第22話 話し合い〈3人称視点〉

 放課後の教室。夕暮れが照らす教室の中には5人の生徒達がいた。

 レジダンの男性主人公である萩原奏汰とその仲間である花宮葵、徳井柊翔、桃川心音、獅子堂淳一というメンバーだった。

 元々は4人この場にいたが、偶然淳一が割って入ってきた。結果、5人での話し合いになる。


 ここに集まっている理由を、奏汰は口にする。


「『夜桜競技会』について俺達はこれからどうすれば良い」


 夜桜高等学校の行事である『夜桜競技会』のことであった。


「まず、Eクラス全体の実力はどれくらいなんだ」


 淳一が口を開く。その質問を柊翔が答えた。


「全体がレベル2~4くらいだろう。俺達のようにレベル5に達している者は少ない」


「これじゃあまともに戦うことすら出来ねえ」


 淳一の言う通りEクラスの戦力は低い。出来ることが限られてくる。

 もっとも、和真や明莉を除けば現時点で戦力になるのはこの5人くらいである。彼らは全員レベル5を超えており、ジョブもある。


「だから、鍛えようと思っているの」


 葵が口を開く。


「どうやって鍛えるつもりだ」


「4層で訓練するつもりよ。それも、全員ね」


 葵はダンジョンの4層でクラスメイト全員を鍛えようと提案する。


「闘技場じゃ出来ねえのか」


「残念だけど無理だ。数のある闘技場は既に他のクラスに取られてしまっている」


 補足するように柊翔が答えた。

 現時点でEクラスを強化する方法は4層で訓練する以外無かった。1~3層までは人がおり、5層では実力的に厳しい為、4層になっている。


「戦力の強化は分かった。次に今ある戦力は俺達以外にいるか?」


「……明莉は戦力に入れて良いと思うわ」


 葵の言葉に他の4人は驚く。


「どうしてそう思うんだい?」


「彼女、時々帰りが遅いのよ。夜に帰ってきたことだってあるわ。その時杖を持っていたから、きっとダンジョンに潜っているんだと思う」


 葵は寮で過ごしているのだが、明莉とは相部屋で共に過ごす仲なのである。明莉からは『葵ちゃん』と呼ばれている。


「1人でダンジョン、か。凄いね」


「きっと私達と同等くらいあると思うわ」


「……1人で潜れる階層は3層くらいなものだ。僕は同等とは思えなくても、戦力にはなるかもしれない」


 柊翔は半信半疑であったが、戦力にはなると判断した。


 戦力の把握も済んだ所で、彼らはクラスメイトをどの競技にするか決める。

 戦力のある者達を固めたり、数を多くにして数的有利を作り出したり等、主に柊翔が中心になって決めた。


 だがここで、1人の人物に行き当たる。遠野和真を何処に配置するかで悩み出していた。


「ちっ、あの男を配置するかなんてあそこしかないだろ」


「でも私達は彼のことについて全く知らないわ」


「私も、全然知らないです」


「困ったな。まさかこんな奴の為に悩むことになるなんて」


 ここで奏汰が話題を大きくするような発言をする。


「なら、俺達が彼について思っていることをそのまま話してみないか? 和真本人は悪いと思うけど」


 和真について皆、思っていることを言いだした。


「あいつは入学式の時から嫌いだ。ジョブを答えられなかった時点で、あいつにここで生き残るような覚悟は無い。それに最弱だと確信している。

 秀明に挑んだのは勇敢だと思うが、逆に言えば実力差も分からん弱者だ。そのまま奏汰以上に酷いことになっていたに違いねえ」


 淳一が和真のことをかなり嫌っている。態度だったり、行動だったり、全てが嫌になっていた。


「僕も和真は嫌いだな。あの舐めた態度を見て心底そう思ったよ。あんな奴が強い訳無い。仮に強かったとしても信じられない」


 柊翔も和真のことを嫌っていた。探索者の覚悟が足りないと思っている。


「私は、良くは思わなかった。正直自己紹介の時は舐めた態度を見てイラっとしたもの。戦力的に見ても最弱だと思うわ。……だけど、あの時明莉を助けてくれたことだけは、感謝してる」


 葵は和真のことをあまり知らない。知っていることは最弱であることと、秀明から明莉を助けてくれたこと。そのことだけは感謝しており、しかし和真本人には言っていない。


「私は、よく分からない。入学式の時、あまり気にしなかったから、そういう人もいるんだ程度で見ていた。それに和真はあの時、明莉ちゃんを助けたかったんじゃないかな」


「明莉を?」


「多分だけどね。でも、無謀過ぎ。最弱だと思ってる」


 心音は分からない。ただ最弱認定していた。


「俺は良くも悪くも思ってないよ。最弱って言われてるけど本当かどうか分からないし、ここは実力を見ないと確信出来ない」


 奏汰は良くも悪くも思っていない。ある意味中立的な立場で、実力を見ない限りは分からないと答えた。


 しかし信用出来ない、最弱であると決め込んでいる者達が4人もいる。その筆頭である淳一はやはり考えは変わらない。


「やはり、最弱であるならここしかねえ」


「でも、あまりに酷過ぎないか?」


 淳一の提案に奏汰は食らい付く。


「信用出来ない、最弱な男にぴったりだと思うけどな。そもそもの勝率が無いに等しいんだからよ」


「それは……」


「奏汰、今回ばかりは淳一に賛成だ。彼は何処に行っても足を引っ張るだけに思う」


「柊翔……」


 柊翔の発言によって淳一の提案は通ることになった。こうして夜桜競技会の配置が決まったのである。





ーーーーーーーー


ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

よろしければフォロー登録と☆☆☆から評価をお願いします。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る