第45話 魔人


『なんだあの化け物は!』

「なんじゃ、手を出したのか」

『私は三回死んだんだぞ!!』

「ワシは言ったよな、あれは手懐けられない」

 フゥーとタバコをふかす。

『ど、どうにかできんのか?』

「死にたいのか?」

『も、もういい』

 馬鹿なやつじゃ、無理じゃといったのにのぉ。あんな男は仲良くしとくだけで良いのじゃ。そんなこともわからんとは。


「おい、校長はこうなることがわかってたな?」

「そら乗り込んできた」

「やっぱりか!」

「ワシは止めたぞ?彼奴らが勝手にするのはワシは知らん」

「はぁ。あんな事勘弁だぜ」

「もうしてこんじゃろな、さっきも連絡があってどうにかならんのかって」

「どうにもならん」

「その通りに言っておいたわい」

 おそらくはもう手出しはできんじゃろうな。馬鹿なやつじゃて。



   ♦︎



 はぁ。校長に怒鳴り込んだけどすんなり認めたから何もできなかったじゃねぇかよ。

「まぁ次来たら手加減なしだな」

「なにが?」

「うおっ!」

「なによ!そんなにビックリする事ないじゃない」

 そこには千聖が立っていた。

「いや、普通にビックリしただけだ」

「ねぇねぇ。マジックバックって知ってる?」

「しってるけど?」

「あれ手に入らないかな?」

「なんで?」

「欲しいからに決まってんじゃん」

「買うかドロップだろ?」

「買うなんて無理無理!ちょー高いんだから!」

「そうなのか。ちなみにいくらくらいすんの?」

「一千万位上!オークションよく見てるんだけどこれ以下はないね」

「こんなのがねー」

「はっ!一千万」

「やるわけないだろ?自分で取りに行くように頑張れよ」

「ケチンボ!!」

 5個くらい持ってるからやっても良いけどこいつは言いふらすからな。

「2組の子が持っててちょー可愛いんですけど」

「あいつも一応やるからなぁ」

「特殊科まじでどうなってんのよ!」

「さあな」


 シアに一個あげたらもう一個欲しいって言うからなんでか聞いたら月見にだって言うからあげることにした。

 あとは死蔵するか、校長にでも一つやっても良いか。

 彫金師のスキルが、

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

彫金師(倹約 作業 加工 中級加工 真価 集中作業 上級加工 倹約作業 匠の神業)

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 これで婚約指輪を今作っている。良い感じにできているからシアにもらって欲しい。


 そんな平和な時間はやっぱり長く続くはずはなく、突然とやって来る。


「は?この地区が危ない?」

『そういうておろうが、一度で覚えい』

「なんでよ?」

『上級ダンジョンに魔人が現れよった』

「魔人?それは強いのか?」

『お主からしたら赤子じゃが、災いをもたらす天才じゃな』

「なんじゃそりゃ?どこのダンジョンにいるんだ?」

『彼奴の特殊能力がダンジョン移動じゃ』

「なぁー、まためんどくさい」

『ワシも注意しておくからお主も見つけたら殺すのじゃぞ』

「了解」

『それじゃあ、決着を付けるかのぉ』

「俺はこのまま帰りたいんだけど」

『行くぞ!』

『抜刀一閃』

『また負けか』

「勝てねぇって!」

『つぎも甘いものを頼むぞ』

「はいはーい」

 九尾の狐とは仲良くやって来れている。あいつは多分貸し借りが下手なんだろう。いつもわざわざ負けにくる。ドロップ品を持って行かせるために。

 魔石とマジックバックが二つ、増えたらダメ!宝箱は一千万円とスキルオーブ蘇生だった。これも死蔵だな。

 外に出ると眩しいなぁ、秋は服に困るからなぁ。こんど陽菜とかに見繕ってもらうか。


 上級ダンジョンにいるんだよな魔人って?

 目の前に上級ダンジョンがある。入って攻略しても夜には帰れるか。

 足を踏み込んで異様な空気が、肌をチリつかせる。

 なんだ?なにかがおかしいな。

 注意しながら降りていくと、上級モンスターが共食いしていた。

 これが、魔人なら仕業か。

「なら『一閃』」

「あら、あらら。もう見つかっちゃうなんてあたしも運が悪いわね!」

 ピエロのような格好のモンスターがいる。

「魔人か?ほんとしょーもないことするなよな」

「あら、あらら?私なんか言ったかしら?魔人ってなんで知ってるの?」

『抜刀一閃』

「わぉ。あっぶな!こっちが喋ってるのに卑怯よ」

「無駄なことが大嫌いなだけだ」

「もう。プンプン!怒っちゃうぞ!」

「おう!怒れよ?」

「やーなこった!じゃーねー!」

 魔人は消えていなくなったように見せかけている。

「くっそ!『抜刀一閃』」

 フリだよ、ばーか!

「グァァアァア!いだあぁぁぁい」

 肩からばっさり斬られている。

「バレバレなんだよ」

『ホーリーブレード』

「いやあぁぁ」

 ホリーブレードで刺す。

「グエッ」

「よしこれで、って消えてなかったって事は」

「ざーんねん、生きてまーす」

 煙玉か?煙で充満して前が見えない。

「はぁ。最初から全力で行けば良かったな」

 ひょこひょこと魔人は逃げていった。

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