第27話 魔剣と聖剣

 俺と竜之介は10層に残る。


「それで、何をするつもりだい?」


 竜之介が質問をしてくる。今なら邪魔は入らない。


「俺達がやってきたこと、PKをやる」


 無論PKと言っても目の前の竜之介を殺す訳じゃない。違うけど、殺す気で挑むつもりだ。

 竜之介が睨んでくる。


「どうして?」


「本来のお前、聖騎士団団長に戻ってもらう」


「残念だけど、今の僕にはあの時の力は無いよ」


 確かにその通りだ。だが力なんてレベルを上げれば自然と上がっていく。今回の目的、それは聖騎士団団長が使っていたを呼び覚ますことにある。


「力ではなく、切り札を取り戻して欲しい」


「……『聖剣エクスセイバー』を? どうやって」


「俺と本気で戦えば出てくるだろ。俺は殺す気でお前と戦う」


 アロンブレイカーを出した。それを見た竜之介が驚いて目を見開く。


「絶剣アロンブレイカー。君の切り札だね」


「俺が死にかけた時に現れた。だから、竜が死にかけた時に現れる筈だ」


「随分と強引だね!」


「これは竜の為にもなるし、後々俺の為にもなる筈だ。竜、聖剣に選ばれたければ覚悟を決めろ」


 俺はアロンブレイカーを両手で持って構える。竜之介も剣を構えた。


「行くぞ、竜!」


 魔力を消費してステータスを増加。アロンブレイカーは黒く輝く。俺は地面を蹴って接近する。竜之介は……剣を投げてきた。その剣を正面から粉砕する。竜之介にアロンブレイカーを振り下ろした。

 竜之介は


「っ!?」


 瞬間、俺と竜之介の間で光り輝いた。その光が収まると、竜之介の両手には聖剣が握られていた。白の剣身、金色の鍔、紺色の柄のした聖剣。

 魔剣と聖剣が刃を合わせている。聖剣の剣身が光り輝くと、俺は竜之介に押し返された。魔力を消費してステータスを上げたか。


「覚悟は決めたか」


「嗚呼、決めたよ。『エクスセイバー』は僕自身の為に力を振ることを承認してくれた」


「そうか。ならなんの為に、その力を使う」


 俺は聞いてみたい。竜之介の覚悟を。


「僕は守りたい人達の為にこの力を使うよ。仲間とか友達とか、守りたい人多いんだ。和真はどんな覚悟なのかな」


 俺の覚悟か。大したものじゃない。


「俺は運命を変える。良い未来とか運命なら変えないけど、悪い未来とか運命とかなら全力で変えるつもりだ。そして、最強になる」


「最強になるんだね」


 竜之介がより強く見つめてくる。


「僕も最強になりたい。守りたい人を守る為に、強くなりたいんだ!」


「そうか。なら目指してみろ、最強を」


 やっぱ竜之介も最強になりたいのか。良いライバルが出来たものだ。さて、俺としてはこれ以上戦う理由は無い。


「どうする? 俺の目的は果たしたけど」


「なら、僕と戦わないか? 負けっぱなしは嫌なんだよね」


「良いぞ、俺も腕を取り戻さないといけないからな」


 俺と竜之介は微笑みながら構えた。


「行くよ!」


「来い!」


 戦いが始まり、『絶剣アロンブレイカー』と『聖剣エクスセイバー』が刃を交える。

 聖剣エクスセイバーはアロンブレイカーと似ている。アロンブレイカーは魔力を消費するとSTRとINTを上げるけど、エクスセイバーは全ステータスを上昇させる。だから今の竜之介は強かった。プレイヤー時代ほどじゃないけど。

 やはり竜之介との戦いは楽しい。それだけはプレイヤー時代と同じだった。純粋に楽しみたい、この戦いを!


「1つ言えなかったことがあるんだよね!」


「なんだ!」


「君と戦う日々が、とても楽しかった! 聖騎士団団長だった身としてはどうかと思ったけど、それでも楽しかったんだ」


「俺も、竜と戦うのが楽しいぞ」


 俺と竜之介の動きに磨きが掛かっていく。剣を合わせる度に心が躍っていく。縦横無尽に剣を振るい続けて、竜之介が一歩下がった。

 竜之介が構え……って、その構えは!? 竜之介は両腕を上げて、エクスセイバーを構える。


「竜之介! 本気か!?」


「嗚呼、本気だよ!」


 竜之介がアレを使うなら俺も奥の手を出すしかない。俺は魔力を半分消費する。アロンブレイカーが黒く光り輝いた。竜之介のエクスセイバーは強く光り輝いている。足元にも光が広がっていく。

 竜之介が奥義を放つ。


「【ストリームカリバー】!!」


 地面は裂けて、光の奔流が俺に向かってくる。俺は光に立ち向かう。黒い魔剣は準備が完了していた。


「【ブラックエンド】!!」


 アロンブレイカーを【ストリームカリバー】に向けて振り下ろした。【ブラックエンド】のアロンブレイカーと、エクスセイバーから放たれた【ストリームカリバー】が衝突した。


 10層のボス部屋はボロボロになっていた。地面は裂けて、壁は戦いによる衝撃波で傷がある。しかしこれら全ては数時間と経てば元に戻るだろう。

 さて、勝負の結果は、


「引き分けだな」


「引き分けか」


 引き分けに終わった。





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