第3話

私はいつも妹扱いしてくるフウカに、ドキドキさせたい作戦を決行した。お花を贈る。シンプルだしあまり手の込んでないけど、それでも私の気持ちは本物だから、それをフウカにぶつける。

私は、フウカの恋人なんだよ? もっと私にドキドキしてよね。


「好き。大好き。フウカ……!」

「ノアちゃん……」


フウカがうつむいた。長い髪で目元が隠れる。

ふふーっ……どうだっ! ドキドキした? ねぇドキドキした?


「かわいい……」

「え?」


フウカはガバっと顔を上げた


「かわいいよぉー!! ノアちゃんかわいすぎるよ天使だよぉー!」

「ぐぇぇ……!?」


フウカのKで私の視界は真っ暗になった。同時に顔に柔らかいのが当たる。成功……したの?


「えへへへへ~ノアちゃんってば本当にかわいいなぁ!」


だめだこれいつも通りだ!? ちょっと頑張った妹に対して感激して可愛がる姉だこれ!


「もごごご! もごごごごごごぉ!!」

「私も大好きだよぉノアちゃーん!」

「もごー!!!」


だめだフウカってば全く話を聞いてない! 作戦失敗か……

私はフウカに抱きしめられたまま落胆した。もがいていると、フウカの心音が聞こえてきた。

あれ、音の感覚が早い……? なんとかフウカの胸から脱出して顔を見上げると、頬が少し赤くなっていた。


「なら、トドメのアレを使う! タイミングは今しかないよ!」

「んふぅ? どうしたのノアちゃん?」


私はフウカから脱出して、袋の底から包みを取り出した。これも仕事帰りに買ってきたものだ。


「ノアちゃん。それは?」

「……これもだよ。フウカにあげたいの」


包みを凝視するフウカに、私は高々と包みを持ち上げた。


「もー! ノアちゃんってばどうしたの? そんなにフウカお姉さんにお礼がしたかったのー?」

「恋人だからだよ!」


だめだっついいつも通りツッコんでしまった。手を顔に当ててキャーキャー言って体をくねらせているフウカを前に、息を整える。固唾を飲む。


「よし……」


私は包みを解いて、中を開ける。一口サイズのチョコレートだ。スーパーとかで売っているような物ではないけど、言うほど高価って程でもないなんとも言えない代物。しょうがないでしょ私まだ社会人になったばっかりなんだから貯金なんてないんだよ。


「ノアちゃん……?」

「フウカ。恋人からのプレゼント。受け取ってよね」


私は紙で包まれたチョコを持ち上げて……それを口に咥えた。


「んっ……」

「のっ……ノアちゃん……!?」


私は驚いて硬直するフウカを押して、椅子に座らせた。そして肩を掴んで、唇に自分の唇を押し付ける。


「っ……」

「んんっ……」


チョコの口移し。それが私のトドメだ。フウカはいつも余裕ぶっこいて私を妹みたいな扱い方をしてくるけどね。私だってあなたの恋人なんだから、あなたをドキドキさせることくらいさせてほしいんだよ。


「っ……っ……」


まだ驚きが抜けないのか、フウカは固まったままだ。そのフウカの口の中に私の舌を入れる。チョコも一緒に。

フウカの口の中にチョコを押し入れて、舐めまわしてフウカの中でチョコを溶かす。

甘いチョコの味と匂いが口の中に広がった。


「ぷはっ……はぁ……はぁ……」

「んっ……」

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