最悪短編集
最悪
遺留品(前編)
「どうやら俺は不死身なようだ」
———彼の日記にはそう記されていた。
「今まで俺は火事に2回、地震に1回出会したことがあるがどちらでも生き残っている。」
———これらは既に事実確認がされている。
「そのほかにも、登山中に足を踏み外して転落した時、スキー場で雪崩にあった時も全治何ヶ月かの怪我は負ったが結局今はピンピンしている。」
———これらに関しては今調査が進んでいる。もし本当なら十分研究対象だろう。
「極めつけは寝坊のせいで乗りそびれた電車が爆破テロに巻き込まれたことだってある。ここまで来れば、俺は神に愛されていて死ぬことが出来ない、いわゆる不死身であることがわかるはずだ。」
———彼の日記はさらに続く。
「しかし、誰に言ってもどこで話しても、俺のこの体質を信じてくれる人はいない。
『どうせ嘘だろ。』とか『かまってほしいのか知らないけど流石に盛りすぎ(笑)』だとか的外れな返答ばっかりが返ってくる。」
———確かに現実味はない。
「そこで俺は、そいつらに俺の能力を見せつけることにした。」
「俺の家から車で30分ほど行ったところに、自殺の名所がある。そこは崖で、海面から100メートルほどの高さであるため、ここに飛び込めば本来なら99%死ぬ。」
「しかし、俺は別だ。俺が飛び込んだ所にたまたま釣り人のボートがあったり、ベタな話だが飛び込んでる最中に木の枝に服が引っかかったり…など皆目見当はつかないが何かしらの理由で必ず生き残るはずだ。」
———データによると、75メートルからの水面への飛び込みの生存率は僅か2%であるため、100メートルから飛べばまず間違いなく死ぬはずだ。
「奴らの目の前で俺はこの崖から飛び降りて、証明してやる。実行するのは明日、今からでも楽しみだ。」
———彼の日記はここで途絶えている。
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