第37話 夏休み最後


 夏休みもいろいろあって海に行けてなかったので見に行くだけでもしようと車を出した。

 シアと2人だ。


 潮風の匂いが近づくにつれて海に来たかったなぁと本当に残念だ。


 海辺に車を停めて歩いて砂浜に降りる。


「うわぁ、これが海?」

「そう、これぜんぶだよ」

「凄いねぇ、あっちじゃ見たこともなかったよ」

「そりゃそうだろ?地図を見せてもらったけど大陸のど真ん中あたりだったじゃないか」

 王国も、帝都もどっちともが陸地だった。


「じゃああっちにも海があったんだ」

「そういうことだね」

「へぇー、綺麗な海だね」

「内海のほうが綺麗なんだけどね」

「十分だよ」

「また来年来ような」

「うん」

 車に乗って家に戻る。

「シアは宿題は?」

「後少しで終わるよ」

「なら手伝わなくていいな」

「む!てつだってくれてもいいんだよ!」

「や。やめろ。運転中だから」

「むー!」

 シアを怒らせるのはやめとこう。


 でも潮風が気持ちよくて良い気分だ。

“ダンッ”

 という音と共におばあさんが車に轢かれていた。

 車から飛び出して「大丈夫ですか!」と聞いても返事がない。

 ここは『蘇生』お婆さんの息が聞こえたところで、『エクスキューショナー』を唱えるとおばあさんは息を吹き返した。車の男はぺこぺこと頭を下げているがとりあえず警察に連絡して色々やってくれと、頼んで車に戻った。

 海を見るたびにあんな光景がフラッシュバックしても嫌だからな。


 干物を手土産に家に帰ると、陽菜と月見がいた。遊びに来たらしい。

「どこいってたの?」

「海を見にな、けっきょく行けてないからな」

「あー、たしかに」

「もうちょっと早かったら行けたのにな」

「まー、いいよ、んでそれはなに?」

「干物だよ、甘いものでも食べに行くか?」

「あ、いーね、電車で行こうか?」


「たまにはいいかもね」


 俺たちは電車で東京駅に着きそこら辺を歩いてまわる。

「東京バナナ好きなんだよね」

「おみやげだぞ?」

「いいの!」

 マジックバックに入れてご機嫌だな。


 喫茶店に入ったらパフェを頼んで写真撮りまくる。そしてこの量がどこに入るのかわからないから不思議だ。

 まぁ美味そうに食ってるんだし口には出さないでおこう。


 とうとう夏休みの最終日になってしまった。お金あるんだから旅行にでも行けばよかったな!今さら考えても遅いのだが。


 でも今考えても夏休みしたなぁって感じだったしよかったのかもな!


 はぁ、明日からまたあの鬼塚先生との戦いの日々が待っていると思うと憂うつだな。


 最後は庭で手持ち花火をして遊んだ。


 いい夏休みだったな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る