第26話 失恋中、妹は何を思う
「はぁ……」
私の名前は大野綾香。中学二年生で学校でもブラコン妹として有名だったりする。
大好きなお兄ちゃんと一緒に何かをするだけで楽しくて、お兄ちゃんにベタベタなただの妹だった。
それだというのに、少し前にその関係性が少しだけ変わってしまった。
妹物アニメをお兄ちゃんと一緒に観てから、お兄ちゃんのことを意識してしまって、それから少しだけ兄妹としての一線を越えてしまいそうになった。
というか、少しだけ超えてしまっていただろう。普通の兄妹らしからぬスキンシップも結構取ってしまった気もする。
仮の恋人としてお兄ちゃんとデートをしていく中で、お兄ちゃんを想う気持ちが大きくなって、妹が兄を慕う領域から大きくはみ出てしまった。
恋愛対象としてお兄ちゃんのことを意識して、確実に好きになってしまっていた。
そんな私の気持ちがお兄ちゃんにバレてしまって、仮の恋人というものも終わりを迎えた。
今は昔のブラコンシスコン兄妹に戻るために、仮の恋人だった記憶の上書きをしている。
仮の恋人として過ごしてきた思い出の上に、兄妹としての思い出を重ねれば、仮の恋人として過ごした日々の記憶を薄くできるはず。
そんなことを考えて、記憶の上書きをしているのだけれどーー
「――全然、上書きさないんだけど!」
私は一人ベッドにダイブして、やり場のない気持ちを枕にぶつけていた。
ブラコンシスコン兄妹時代を思い出すために、昔のノリでお兄ちゃんと話していると、確かに昔のことを思い出す。
けれど、そんなことをしている最中に思い出すのは直近のデートのことで、お兄ちゃんの手に触れていた感触を思い出してしまうのだ。
ていうか、最近お兄ちゃんと手も繋げていない!
「……仕方ないのは分かるんだけどさ」
私達は血の繋がった兄妹だ。だから、こんな気持ちを抱いてはいけないということは分かっている。
頭では分かってはいるのだけど、心はそんな簡単に整理なんてできないのだ。
「……お兄ちゃんは、納得してるのかな?」
言葉にはしていないけれど、お兄ちゃんも私のことを想ってくれているような気はしていた。
あれだけちょっとしたことでドキドキした顔をしておいて、何も思っていなかったなんてことはないだろう。
「失恋、したんだよなぁ」
仮の恋人関係が終わって、これ以上進展することができないということは、実質的な失恋と同じである。
実際に、お兄ちゃんも失恋をしようと口にしていた。
これ以上先が見えない行き止まりの恋。高すぎる壁の先は見えないし、そこを登ってはいけないのだということも分かっていた。
それでも、心は頭ほど利口ではないのだ。
お母さんにバレない様にこっそりいちゃいちゃしたり、両親がいない時にお風呂に一緒に入ったりしたとき、心臓がおかしくなるんじゃないかというくらい、ドキドキしていた。
バレてはいけない、いけないことしている。
お兄ちゃんと一緒に、中毒性と依存性があるようなあのスリルを体験してしまって、私のお兄ちゃんへの感情は確実に高まってしまっていた。
多分、それはお兄ちゃんも同じなのではなはいか。
普通の恋愛では味わうことができないであろう胸の高鳴り。それを大好きなお兄ちゃんと味わうことで、その刺激は何倍にも増幅していた。
「ちゃんと、忘れられるのかな?」
仮の恋人として過ごしてきた日々を上書きしたとき、私はちゃんと心の整理ができるのだろうか。
お兄ちゃんに嫌われていない、お兄ちゃんが私を好きなのかもしれないという状況で、ただ倫理観に反するという理由だけで、この気持ちを諦めることができるのだろうか?
「もしも、できなかったら……どうなるんだろ」
どれだけ頭で理解していても、気持ちの整理をしても、この感情が収まりきらなかったらどうなるのだろう。
私は一体、どうするのだろう。
「仮に抑え込めたとして、それって幸せなのかな?」
生涯、抱き続けて膨らんでいくその気持ちを抑え込んで、私は何がしたいのだろう。
春香ちゃんに取られてしまうと思っただけで、あんなに心が揺れいたのに、それを生涯感じ続けなければならないのだろうか。
……そんなのは、ただの苦痛でしかないんじゃないかな。
そんなことを微睡の中で考えていく中で、お兄ちゃんの気持ちを知りたいと思った。お兄ちゃんの気持ちを知った上で、もしも、私と同じ気持ちを抱いていたのなら、私はーー
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