第22話 自分の気持ちと妹アニメ
翌日、特に両親が帰ってくるまではこれといったこともなく、俺たちのおうちデートは無事に終了した。
両親の前ではいつものブラコンシスコン兄妹を演じて、互いを異性として意識しているということを感じさせずに、過ごすことができたと思う。
しかし、自分の気持ちに気づいてしまった俺は、おうちデートの後しばらくの間、一人で部屋に籠ることが増えてきた。
朝は綾乃と手を繋いで学校に行くし、特別気まずくなったりしたわけではない。
それでも、仮の恋人関係の終わりに向けて、俺は色々と考えることがあったのだ。
「……やっぱり、俺たちみたいな兄妹っておかしいんだろうな」
仮の恋人関係として過ごしてきた数日間。綾乃の反応を見る限り、綾乃も俺に対して恋愛感情を抱いているのではないかと思う。
それを本人に聞いたわけではないが、これまでのデートを振り返ってみても、その考えが一番筋が通っているような気がする。
正直、どちらかが恋愛感情を抱いてなければ、この問題は簡単に解決できただろう。ただ振られて終わる少し変わった一方通行の恋。
それで片付けることができたかもしれない。
しかし、それが相思相愛の関係となると、この問題は一気に難易度が跳ね上がる。
俺はスマホで何度も検索をかけて、俺たちと同じような境遇の人たちがいないかを調べていた。
「いないことはないけど、この話がフィクションなのかどうかも分からないな」
ネットで兄弟間の恋愛について質問をしている人もいるが、それに対して本気で回答してくれている人自体少ない。その少ない回答も、当然あまり良い回答ではなかった。
「実際にフィクションを観ても、参考にならなかったしな」
この手の質問に対して、ネットでフィクションだろとよく指摘されていたので、実際にあるフィクション作品として、妹アニメも色々と観てみた。
しかし、基本的にヒロインとして実妹を扱っている作品は少なく、血の繋があるような設定はない。
初めは血の繋がりがあっても、実は血の繋がりがなかったということが判明し、結局はハッピーエンドに向かって行く。
しかし、俺と綾乃に血の繋がりがないなんてことはない。綾乃との昔の記憶はあるし、両親は再婚などしていない。
実際の体験談を聞くこともできず、フィクションでも理想的な結末は描かれていない。
そんな俺たちの恋愛はどうなるのか。そんなの考えるまでもなく最初から分かっていた。
俺たちが互いに恋愛感情を抱いていても、いなくても結局は終わりが訪れる。
初めからそのことについては分かっていたのに、実際にそれに向かって行くと、その結末を迎えたくなくなる。
だから、俺は解決方法がないと知りながら、ネットの海を彷徨っているのだろう。
「……なんか、どこかで見たことのある履歴になったな」
『兄様のことなんて全然大好きなんだからねっ! アニメの続き』
『この中に二人妹がいる! 原作』
『兄妹 異性として』
『兄妹 恋愛感情』
『俺が好きなのは妹だけど妹なのだけど、いや妹なのだけど』
『妹 距離間』
俺はその履歴一覧を見ながら、思わず失笑してしまっていた。それと同時に、一つの疑問が湧いて出た。
綾乃は一体、いつからこんなことを考えていたのだろう。
いや、過去形ではなくて、今もずっと考え続けているのかもしれない。自分の気持ちに気づきながら、それを言葉にしないということは、そういうことなのかもしれない。
この話題は、俺から持ち出さなければならないのだろう。
俺は頭では分かっていても、中々踏ん切りがつかないでいた。
これ以上この関係を続けていたら、本当に戻れなくなるかもしれない。
そんな泥沼に片足を突っ込んでいるというのに、その泥沼が心地良くてこのまま浸かって、沈んでしまいたいと本気で考え出してしまっていた。
「……そんな訳にもいかないよな」
兄妹仲良く沈んでいくことだけは許されなかった。
俺はシスコンだ。せめて、綾乃だけでもこの気持ちから解放されて欲しい。
そんなことを考えている俺のもとに、一件の連絡がやってきた。
『明日会える? 話があるんだけど』
クラスメイトであり幼馴染。俺たちのことを良く知る人物である春香から、そんなメッセージが届いた。
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