第2話 嘘だあああ!

前略、この度俺は清楚系黒髪ボブの美少女になってしまいました。

どうしてこうなった。

俺は10分ほど姿見の前で鏡の中に映る自分(美少女)と睨めっこしていた

(全くもって俺の理想の美少女だ…でもなんで俺自身の女体化じゃないんだ…?)

コンコン

誰かがドアをノックする音だ、俺は耳を澄ました

「マイヤーさん、この部屋で間違いないですか?」

男の声で何か話す声が聞こえる

すると老いた男性の声で

「そうじゃ…ここに男が1人泊まっているんじゃが…どうも怪しくてのう…」

(クソ…あの爺さん俺の顔覚えてやがったか…多分宿屋の周囲はもう囲まれているだろうな…)

そう思った時俺は思いついた

(あ…そうだ俺今美少女じゃん)

俺は一芝居打つことにした

「犯人に次ぐ!お前は完全に包囲されている!今から五秒数える!時間内に出てこなければ激しい拷問の末の死刑に処されることになる!」

男が大きな声で俺を宿屋から出そうとする

そして男がカウントダウンの開始と共にと大きく息を吸い込んだと同時に俺はドアをなるべく静かに開ける

「あの…政府の公認魔法使いさんですよね…?私がどうかしましたか…?」

俺は今までの俺史上最高に可愛い声で、威圧感のある甲冑を着込んだ

公認魔法使いに自分から問いかけた

当然公認魔法使いは驚いた様子で

「何!?マイヤーさんこの女性は!?」

と宿屋の主人であるマイヤーさんに問いかける

するとマイヤーさんは少しボケているのか

「ありゃあ…じゃあこの上の部屋かのう…ええとカギは…」

と呑気に部屋の鍵をポケットから探していた

俺は心の底からホッとした


そうして俺は宿屋から王国最大の西の市場まで逃れることに成功した

(流石にここにも俺のビラが貼られてるな…)

俺は朝飯がわりに買ったパンをかじりながら辺りの店や

市場は多くの人々と声で溢れて活気にあふれている

すると少し奥の方で人混みができている

気になったのでその人混みの方に行ってみることにした

俺は背が低いので野次馬の間を縫って前の方に顔を出した

人混みの先には背の高い赤髪の男性が、背の低い黒髪に可愛い女性に花束を渡していた

(なんだ…彼女にプロポーズしてるのか…まあ俺には関係ないな)

俺は人混みを抜けようとした

「私と付き合ってくれないか!!!」

男の口から聞こえたのは完全に女性の声だった

「え?」

ここにいる野次馬全員思ったし俺も思った

(初対面の相手に花束を渡して付き合ってください…だと…!?)

場が騒然としてると向かいの人混みを掻き分けながら、子供が出てきて

「もう!!!レナお姉ちゃん!!!一目惚れした女の人に処構わず求愛するのは

ダメだって言ったでしょ!!!」

とその場に響き渡る大声で叫んだ

(お、おねぇちゃん…?)

「あぁ、レナって、無類の女好きで有名なラヴェル名誉魔法使いのえーと…何番目の嫁さんの子だっけ…」

「え!昔はあんな感じじゃなかっただろ?もっと…なんかこう…好みが違うというか…」

「娘まで女好きとな…ははは…血は恐ろしいのう…」

なんだか呆れた様子で野次馬たちはパラパラとはけて行き

背の低い黒髪の女の子はいつの間にか姿を消していた

一方レナお姉ちゃんと呼ばれていた

高身長で赤髪の『女』は

「ううっ…」

っと嘆きながら道の真ん中でしゃがんで見るからに落ち込んでいる

そこにレナの妹?が

「レナお姉ちゃん、買い物終わったよ。家帰って性転換の実験の続きしないの?」

俺は耳を疑った『性転換の実験』

(この姉妹を利用すれば俺、男に戻れるんじゃ?)

「…する!」

半べそかきながらレナはその場に立ち去ろうとする

「あ…あのっ!!!」

俺はレナの服の袖を掴み

気づいて振り返ったレナに向かって

「私さっきあなたに一目惚れしちゃったんです…私と…お付き合いしてくれませんか!」

と流石にどんな人間でも絶対一生のうちには言わないような非現実的なセリフを言った

(うわぁ…さっきレナがやったことと同じことしてるなんて…顔から火が出そう…)

思わず目をつぶってしまう

「え…」

とレナの口から一言漏れた

(流石に無理あるよな…見ず知らずの女なんて怪しいし…)

俺はゆっくり目を開けた

「ッ…!」

レナは両手で顔を隠していた

両手の隙間からは赤面した顔が少しだけ見えた

そしてレナは両手を顔からどかして

「こんな可愛い女性が私のことを自分から選んでくれるなんて…神はまだ私を捨ててないな…」

と呟く。

そして俺の手を取って

「名はなんというんだ?」

「…リークです…」

「リーク?随分と中性的な名前だな…」

「そ…そうですかね…あはは…」

「まあ、そんなことは私たちの結婚には関係ないな」

ん?今なんか結婚とか言って?

「リーク」

「は、はい!っむ!?」


俺は初めてのキスを5分前に告った女に奪われた

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