第14話 美琴とトレインレベリング

 俺達は5層にやってきた。ここまで来た理由は1つ、トレインレベリングだ。


「明莉、美琴を頼むな」


「うん、和真君も気を付けてね」


 いつもの場所に明莉と美琴を置く。

 俺もいつもの場所に移動して明莉の返事を待つ。


『転がったよ』


「了解」


 明莉の返事を聞いた俺は部屋に飛び込んだ。いるのはオークが率いる魔物軍団。オークが仲間を呼び出したタイミングで俺は小石を投げた。

 オーク共は俺に狙いを定める。俺が部屋から出てくれば、ちゃんと付いて来ていた。


 俺はモンスターを連れて明莉と美琴が待っている場所まで目と鼻の先であった。


「っ! お兄さん、今助けに――」


「大丈夫だよ美琴ちゃん!?」


「離して明莉さん!!?」


 向こうでは明莉が美琴を押さえてくれていた。それでも動きそうな雰囲気がある。

 俺は駆け足気味で明莉と美琴に合流した。その数秒後にはモンスターは岩石に押し潰されて倒された。魔石と生肉だけが落ちていた。


 俺はアイテムボックスに魔石を回収する。一応剣で突き刺し、生肉も入れた。

 ここで肩を叩かれる。美琴が後ろにいた。


「お兄さん、説明」


「見ての通りだ。モンスターをここに誘き寄せて岩石で倒す、トレインレベリングだ」


 俺は簡単に説明する。


「最初に説明してよね。本気で心配したんだから」


 美琴には心配を掛けてしまったらしい。明莉は後方で微笑んでいる。同情したのかもしれないな。


「ごめんな。先に説明するべきだった」


「良いよ。本当にレベルが上がったみたいだから」


 格上のモンスターを一斉に倒したのだ。美琴の経験値は相当なものだろう。


「これからはトレインレベリングでレベルを上げていく。大丈夫か」


「めちゃくちゃ怖かったけど、慣れるように頑張る!」


 美琴は本当に強いな。


「それじゃあまた30分後になるまで休憩するか」


「うん、レベルが上がるの楽しみ」


「そうだね美琴ちゃん」


 会話が弾む。すると美琴は1つの不満を漏らす。


「でも最初に言ってくれたら心の準備が出来たのに」


「分かるよ。私も説明なしで行われた時は怒っちゃったから」


「いや、怒るのも無理ないよ~」


 やはり明莉は美琴に同情していた。俺はこれと同じことをする時は説明しようと心に決めるのであった。




 美琴の初陣から翌日。日曜日はトレインレベリングを中心に行った。朝から昼、午後までとにかく走ってはモンスターを倒す作業が続いた。

 最初は怖がっていた美琴も慣れていった。挙句の果てには自分で連れてくるようになってしまった。十分レベルを上げたからやってみたいと頼んできたのだ。俺はそれを承諾する。


 結果、


「お兄さん、明莉さん! 連れてきたよ!」


 美琴はオークロードが率いる大軍を連れてくるのであった。


「明莉さんは俺に【ホープアップ】! 美琴は明莉さんの後ろに隠れるように!」


「了解!」


「分かった!!」


 岩石で押し潰された後、オークロードが立ち塞がっていた。


「うおおおおぉ!!」


 俺はオークロードに向かって突撃したのだった。

 結果は俺の勝ち。レベルも互角であることから普通の【ホープアップ】でも倒せるくらいには強くなっていた。


 俺はこの後、美琴にオークロードについて説明を促した。


「そうなんだ。私って運良いね」


「この場合は悪運の方だがな」


「私も倒せるようにレベル上げるから! 次は私が倒すぞぉ!」


 気合十分だな。それに美琴だと次遭遇した時点で倒せるくらいレベル上がってそうだな。


「今は基礎と技術、経験を積み重ねていけば良い。そうすればいずれ倒せるさ」


「うん!」


 昔の俺がそうだったように。美琴は俺よりも早く、強くなるだろう。

 最強の座は譲るつもりはないがな。


 俺達はトレインレベリングをやり続けた。


 夕方くらいまでやり終えると全員レベルが上がっていた。俺がLv8、美琴がLv7、明莉がLv9だった。

 美琴の成長は早く、俺の成長はスキルの所為だろうか、やはり遅かった。


 レベル7に達したことで【鑑定】を覚えた。これは汎用性が高く、明莉と美琴にも覚えさせた。同時に使い方や注意事項を予め説明した。




 帰り道、明莉が口を開いた。


「そういえば、明日だね」


「明日? 何かあったか?」


「忘れたの!? Dクラスとの対決日だよ」


 嗚呼、約束の2週間後か。完全に忘れてた。今まで自分のレベル上げで忙しかったからな。

 それにしても、主人公、奏汰は何処まで行っているんだ? レベルは上げているだろうが、俺達がトレインレベリングしている時も姿を現さなかった。


「和真君? どうかしたの?」


「お兄さん?」


 俺は2人に声を掛けられる。心配している様子だった。


「何、明日がな、色々あるんだ」


「そうなんだ」


「……お兄さん、心配していた。何か気になるの?」


「明日がちょっと、不安なだけだ」


 奏汰は4層止まりなのか、6層以上に足を踏み入れているのか分からない。ただ勝つには俺のようにトレインをしてレベル上げするか、6層以上の敵を倒してレベルを上げなければならない。

 レベルを上げているくらいしか断言出来ない。


 ……それも明日行けば分かる話だ。何処まで強くなったのか見せてくれ。俺の不安を消す為にも。

 ……なんか、嫌な予感するんだよなぁ。





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