第24話 家族と5層

 クラス会議が終わって、俺と明莉は一緒に探索者協会に向かって歩いていた。


「ごめんね。あの時、私は秘密を言いそうになっちゃった」


「気にすることでもないさ」


「でも、良いの? あのまま話されて困るのは和真だよ」


 確かに前までの俺だったら許しはするけど悩んでいただろうな。でも、俺は決めたんだ。運命に立ち向かうって。最強の自分になると決めた。


「俺達のレベリングについて話されたら冷汗かいてたけど、強さのことなら別に言っても大丈夫だ」


「本当に?」


「本当だ。最弱が最強なのは別に可笑しな、話だな」


「ふふっ。でも和真なら、違和感無いかも?」


 疑問形で返すんだ。全く俺も明莉も可笑しいな。気付けば笑っているのだから。


 明るくなった俺達は探索者協会に到着する。中に入ると俺の家族が視界に入った。


「待たせたな」


「いいや、そんなに待ってないぞ。俺と母さんの探索者の更新も今済んだ所だからな」


 父さんは鎧と盾、槍を装備していた。鎧は傷付いている。母さんは動きそうな服装にローブ。木材で出来た杖を持っていた。美琴はいつも通り槍を持っている。


「それじゃあパーティー登録したら、潜ろうか」


「「「おおおぉ!」」」


「いやその、恥ずかしい……」


 家族は声を上げて腕を上げる。見ていた周りの視線がこちらに向いていた。やめてくれ、恥ずかしい。明莉はニコニコ微笑んでいるだけだった。




 俺達は5層に到着した。5層までの道のりを振り返ると、特に問題は無い。父さんと母さんも元気いっぱい。4層でコボルトに戦闘を仕掛けられた時も、父さんが中心にコボルトを倒した。母さんもバフ、デバフのスキルで支援していた。

 オークロード倒しただけある。


 俺はまず父さんと母さんを転移部屋に案内してテレポートリングを習得させる。テレポートリングや転移部屋のことは秘密にするように伝えた。

 次はここで俺達がやってきたことを説明する為にあの部屋に向かっていた時だった。ボロボロになっている探索者を見つけたのだ。


「大丈夫ですか! 何があったんですか!」


「オーク、ロードが、頼む、仲間を助けて」


「分かった。父さん!」


「うぉっ!? これポーションじゃないか!」


 俺は【アイテムボックス】からHPポーションを投げ渡す。


「父さんと母さんはこの人のことを頼む! 明莉、美琴は俺に付いて来い!」


「うん!」


「分かったよ!」


 俺、美琴、明莉の3人は部屋に向かう。見る限り部屋には沢山のモンスターがいることが分かる。


「一番槍は俺が行く!」


 剣を握り締める。これは壊れてしまった剣を戻して新しく借りた剣である。新しく買おうか絶賛悩み中だ。

 俺は入り口にいたモンスターを切り裂く。中に入ればモンスターが沢山いた。10匹くらいはいるだろうな。それと中にいた探索者はギリギリ立っていた。

 ここで二番手がやってくる。


「はあああぁ!」


 美琴は槍で突く。かなり早く連続して刺突したおかげで10匹が5匹に減る。


「あんた達は!」


「ここは私達に任せて早く逃げて下さい!」


「すまねえ!」


 明莉の指示で探索者達は部屋から撤退してくれた。俺と美琴で残りのモンスターを倒す。最後に残ったのはオークロードだった。


「ウオオオオォ!!」


「はああああぁ!!」


 オークロードは美琴と戦う。だいぶ動きが良くなっている。オークロードは悪戦苦闘を強いられた。

 刺突を躱せないオークロードが倒された。魔石になって美琴が【アイテムボックス】を使い回収した。強くなったな、美琴。


 俺達は部屋から出る。父さんと母さんがいる場所には襲われていた探索者達がいた。俺は【アイテムボックス】からHPポーションを出す。5本も使う羽目になるとは思ってもみなかった。

