックバックが売られている所に来た。
マジックバックとはアイテムを収納出来る特別な鞄。持ち運べる【アイテムボックス】である。収納出来る上限はサイズごとに違うが、小さいSサイズでも、【アイテムボックス】並みである。
マジックバックを買う理由としては、主に魔石やドロップするアイテムを収納する為である。【アイテムボックス】にも上限があるから、マジックバックを使う必要があるのだ。
それと今回の夜桜競技会で使う為でもある。こちらは【アイテムボックス】を周りに気付かされないようにしたい。誰もが使える訳ではないからな。
ここではSサイズとMサイズが売られているが値段が高い。全員分買える予算は無さそうだ。
「取り合えず2つ、いや3つ買おう」
俺はSサイズのマジックバックを手に取り、中央に集まった。そこには全員が俺を待っていた状態になる。
「和真、これって」
「マジックバックだ。明莉達には必要だろ。数はこれが限界だ」
「ううん、ありがとう」
「良いよ。明莉達は何を選んだ?」
俺は明莉達が持つ武器について聞いてみた。
「私達が選んだのは〈ウィッチの杖〉。木のデザインに惹かれたんだよね」
「はい。同じ杖でも形状が違うんですよ」
確かに。明莉が持っている杖は先が釣り針のように丸く曲がっており、円の中心に赤い宝石がある。比奈の杖は真っ直ぐであり、先端に青い宝石があった。
「最初は色が無かったんだけど、手に取ったら宝石に色が染まった、って感じかな」
「私も同じような感じです」
「触れた時に明莉と比奈の魔力が杖に流れたんだ。それで色が変わった、と俺は考える。
それと【鑑定】。ランクはBで、INTを1.5倍か。良いんじゃないか」
「えっ? ランクとか分かるの!?」
「【鑑定】を使えば分かる」
「そうなんですね」
明莉と比奈、そして美琴は知らなかったらしい。まぁ手に取っただけで情報が分かるレジダンより現実的になっているな。【鑑定】、結構汎用性が高いかもしれない。
次は美琴の番である。
「私が選んだのは〈シルバーランス〉」
「見ての通り、銀色の槍だね」
「……ランクはBでSTRが1.8倍か。似合ってるぞ、美琴」
うん、とても似合っている。ちなみに今、念じて【鑑定】を使った。使えたことを考えるに他のスキルでも出来る可能性がある。レジダンとは違っていた。
「お兄さん、今黙って【鑑定】使った!?」
「……そうだよ」
美琴は勘が鋭いな。
「俺はダークソードにした。ランクはB」
「僕はライトソード。ランクはBだよ」
俺と竜之介は持っていた武器を紹介した。
「それじゃあ、レジに行くぞ」
こうして俺達は武器、マジックバック、ポーションを購入した。値段は結構高く予算もギリギリだった。
「ありがとうございました!」
俺達は武器屋から出ていくのだった。
その後は明莉と比奈を女子寮に送り届けて、竜之介と別れて、美琴と一緒に家に帰るのだった。
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