遺留品(後編)

彼はこの日記を執筆後、実際に彼の友人数人を証人にして飛び降りを行った。


結論から言えば彼は生きていた。

100メートル海上からの飛び込みでの生存例は彼が初ということになる。

だが彼はその後この日記を書ける状態ではなかった。

早い話、植物人間になった。

辛うじて生きてはいるが、彼自身では何も出来ない。


しかし我々研究チームは彼の奇妙な体質に強い興味を持った。

もし彼の言っていたことが全て正しいのなら、彼には現代科学の範疇を超えた何かがある可能性が高い。

そこで我々は彼を研究対象として保護することにした。

本来植物人間といえど老化はするので寿命はあるが、彼のような貴重なマウスをそう簡単に死なすわけにはいかない。

なので我々は、彼に植物人間の老化を極めて遅くする薬品を投与している。

少なくとも200年は彼は死ぬことはないだろう。


そしておそらく200年も経てば植物人間の老化を完全に止める薬だったり、若返らせる薬のようなものはおそらく開発されるはずだ。

つまり彼はこの研究が続く限り死ぬことはないとも言える。


そういう意味では確かに彼の言っていた通り、彼は「不死身」なのかもしれない。

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