安楽椅子探偵
「責任能力」のない人間は罪に問われない。
これを逆手に取ることにより、どんな犯罪を起こしても決して罪に問われない方法がある。
それは、、、、
病院で目が覚めた時、彼は片足と記憶を失っていた。後に、悲惨な事故に遭い記憶を失う前の彼が成績優秀でスポーツ万能な高校生だということを聞くと彼はショックを受けた。
彼は人生に絶望していた。
そこで彼は立ち直るために、元から興味があった化学の研究に取り組むようになった。
彼は元からかなり地頭が良く、研究を続けて数十年、気づけば彼は科学界で歴史に名を残すほどの天才科学者になっていた。
しかし老後の趣味がなかった彼は、安楽椅子探偵を請負うことにした。持ち前の頭脳を活かし、しばらくすると探偵としても「世界一の探偵」と呼ばれる程になった彼だが、どうしても解けない未解決事件があった。
それは12件の連続殺人事件だったのにも関わらず、動機が不明だったため捜査は難航、それに加えて1件1件が全て完全犯罪、現場には髪の毛一本分のDNAも証拠も見つからないという、奇妙で、尚且つ凡人には実行不可能なものだった。生物学や化学などさまざまな分野に精通し天才的な頭脳を持った、そんな人間が行った極めて悪質な殺人事件。
彼の老後の人生全てはこの事件の解決に費やされた。
しばらく推理を進めていくと彼はある一つの事故に行き着いた。
それは、原因不明の爆発により周囲にいた数百人が重軽傷を負ったという痛ましい事故。さらに調べると、彼はこの事故に巻き込まれていた。彼が記憶と片足を失った原因となるものだったのだ。
彼はこの事故が誰かに意図的に引き起こされた「事件」だと考え、そしてこの彼の足と記憶を奪った犯人が、あの未解決だった12件の殺人事件の犯人である可能性が高いという考えの下、調査を進めた。
数日後、彼は自殺した。
「責任能力」のない人間は罪に問われない。
これを逆手に取ることにより、どんな犯罪を起こしても決して罪に問われない方法がある。それは、
「自身が犯罪者であることを忘れる」
大量殺人犯の天才少年は無垢な人間として人生をやり直したかった。ただ、それだけだった。
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