第62話 雨上がりと黒服


 一時間後に泣き声が聞こえ始める。

 もう恐怖でしかないわ!でもいくしかないか。

 扉を開けるといない?すぐにしゃがむとそこを鎌が通り抜けていく。

『なんで?死なない?』

「死ねない!シアと結ばれるまでは!」

『じゃあ貴方は死なないの?』

「当たり前だろ!」

『こんなに泣いてるのに?』

「泣けば済む問題じゃねぇよ!」

『諦めない彼奴は強いぞ?』

『本気ね』

 バンシーが消えるが俺には分かる。そこだ!『エンドオブハート』!

『何故?分からない?』

 ドロップ品の魔石とマジックバックをアイテムボックスにいれてまた扉の前で待つ。

 泣く声が聞こえると扉を開けて『エンドオブハート』でトドメを刺す。

『なんで死なないの?』

「死ねないって言ってるだろうが!」

 何十回と繰り返している。

 扉の前で待つが、泣き声が聞こえない。

扉を開くとそこには、鎌を持った少女が笑っていた!

『貴方は死なない』

「そうだ」

『私も着いて行っていい?』

「他の人を殺さないか?」

『うん、貴方が死んでから殺すと思うけど』

「ならいいのか?」

『やったぁー!はい!』

 鎌を、渡してくるのでアイテムボックス に入れる。

「ようやく雨が上がったな」

 外に出た俺は水浸しの街並みを見ている。

 タクシーで駅まで向かい新幹線で東京に帰る。もちろんお土産はどっさり買った。

 電車の俺の横にはバンシーが座ってお菓子を食べている。

 分体らしく、少し幼い。

『お兄ちゃん、これ美味しい!』

「そりゃ良かったよ」

 言葉はみんなと一緒で、俺にしか分からないらしい。

 頭を撫でてやり、くすぐったそうにするバンシーは、人には無害だと思う。鎌もアイテムボックスにあるしな!


 東京に帰り着くと真っ直ぐに借家に帰る。

「おっかえりー!」

 シアが抱きついてくるあとから陽菜と月見が顔を出す。

 無言で手を差し出されたので握ってみると振り解かれた。土産らしいので大阪土産を渡すと嬉しそうに戻って行った。

 俺に労いの言葉はなしかよ。

「お疲れ様」

 父さん、ありがとう。

手を差し伸べてくるので握ると手を振り解かれる?こいつも土産かよ!買ってきてるけどさ!

 酒を渡すと楽しそうに鼻歌混じりで奥に引っ込んでいった。

 俺は玄関で棒立ちしながらも少し悲しい気持ちになって家の中に入って行った。


 次の日は学校に行き校長室にいくと黒服の男が2人いた。

「どうしたんですか?」

 ソファーに座り話をする、もちろん校長にだが。

「君に組織に「断る」そし「断る」」

「だから言ってるじゃろうが、そんな組織には入らんと」

「んで?やってきましたよ?」

「ほい。二十億じゃ!かなりがんばったぞ」

「うおー。すげー」

「そんな額、目じゃないくらい稼げるが「断る」」

 男の額に怒りマークがちらほら。

「そんじゃ俺はこれで「待て!こちらの話を聞け」断るって、さっきから言ってるのに」

「君にはどうしてもウチの組織に入って貰いたいんだ!金はいくらでも用意しよう」

「金は今貰ったからいいよー」

「ではなんでも行ってくれれば」

「んー。じゃ帰って来んない?授業あるし」

「このなめてんじゃ!」

 反応して首を切ってしまった。

「あ、『蘇生』殺しちゃったじゃないか、ごめんね校長」

「え!あれ!え!」

「見事じゃのう。ほれ、お前の頭をくっつけてくれたぞ?礼を言っておかねばな」

「あ、あ、あぁ」

 下が緩んだのか濡らしながらへたり込む男とそれを眺めている男。

「汚ったないのう!クリーニング代はお主持ちじゃぞ!」

「…は。はい」

「じゃあ授業があるので行きますね」

「おう。悪かったのう」



  ♦︎



「まさかあれほどとはのぅ」

「わ、私一度死んで!死んで!」

 漏らした男は混乱していた。

「うるさいなぁ。それで?どうじゃった?」

「…私は無理ですね。あの男は人を虫を殺すかのように殺してしかも生き返らせた」

「そうじゃのう。そんなことができる人間が誰かの下につくと思うかのぅ?」

「ありえませんね。私も息をするのを忘れてたくらいですから」

「ワシなんて立てんぞ!いまもじゃ!怖いものを見せおってからに!」


 校長も腰を抜かしていた。気合いでなんとか普通にしていたが、声が震えていたことだろう。

「では、私達はこれで」

「まて!クリーニングしてから行け!!その汚いのをどっかにやってくれ!」

「わ、わかりました」

 どこかに電話する黒服の男は本当はまだ歩く自信がなかった。少しでも動けば切られていたのは自分だったかもしれないからだ。


「部屋は臭くなるし、皇にもすこし嫌われた気がするし、踏んだり蹴ったりじゃ」

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