第6話 初のパーティー
俺達4人組が昼食を食べ終えると、武器庫に向かって装備を借りた。俺と竜之介が剣、明莉が杖、比奈が槍をレンタルした。
そのまま探索者協会に行き、今に至る。
「待たせたね」
「そんなに待っていませんよ」
「私もそこまでは」
「終わったか?」
俺が3人の探索者の登録を待って数十分。最後に竜之介が戻ってきた。
ここで全員が揃ったのでやることは1つ。
「行くぞ、ダンジョンに」
「楽しみだね」
「うん!」
「僕も同じ気持ちだ。ワクワクするよ」
3人は呑気だなぁ。ワクワクする気持ちは分からなくもないが、今日は出来てスライム狩りになるだろう。
「通路は長いぞ」
「そんなに長いのかい?」
「1時間は掛かるな」
「「1時間!?」」
良いリアクションどうもありがとう。
俺達はゲートを通り、ダンジョンへと足を進めて行く。
「僕のことは『竜』って呼んで構わないよ」
「はい、竜君」
「分かりました竜さん」
「呼び捨てで構わないんだけどね」
「こっちの方が私的に良いんです」
「それなら好きな呼びで構わないよ」
「はい! 和真さんもこの呼び方でいいですか?」
「ダイジョウブデスヨ」
「おや? 疲れてるのかい?」
「……いや、結構楽しんでるさ」
俺達は1層に到着した。
「「わあぁ!」」
明莉と比奈は初めてのダンジョンに目を輝かせている。竜之介もうんうんと頷いていた。
ここにいてもスライムは湧かないので俺は案内を受け持つ。
「それじゃあ案内するぞ」
「何処にですか?」
「それは……着いてからのお楽しみだ」
俺は3人を隠し部屋まで案内を開始する。案内をしてから数分で人の気配が消えた。途中でスライムが湧くことなく、俺は隠し部屋まで案内を完了した。
「ここは?」
「隠し部屋だろうね。和真は知っていたのかい?」
「まさか、偶然見つけたのさ。ここのことは秘密にして欲しい。良い狩場だから」
「はい、分かりました。……それにしてもスライムが5匹も」
「知っているのと知らないとでは結構な差が生まれそう」
3人ともこの隠し部屋の重要さについて十分理解しただろう。
これからスライム狩りを開始する。最初に名乗りを上げたのは竜之介だった。
「ここは1人で大丈夫だよ」
「自信があるね。もし何かあったら私のスキルを付与するから」
「ありがとう。でも大丈夫だよ」
竜之介が隠し部屋に入った。明莉も発言的に初期スキルがある。多分、主人公専用スキルだろう。
スライムが気付いた。襲い掛かる。竜之介も剣を構えて、戦闘が始まった。
「はあああぁ!!」
竜之介が剣を振るう。横、縦、突きでスライムを撃破していく。
物の十数秒でスライムを撃破した。これには明莉と比奈から拍手が飛んでくる。
「やっぱり剣は良いね……」
「凄いです竜さん!」
「竜君、剣術を習っていたの!?」
「ううん。でも分かるんだよね。剣の動きって」
言い方が完全に天才によくある発言なんだけど。俺は基礎の動きに忠実だけど、彼の動きは天才の動きだろうか。剣の使い方にも慣れているようだった。
俺もゲームでの戦い方が出来るだろうか。
「でもごめんね。全部倒したから待たなきゃいけないでしょ」
「大丈夫です。次は私が行っても宜しいでしょうか」
「私も行くよ!」
「次はこの2人で良いよ」
「頑張れ、応援しているよ」
30分後、スライムがリスポーンする。部屋には明莉と比奈が入る。明莉は比奈に確認をする。
「比奈ちゃん、私のスキルで強化するよ」
「お願い明莉さん!」
「うん! 【ホープアップ】!」
明莉がスキル【ホープアップ】を使用した。比奈が光り輝くと収まる。これでスキルは付与された。効果はSTRとINTの上昇。
比奈の突きがスライムを捉えて攻撃に成功する。一発で倒した。見た限り身体能力も上がっている風だ。
「す、凄い! 体中に力が湧いてきます!」
