4

 ゆっくりと瞼を開いていくと、私は家の近所の図書館の中に立っていた。時計を見ると、針は午後三時十五分を指している。あの時から──、レオと一緒にこの世界から旅立ってから一分も経っていないみたい。そう、一分もだ。

「夢、だったのかな……」

 レオのこともメルキアデスのことも、全部、全部夢だったのかな……。なんて私らしくないよね! あんなにも心が踊っていたんだもの。私は全部覚えてる。夢だった訳がない。ああ、そうだ。夢じゃない、夢なんかじゃない!

 だって首にかけていた鍵がなくなっていた。それに目の前の本棚に入っていた一冊の本──、背表紙には、『百年の冒険』と書かれていたんだもの。

「あーあ。あれ以上の冒険、できるかなー」

 図書館を後にして、真っ青な空を見上げてつぶやく。なんて。きっとできるよね。だって──。

「あっ、ウサギ……」

 反対側の歩道を見ると、真っ白なウサギがいた。ウサギは、ちらりと私の方を見ると急に駆け出して行ってしまう。その光景に、にっと自然と頬が上がっていく。気付いたら私は、その場から走り出していた。

 ドキドキと鼓動は高まっていく。そうだよ、未来を変えないといけないのに。こんな気持ちじゃ、だめだよね。それに。

 私は、その場で大きくジャンプする。一滴の曇りもない青空が瞳いっぱいに映り込んだ。

 それに世界は、まだまだ、こんなにも不可思議なことで満ちあふれているんだもの、ね──……。



Fin.

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

百年の国のアリス 花色 木綿 @hanairo-momen

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