 俺は1人ずつHPポーションを渡していく。


「ありがとう」


「良いから飲んで下さい」


 探索者達はHPポーションを飲んだ。


「本当にありがとう。君達がいなければ私達はモンスターの餌になっていただろう」


 リーダーが俺達に感謝する。俺達が間に合ったのは本当に奇跡だ。それに生きることを諦めなかった。だから助けられたんだ。


「貴方達が生きることを諦めなかったから、俺達は助けることが出来たんです」


「そう言ってくれると嬉しいよ。私達はここで失礼する。お金は……」


「これは俺達が勝手にやって、俺が勝手に上げたものだから。気を付けて帰って下さい」


「……分かった。次にあったら恩返しさせて貰うよ。行くぞ、お前達」


 探索者達が立ち上がる。手を振りながら探索者達は立ち去って行った。




 俺は父さんと母さんをレベリングする場所に案内する。岩石が転がった所で渡った。


「それじゃあトレインレベリングについて説明するよ」


 俺は父さんと母さんに今までしてきたトレインレベリングについて説明する。父さんと母さんはとても驚いた。


「それって危険じゃないのか?」


「危険だよ。でも、俺が全速力で間に合ったから殆どの人が出来ると思う。ただ必ず2人以上いないと駄目だ」


「そうなのか」


「リスクに見合う経験値も手に入る。それに今の俺なら岩石くらい砕くことが出来る」


 父さんと母さんの感想を聞きたい。


「それで聞いた感想はどう?」


「驚いたけど、俺は和真を信じるぞ」


「私も、美琴や明莉ちゃんだっているんだから、信じるわ」


 どうやら俺のことを信じてくれるらしい。なら、俺も応えないとな。


「最初は俺がやるからどうやるか見ていてくれ」


 ここまで言って俺は歩みを進めようとしたが――


「えっ?」


 明莉が驚いたように呟いた。視線の先には――


「これはさっきぶりだな」


「そうだね、連れがいるけど良いかい?」


 これは予想外だ。俺の目の前に現れたのは竜之介と比奈。そして奏汰達であった。奏汰達は驚いたように口を開いている。


「意外と大勢いるけど、取り合えずこっち来い」


「分かったよ」


「えっ? あっ、分かった!」


 取り合えず手招きしてみた。竜之介と比奈、奏汰達が来る。


「それでどうしてここにいるんだ?」


「僕達、レベル上げようと思ってね」


「どうやって?」


 竜之介は答える。


「僕がモンスターを全て誘き寄せて、ここの岩石に倒して貰うのさ」


 それは俺達のやり方と同じであった。つまり、竜之介はトレインレベリングを知っていた。




「そんな方法駄目だ! 危険過ぎる!」


 竜之介の説明を聞いた奏汰はトレインレベリングに反対する。うん、知ってた。


「そうよ。この方法はいくらなんでも危険過ぎるわ。貴方の命だって危ないのよ」


 葵の意見は確かに半分合ってる。


「僕なら大丈夫だよ」


「……俺もそう思う」


 俺は竜之介の肩を持った。


「奏汰達は反論するのはもっともだ。これは危険だ。だけど正面からオークと戦うのも危険だ。どのみち危険なら、少しでも生存率が高い方を、俺は取りたい。そもそもここに来た理由はなんだ」


 奏汰達が来た理由が分からない。竜之介が口を開いた。


「僕が誘ったからだよ。強くなる方法があるって言ってね」


「それで僕達がやってきた」


 竜之介、お前が誘ったのかよ。


「それでも、こんな危険な方法、取る訳にはいかない!」


「私も同感よ」


「私も、奏汰と同じ意見です」


 うーん。どうしたものか。


「奏汰達はオークと戦ったことある?」


「あるさ。とても強かった」


「なら分かるだろ。オークは仲間を呼ぶ。竜の方法なら仲間のモンスターを一網打尽に出来る」


「それは……」


「それに経験値だって大量に手に入る。……悪いことは言わないから、動きだけでも見ていろ」


 奏汰達は押し黙った。別に奏汰達にやれと言っている訳じゃないからな。


「取り合えずパーティー組もうか」


 大規模なパーティーを俺達は組んだ。


 俺は竜之介と共に5層を歩いていた。

 竜之介が何故トレインレベリングを知っているのか。明莉は絶対教えないだろう、秘密の約束だからな。だから考えられることは1つ。……竜之介がプレイヤーである可能性が高い。もしプレイヤーならかなりの腕だ。


「和真がいてくれて助かるよ」


「俺も、竜が相手で良かったよ」


「奏汰達のことは悪く言わないでくれ。仕方なかったんだ」


「分かってる。俺も悪く言うつもりはない」


 会話だけ聞いていれば奏汰に悪意を向けるとは思えないんだが、警戒しとくか。

 俺は警戒しながら、竜之介とトレインレベリングの引き付け役をするのだった。


 トレインレベリングの結果は成功。父さんや母さん、奏汰達。竜之介と比奈はレベルが上がった。





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