「明莉のスキルは攻撃力を上げて、身体能力も上げるみたいだね」
「多分、魔法攻撃も強化していると思う」
「このまま行きます! はああぁ!」
比奈が槍で突きを行う。倒せる威力だが動きがぎこちないな。多分槍は向いていないんだと思う。でもまだ始まったばかりだから、彼女が行き詰まったら教えてあげよう。
明莉のスキルもあって数分後、比奈はスライムを全部倒した。明莉と比奈はハイタッチをした。
さて、最後は俺か。
「助力は必要かな?」
「必要無い。竜達は見ていろ」
俺には必要ない。明莉は今日の出来事で心配しているみたいだが。問題は無い。本物の剣で何処までやれるか楽しみだ。
「行くぞ」
30分後、俺はスライム部屋に入る。俺は突きでスライムを倒していく。もう動きには慣れたので捉えるのは簡単だ。
悔しいが竜之介より倒すのは遅かった。やっぱ竜之介可笑しいわ。
「凄いね」
「それはどうも……レベルが上がったみたいだ」
「そうなのかい?」
「感覚が伝えてくるんだ。レベルが上がったと」
本当にこれ以外に言葉が出ない。なんとなくなんだ。スライムを倒した後、感覚が伝わるんだ。レベルが上がったことを告げるように。
俺は試しに確認してみると本当にレベルが上がっていた。
「レベルが上がれば感覚で分かるだろ。あと1時間は続けるか?」
「うん!」
「はい!」
「勿論だよ」
俺達はあと1時間スライム狩りを続行することになった。
1時間後。竜之介が剣捌きでスライムを切り裂き、明莉のスキルを得た比奈がスライムを貫いたりした。
結果は俺、明莉、比奈がレベル2に上がった。竜之介だけはレベル1のままである。
「うーん、意外と上がらないね」
「俺はむしろ明莉さんと比奈さんが早い気がする」
「そうかな?」
「私と明莉さんはそういうの感じないかな?」
「……まぁ良いんじゃないか。レベルが上がれば優位に立ち回れるから」
この世界はレベル主義な者が多い。それに抗うにはレベルを上げるほかない。
さて、今部屋にはドロップ品が沢山ある。しかし彼女達は回収する様子を見せない。……【アイテムボックス】を知らず使っていない可能性があるな。
【アイテムボックス】を知らないから教えてあげたいけど、教えたらどうなるんだ? 今日は誤魔化そう。
「今から俺がドロップ品回収する。悪いけど見ないでくれないか。それと他言無用で頼む」
「えっ? でも私達袋持って来てないよ?」
「っ?」
「大丈夫、俺にはそういうスキルが使える、と覚えてくれ」
「?……分かりました。離れた方が良いですか?」
「そうしてくれると助かるよ」
3人は隠し部屋から離れる。俺は【アイテムボックス】を開いてドロップ品を回収した。
ドロップ品を回収した後は部屋から出てみんなと合流する。
「回収は出来たいかい?」
「嗚呼。待たせたな。……換金したら山分けするよ」
「そんな、良いですよ」
「俺の気が済まないんだ。それともスライムの装備を」
「か、考えてみるね! それじゃあ帰ろう!」
「「おおぉ!」」
「おおー」
完全に乗り遅れた!
俺達は地上に向けて歩き出した。別れると俺は家に直行。レンタルした剣は暫く使う予定だからアイテムボックスに入れた。
「ねえ、和真君のスキルは0なの?」
「俺のスキルは俺にしか見えない、らしい。だからスキルはあるんだよね」
「そうなんですね」
「物の回収は俺に任せろ」
「今度も、みんなと組めると良いね」
「はい! みんながいてくれたらどれほど心強いか」
(俺はソロの方が良いんだけどなぁ……)
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ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
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